SPURは創刊32年を迎えました。日本発のモード誌として、ファッションの力とともに、ビューティ、そしてアートの無限の可能性を信じてきました。そこで記念号となる今号では「未来は、アートの中に」と題し、スペシャルなカバーをお届けします。誕生から100周年となる香水「シャネル N°5」をモチーフにした、画家・山口晃さんによる描き下ろしの一枚です。単一花の香りが主流で、デコラティブなボトルデザインが当たり前だった100年前。ガブリエル・シャネルは洋服と同じく香水の世界にも革命を起こしました。この物語から山口さんが描いたのは、当時のモダンガールと、バイクを乗りこなす現代の女性が「N°5」の香りをシェアする光景。「“100年経っても愛され続ける香り”“香水ボトルがカバーガール”というお題をいただき、そこに“どこへでもいける”というテーマを加えました」と山口さん。
過去と現在が交差する一瞬。その背後には様々な記憶や思い出の連なりがあります。ある人には、憧れのボトルかもしれません。またある人には、祖母を思い出す香りかもしれないし、背伸びをした青春時代の匂いかもしれません。山口さんにとっては新たな発見になったようです。「制作はテスターのN°5をつけてから行っておりましたが、気持ちが上向くものですね。マリリン・モンローのイメージから、ココ・シャネルになりました」
100年間、人々の人生に寄り添い続けた「N°5」とともに、SPURも新たな時代を切り拓く一助になることを願います。
顔面識別が得意のモデルウォッチャー。デビューから好きなのはサーシャ・ピヴォヴァロヴァ。ファッションと映画を主に担当。