淡路島西海岸エリアに、自然への感性がひらく新名所が誕生。【AWAJI EARTH MUSEUM】で体験できる3つのこと

淡路島の西海岸を南北に走る県道31号線「淡路サンセットライン」を北に向かって走り、丘を上がったところ、北淡震災記念公園の中に、「AWAJI EARTH MUSEUM(アワジ アース ミュージアム)」は建っている。2025年3月20日にグランドオープンするこの新しいミュージアムは、淡路島という土地の魅力や自然と共に生きることの意味を教えてくれると同時に、30年前の大震災を経験した場所でもある。以下では、これら3つの体験について紹介する。

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「AWAJI EARTH MUSEUM」のエントランスイメージ

阪神・淡路大震災の震源地、北淡富島地区にオープン

1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災。当時甚大な被害を受けた、淡路島の西北端にある旧北淡町(現淡路市)富島(としま)地区に「AWAJI EARTH MUSEUM」はオープンする。震源となった野島断層が同地区のほぼ直下を走っていたことや、古い木造住宅が多かったことから、壊滅的な打撃を受けたエリアだ。

街の区画整理が完了したのは震災から15年後。現在の富島地区の人口は、震災前と比べて約1千人にまで半減した(2025年1月時点)。かつて商店が軒を連ねていた場所も、今では空き地が増え、行き交う人も少ない。そんななか、富島地区の活性化に携わろうと行動を起こしたのが、神戸市三宮~淡路島間の高速バスを運行する神姫バスだった。

きっかけは、淡路市が行った富島地区の施設譲渡の公募型プロポーザル(公募により譲渡希望者から企画を提案してもらい、選ぶ方式)に同社が参加したこと。震災の遺構を後世に伝える「野島断層保存館」の隣に自然体験型ミュージアムの開設を提案した結果、企画が採択された。バス事業者である同社にとって、ミュージアムの運営は初の試みとなる。

建物と庭園が一体となった、自然を体いっぱいで感じられる場所

「アワジ アース ミュージアム」の庭園
「AWAJI EARTH MUSEUM」のGARDENのイメージ

北淡震災記念公園内にある「野島断層保存館」のすぐ隣、旧物産館とそれに隣接する更地を、自然環境の専門家や地域コミュニティの人びとと共に改装しリデザインした。淡路島の資源をアップサイクルした資材を使用することで、環境負担の少ない設計に。島の原風景が残る富島地区の立地を活かし、建物と自然の境目が分からなくなるような空間を実現した。コンセプトは「自然になずさう」。「なずさう」とは古い言葉で、慣れ親しむことを意味する。

「当館が目指すのは、新しく何かを創造することではなく、『すでにあるもの』を活かして再創造し、その価値を高めること。淡路島の素材や土地の特徴を最大限に活かし、旧物産館に新たな価値(いのち)を吹き込みます」。副支配人の宮城知代さんは意気込む。

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GARDENのマップ

約1,000㎡の広々としたGARDEN(庭園)では、さまざまなハーブや季節の野菜が育つ。太陽光パネルを設置したS字型の大屋根は、「AWAJI EARTH MUSEUM」を象徴するランドマークに。雨水を利用した水場や淡路島産の瓦を活用したアースオーブンを設けることで、自然の力を借りながら持続可能な管理を行っていく。

庭園内のビオトープでは、自然への感性を育む参加型の体験プログラムも実施される。館内の無料ツールを使って自然のさまざまな要素を観察するセルフ型アクティビティ「EARTH LOUPE(アース・ルーペ)」と、コミュニティ型アクティビティ「みみずっこ」の2種類を常設。いずれも従来の知識学習型ミュージアムとは異なり、大人も子供も自然の中で遊びながら学べるのが魅力だ。

淡路島を堪能できる屋内施設。楽しく学べる防災の提案も

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「AWAJI EARTH MUSEUM」のSHOPのイメージ

屋内施設にはSHOP(セレクトショップ)やCAFE(レストラン、カフェ)を併設。淡路島産の青果や特産品、同館のスタッフが島内各所に足を運んで厳選した焼き菓子、島内で活動するアーティストの作品など、島由来のさまざまなプロダクトを取りそろえる。

災害時に役立ち、日々の暮らしにも取り入れられる非常食コーナーも常設する。「非常食をただ展示販売するのではなく、日常の延長にあるものとして非常時の備えを楽しく訴求し、減災に努める術を伝えていきたい」と宮城さんは言う。

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「AWAJI EARTH MUSEUM」のCAFEのイメージ

CAFEでは、地産地消をテーマにしたフードやドリンクを提供。淡路島産の野菜をふんだんに使ったモーニングセットやサラダバー、生パスタなどが味わえる。

地元で栽培・加工された冷凍フルーツを活用し、島の地場産業である淡路瓦の粘土から着想したメニューも独自開発した。「ドロっと」したソースがかかるパウンドケーキやプリンのほか、オニオンリングを積み上げて地層に見立てた「地層ニオンリング」や「地層パフェ」など、五感で楽しめるメニューが豊富にそろう。

残飯は施設内に設置されたコンポストダストボックスへ。生ごみを価値ある資源に変えていく循環型の取り組みも行われる。

目指すのは、「訪れてよし」「住んでよし」のサスティナブルツーリズムの拠点となること。グランドオープンまで1ヵ月を切った今、改めて施設に託す思いをうかがった。

「時代の変化とともに、観光業は物質消費から非物質的価値へとシフトチェンジしてきています。震災の記憶が強く残るこのエリアで、何を伝えていくべきか。30年前の震災を風化させてはいけない一方、悲しい場所というイメージは払拭したいと考えています。当館で自然と向き合い、自然の摂理を感じ、日常に持ち帰ってもらうことで、これからの暮らしや正しい備えについて一人ひとりが考えられる場所になればと願っています」

震災だけでなく、淡路島の自然の魅力を次世代に伝えながら、地域を繋ぐ役割を担う場所に。新たに生まれ変わる北淡富島エリアに期待が高まる。

施設名:AWAJI EARTH MUSEUM
住所:兵庫県淡路市小倉173番3 北淡震災記念公園内
営業日時:8時~17時
定休日:年中無休
営業開始日:2025年3月20日(祝)