2022.05.31

日本のごみ問題で“生ごみ”が重視される理由とは?【PART1】

家庭から出るごみの中で、プラスチック、紙、ガラスと分類して資源化していてもどうしても最後に残るのが“生ごみ”。この生ごみは捨てるしかないのだろうか?ごみを減らすことから始めよう! ゼロ・ウェイストライフのすすめにも登場した、一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパンの代表理事・坂野晶さんによると、生ごみは日本のごみ問題の主な原因にもなっているという。そんな生ごみの現状について聞いた。

家庭から出るごみの約4割は生ごみ!

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生ごみの量は可燃ごみに含まれるため推定量となり、組成調査をした京都市のデータを参考値としている。©令和2年度 京都市食品ロスゼロプロジェクト「燃やすごみ」の組成
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含水量が多い生ごみは燃えにくく、化石燃料を投与して燃えやすくしたり、プラスチックと併せて燃やしたりする必要がある。

「生ごみは、家庭から出る燃やすごみの約4割を占めています(※1)。日本のごみ処理は焼却処分がメイン。直接埋め立てる量は少なく、基本的に先に焼却処理をして焼却灰を埋め立てています。そもそも重量の約80〜90%もの水分を含む生ごみを焼却するのはとても非効率的です。生ごみを燃やすと、その水分によって焼却炉内の火が消えたり温度が低くなったり、炉を傷める原因になります。それらを防ぐためにごみ処理場では、新たに化石燃料を投与したり、石油由来のプラスチックを一緒に燃やしたりして焼却炉内を高温に保っているのです」(坂野さん)

含水量が多い生ごみを「燃やすごみ」に出すことは、ごみの量を増やすだけでなく、結果的に天然資源の枯渇に一役買ってしまうことになる。そこで最近注目されているのが生ごみを捨てない「コンポスト」だ。

(※1)参考:令和2年 京都市食品ロスゼロプロジェクト「燃やすごみの組成」

生ごみを資源に変えるコンポストが救世主に

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生ごみを堆肥化し、農作物の土壌として再利用。そこで生産した農作物を再度販売・消費するという循環型経済が成立する。 ©2022「生ごみ焼却ゼロプラットフォーム」

「日本では最近よく目にするようになってきたコンポストですが、欧米では自治体のごみ処理の基本インフラの一つとして取り入れられています。街角のコミュニティガーデンなどにも導入されていて、生活の中で当たり前になりつつあります」(坂野さん)

コンポストとは、生ごみを堆肥化する機械や容器、そして仕組みのこと。微生物の働きによって、生ごみを分解&堆肥化して土に還すことができる。その堆肥を農産の資源として再利用でき、個人でも家庭菜園やプランターなどで活用することができる。

日本のリサイクル率を上げるコンポストの重要性

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前回もお話ししましたが、日本のリサイクル率が低い原因は焼却処分であり、生ごみを燃やすごみにして、分別・資源化していないことです。計算上ではありますが、40%を占める生ごみをコンポストで資源化して再利用できれば、日本のリサイクル率はぐっと上がります。家庭でも自治体でも、コンポストを積極的に取り入れて生ごみを資源化することがゼロ・ウェイストへの近道です」(坂野さん)

坂野さんも政策に携わったゼロ・ウェイストタウンとして注目を浴びる徳島県勝浦郡上勝町のゴミステーションでは、生ごみは「ごみ」として受け入れておらず、堆肥化することが義務付けられている。生ごみを“唯一自分でリサイクルできる資源”として呼びかけ、家庭でもコンポストや生ごみ処理機を取り入れることを推進。80%超のリサイクル率を達成しているのだ(※2)。

(※2)参考:ZERO WASTE TOWN KAMIKATSU「上勝町ゼロ・ウェイスト宣言」

自治体の助成制度などを上手に利用して、自宅でコンポストを始めよう!

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都市部で生活していると生ごみを堆肥化する“コンポスト”は、少しハードルが高いと思ってしまう人もいるかもしれない。最近では、自治体の助成制度やNPOの堆肥回収など、家庭で行うコンポストをサポートしてくれるサービスも増えてきている。自宅でコンポストを始める前に調べておこう。

〈コンポストを始める前にチェック!〉
1 自分の住む自治体に「生ごみ処理機購入助成制度」があるか確認
コンポストを購入する際に助成金が出る自治体が多数。例えば、東京都は28の市区町で助成制度を取り入れている(2021年度の実績で10,000円~50,000円を助成)。自分の住む自治体の取り組みを調べてみて。

2 農家、消費者、カフェなどでつながる循環型サービス
カフェなどを拠点として、契約した農家から定期的に野菜を受け取り、家庭のコンポストでできた堆肥を農家に渡すことのできる循環型サービス「CSA LOOP」。地域支援型農業と食循環をかけあわせた仕組みは、ごみの資源化とともに持続可能な農業へのサポートにもなる。

3 使いきれない堆肥は、回収サービスを利用して
自宅でできた堆肥を使いきれない場合、自治体やNPOなどが行っている回収・受け入れサービスを利用するのもひとつの手。例えば、「LFCコンポスト」では堆肥回収イベントを行なっている。「LFCコンポスト」利用者のみで不定期開催なので詳しくはウェブサイトで確認を。

日本のごみ問題の主な原因でもある生ごみをリサイクルできるコンポスト。PART2では、SPUR.JPエディターのコンポスト実践ルポを紹介。初心者でも簡単に始められる「ダンボールコンポスト」の方法から気になる臭い・虫対策までリアルな情報をお届け!


坂野晶/Akira Sakano
一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパン代表理事。2020年まで徳島県勝浦郡上勝町のNPO法人ゼロ・ウェイストアカデミー理事長、2019年世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)では共同議長を務めた。

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