先進国でありながら、ジェンダーギャップの問題ではかなり遅れを取っている日本。行動に移していくためにも、性の多様性や男女格差についての理解を積極的に深めることが重要。ジェンダー観の視野を広げる作品との出合いを機に、身近な人と話すことから始めたい。
完璧じゃなくても、愛おしい自分たちの話
34歳独身で不安だらけの毎日を生きるブリジットが、6歳の少女、フランシスとの出会いにより、少しずつ気持ちを成長させていく物語。主演を務めるケリー・オサリヴァンの脚本デビュー作。大人の女性ならではの苦悩や本音を、ユーモアと感動を交えながらテンポよく描く。「中絶、レズビアンカップル、生理、産後うつなど、センシティブな題材がてんこ盛り。女性として、母として、共感する部分もたくさんありました。すごくリアルだけど、あくまで軽快かつユーモラスに描かれていて、そこに脚本の妙を感じます。観る人の背中をそっと押してくれる、ぬくもりに満ちた作品です」(編集H)
『セイント・フランシス』(2022)
監督/アレックス・トンプソン
出演/ケリー・オサリヴァン、ラモーナ・エディス・ウィリアムズほか
8月19日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネクイントほか全国ロードショー
世にも不幸な三姉妹が生まれた理由
ソウルで生活する三姉妹の姿を描いた人間ドラマ。それぞれ闇を抱えながら生きる3人が、父親の誕生日会のために久しぶりに帰省し一堂に会した時、思いもよらぬ出来事が起きる。3人はそれまで蓋をしていた幼少期の心の傷と向き合うことになる。「観るのがしんどくなるほど散々で痛々しい彼女たちの“生きづらさ”が、不条理な社会のシステムに根を張っているものだと観ていくうちに気が付きます。『自分たちの娘に明るい社会を手渡すために』と願いを込めてプロデュースを買って出たという、主演女優ムン・ソリさんのメッセージにも心打たれました。姉妹の誰かに自分を重ねてしまうかも」(ライターH)
『三姉妹』(2022)
監督・脚本/イ・スンウォン
出演/ムン・ソリ、キム・ソニョン、チャン・ユンジュ
ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開中
本来の自分の性で生きていくために
ジェンダーやセクシュアリティにフォーカスした作品を撮り続けるセバスチャン・リフシッツ監督のドキュメンタリー映画『リトル・ガール』。出生時、割り当てられた性別は“男性”として生まれたサシャは、2歳を過ぎた頃から自分の性別に違和感を覚え始める。家族はそれを受け入れるものの、学校や社会ではなかなか認めてもらえない。そんな不安の日々を、サシャ本人や家族の信頼を得ながら丁寧に映し出す。家族の愛に包まれたサシャの何気ない日常を繊細なカメラワークで切り取り、幼少期のトランス・アイデンティティを捉えた作品。「学校、社会で息苦しくも自分の性を生きようとする意志の強さと、サシャがありのままで生きられるよう、学校や周囲に働きかけるなど奔走する家族の葛藤が見事に描かれています」(セレクトショップ「Sister」ディレクター 長尾さん)
『リトル・ガール』(2020)
監督・脚本/セバスチャン・リフシッツ
出演/サシャほか
大物政治家に果敢に挑む女性たちの勇姿
2018年、ドナルド・トランプ政権になって初めてのアメリカ合衆国選挙に出馬した、女性新人候補者4人にスポットを当てたNetflixのドキュメンタリー。大企業からの支援もなく政治経験もない若い女性たちが、権力を握る大物政治家たちに挑戦していく姿に、観る人はきっとエンパワーメントされるはず。「不安を抱えながらも『私ならできる。何度もやってきた』『誰かがやらないといけないのなら、自分が責任を取る』と自分を鼓舞して前進しようとする彼女たちに勇気をもらえます。まさに革命的な一作」(長尾さん)
『レボリューション -米国議会に挑んだ女性たち-』(2019)
監督/レイチェル・リアーズ
出演/アレクサンドリア・オカシオ=コルテス、コーリ・ブッシュ、ポーラ・ジーン・スウェアレンジン、エイミー・ヴィレラほか
Netflixにて独占配信中