「セクシャルウェルネス」の形は、一人ひとり違います。誰かとセックスをすることだけでなく、一人で楽しむことや、自分に合った方法で繋がりや快楽を感じることも「セクシャルウェルネス」のひとつの形。性にまつわるプライバシーや安全、健康が守られ、多様性や自主性を尊重されることも大事な要素です。「セクシャルウェルネス」について考えることは、自分にとっての「性的に健康で幸せな心身の状態」と向き合うこと。そして、誰かの「性的に健康で幸せな心身の状態」を大切にすること。
SPUR.JPフェムテック調査団では、女性の身体にまつわる悩みを可視化し、世界中で盛り上がりを見せる「フェムテック」にできることを浮かび上がらせるべく、アンケートを実施。第二回は、「デリケートゾーン」に関する意識と「セクシャルウェルネス」の実態を調査。2,681人の回答を元に、みんなが直面している悩みや意識に向き合い、シェアします。
Q1.自分のデリケートゾーンを見たことがありますか?
見たことがある人が7割である一方、26%の人が見たことがないということが判明。きちんと洗えているかどうかや変化をチェックするために、まずは一度、鏡に映してみることから始めてみては?
Q2.デリケートゾーンについて、悩みや不快に思っていることは?
におい、蒸れ、生理用品によるかゆみ、黒ずみ、大きさや形などの見た目に悩む人が多数。正しい洗い方や脱毛についての悩みも多く寄せられました。
Q3.デリケートゾーン専用のケア製品を使ったことがありますか?
前回のアンケートで「使ってみたいフェムテック製品」として多くの人が挙げていた、デリケートゾーン専用のケア製品を、実際に使っている人は45%。形状が複雑なため洗い残してしまいがちな一方で、pHが弱酸性に保たれているデリケートゾーン(外陰部)を、アルカリ性のボディソープで洗うとバリア機能を損ない、トラブルの原因になることも。その名のとおり顔の皮膚よりも繊細なパーツなので、まずは専用のウォッシュからトライしてみては。
Q4.V・I・O脱毛をしていますか?
V・I・O脱毛とは、Vライン(ビキニライン)、Iライン(陰部の両脇)、Oライン(肛門周り)の脱毛のこと。レーザー脱毛、光脱毛、ブラジリアンワックス(ワックスを使った脱毛)が一般的で、44%の人が経験済み。Q2の「デリケートゾーンの悩み」の項目では、「脱毛したいが恥ずかしくて行けない」「脱毛をしたほうがいいのかどうか迷っている」という声も。
Q5.V・I・O脱毛をした理由は?
衛生や清潔のため、不快感の解消、「見た目」対策、身だしなみ、老後のためという理由が多数。なかには、「全身脱毛のコースに含まれていた」という、ついで派もチラホラ。脱毛後の快適さについて、「トイレ後に清潔な気がする」「生理の時に蒸れや匂いなどが気にならなくなった」「災害の時に助かった」「Tバックや浅い下着を楽しめるようになった」「海やプールで水着からはみ出す心配がない」という感想が寄せられました。
「V・I・O脱毛=清潔って本当なのかな!?」
突然ですが、こんにちは。みんなにフェムテックのことをもっと知って親しんでもらうために生まれた、知恵の集合体クラウドちゃんです。
みんなのコメントを読んでいると、「アンダーヘアの脱毛=清潔」というイメージが強いみたい。でも、脱毛してる人にはその人の、してない人にはその人向けの洗い方がそれぞれあるというだけで、脱毛しているかどうかと清潔さが直結しているわけではないんだよね。本当に大切なのは、正しい洗い方。今後のフェムテック調査団で紹介するから、お楽しみに!
実は、アンダーヘアにはデリケートゾーンの摩擦を防いで保温と保湿を助けたり、細菌や性感染症から守るという役割があるの。「将来介護される時のために」という答えもあったけど、加齢でデリケートゾーンの形状が変わることもあるからアンダーヘアがあったほうが摩擦や見た目的にベターだったという例も。V・I・O脱毛にはメリットもデメリットもある。みんなが先入観にとらわれたり、偏った情報に振り回されず、「いまの自分にとってどっちが心地よいか」で選べるようになったら素敵だよね。
Q5.膣トレに興味がありますか?
7割以上の人が興味があると回答した「膣トレ」は、骨盤底筋群を鍛えるトレーニング。興味があると答えた人からは、「産後、膣が緩んだ気がする」「尿漏れ防止のため」「美容やダイエットに良いと聞いたから」「よりよいセックスのため」「子宮脱(子宮を支えている靱帯や筋肉が緩み、その結果、子宮・膣・直腸・膀胱などの臓器が下がってくる症状)防止のため」という声が。
Q7.性生活に満足していますか?
回答が細かく分かれ、セクシャルウェルネスの多様な一面があらわれた。満足している人と満足はしていないが不満もない人を合わせると、ちょうど50%。不満がある人、物足りないと答えた人を合わせると、31%という結果に。
Q8.性生活に満足できない理由は?
「特定のパートナーがいないから」「相手あってのことなので、自分の理想通りにはならない」など、性生活=パートナーとのセックスと捉える人が多く、セルフプレジャーに関する話題が少なかったのが印象的。「オーガズムを感じない」「なかなかイケない」「もっと気持ちよくなれる気がする」など、プレジャーの理想と現実の間でモヤモヤしている人が多数。みんなの悩みを見てみると……。
セックスに悩むみんなの声!声!声!
【相手の問題】
私に興味がなくなってきているのがわかる/彼の技術がイマイチ/彼が忙しくて/パートナーとコロナで会えない/遠距離恋愛/相手がいれば、と思う。バツイチです/コロナの影響なのか、彼から触れられることがかなり少なくなった/もう少しパートナーとの身体の相性を高めたい/相手の「自分が満足すればいい」というようなセックス/男性都合でレスになったり、風俗店があるのが許せないくらいに傷ついた経験がある/男性に不信感がある/同じことの繰り返しで飽きられないか心配。膣の締め付け力が弱くなってる気がする。マンネリ化/パートナーとのセックスがワンパターンで飽きてしまう/したくない時でもパートナーの希望に沿わなければならない雰囲気がある。快感がないわけではないが、疲れるのでさっさと終わって欲しい/パートナーと自分の性欲が高まるタイミングが合わない/女性を思いやった上でセックスを楽しめる性的なリテラシーの高い男性がまだまだ少ないと思う。男性が満足して終わりが多い/パートナーが居ないので、実戦経験がない/処女【異性愛を前提にしないで】
私は女性で、LGBTです。雑誌で異性同士が前提のセックス特集などはあったりするのに、同性同士のセックスの悩みや不安を相談するコンテンツが少ないと感じています【ままならない快感】
快感をまだ知らない/学生時代に比べて、あまり気持ちよく感じられない気がする/オーガズムを感じない/もっと満足できるのではという気持ちがどこかにある/相手を一番に考えてしまい、自分の気持ちよさを二の次に考えてしまう/緊張して楽しめてない時がある/膣でイケない/中イキの経験がない/自分は感度が低いと思っているので、相手が楽しめないのではと考えてしまう/自分が気持ち良い場所がまだわからないので、開発したい/気持ちよくなる方法がわからない/女性のイクとは何なのかわからない。年齢によって感じ方は変わるのでしょうか?【性交痛】
奥をつかれると痛かったり、感覚が鈍く膣などでの快感がつかみにくいことが悩みです/肛門と膣の間が裂けやすく、気をつけていても痛むことがしょっちゅうある。婦人科では抗生物質の軟膏しかもらえないので、気軽に買える市販薬がほしい/行為中、腸が刺激されるのか排泄したくなる。集中できない/性交痛、セクハラのトラウマで触られるのがつらい/セックス後に出血が少量ある/深部内膜症のため、性交痛があり、あまり色んな体位に挑戦できず、夫が満足しているか不安/性行為している時に、入れると痛い時が多くて、なかなかできない【回数、セックスレス】
回数が少ない/レスになって5年になる/レスだけど、旦那とする気になれない/同棲しているパートナーとセックスレス(涙)/パートナーとのセックスがない/夫とはしたくない。気持ち悪くて。他の人としたら不倫になるからできない。モヤモヤ。女として終わるのかと思うと、残念/セックスレスを解消したい、これまでのセックスで感じたことのない快感を得てみたい【出産や加齢による変化】
産後2年目にした時にすごく痛くて怖くなってしまいました。昔のように痛みを伴わないセックスができるのかなぁ?と悩んでいます/出産後、感じ方が変化した/年齢を重ねたせいか膣の締まりが悪くなってきた気がする/旦那さんと月1位の頻度だが、少ない?ダメなのかなぁ?どうなんだろう?2歳の息子の育児で疲れて、自分の性欲が減ってしまったと思う。セックスよりスマホゲームしたりLINEやwebでグルメ・ファッション情報を見たり、自分の時間が欲しい気持ちの方が勝ってます……/ふたりの時間がとりにくい。子どもと一緒に寝ているためタイミングがつかめない/子どもが幼い為する時間が無い/子どもが寝ない、疲れてるなどでタイミングが合わず、できないことが多い【避妊の不安】
日本は性に関する情報が少なすぎるし、セックスについても避妊の仕方がよくわからない(100%じゃないゴムに頼るしかないって、現代社会でがんばって働く女性には酷だと思う。みんなどう思ってるんだろうというかんじ。ピルも危険はないというけど、本当かなとか)。そこの不安がネックになってるのも、なかなか彼氏がつくれないところかも。でも、パートナーと愛あるセックスがしたい気持ちはすごくある
【性欲と気持ち】
誘われても全く自分自身がしたくありません。うまく断る方法が知りたいです/全く性欲がわかず……大丈夫なのかと不安になります/誰とも恋愛関係を持ちたくないのに、性欲だけはあることに後ろめたさを感じている。願わくば誰にも迷惑をかけずにその手のイライラを発散したい/その場の流れや空気で同意となるのが苦痛。性欲が他人に向きにいくいことを理解されにくい/面倒なので【一人で楽しむ】
セルフプレジャーの感度が、年々下がっている気がする/1人だとイケるがセックスだと気持ちいいところがわからずイケない/性欲はあるものの、1人でこと足りてしまう/イッたことがない。そもそも指を入れるのが怖くてオナニーができない
「パートナーや性欲は、必ずしもマストじゃない」
パートナーとの関係に悩んでいる声がた~くさん寄せられた、セックスのお悩み。みんなは意外に思うかもしれないけど、パートナーがいなくたって、セクシャルウェルネスを充実させることはできるよ。だって、セクシャルウェルネスの基本は「自分自身をよく知る」ことだからね! 「人とすると気持ちよくなれない」「自分でしたほうが気持ちいいのが不安」という人たちは、自分と向き合えているんだから、自信を持ってほしいな。自分とは対話できているんだから、あとは相手とのコミュニケーションを工夫すれば大丈夫。
オーガズムが得られない、気持ちよくないという意見もすっごく多かった。でも、それって仕方のないことなのかもしれない。だって、これまでは男性主体の情報や研究ばっかりで、女性のプレジャーについてあまり真剣に考えられてこなかったんだからね。最近になってようやく少しずつ、女性の快楽の仕組みが判明してきたの。気持ち良さや痛みにまつわることは、これからフェムテックでどんどん解決されていくはず。
ちなみに、セックスを楽しいと感じるかどうか、パートナーとのセックスでオーガズムに達するかどうかは、男性と女性の間で大きな差があることがわかっていて、専門用語で「プレジャーギャップ」っていうの。プレジャーに関する悩みや不安は、ほぼ全員と言っていいほど多くの女性が感じていることだから、心配しなくて大丈夫。それに、最近の研究で、「膣でイケないのは当たり前」ってことも明らかになってきたよ。「膣でイケる幻想」や「女性のセルフプレジャー=膣に指を入れること」という思い込みは、アダルトコンテンツの影響が大きいと言われているの。自分の身体のことでも、まだまだわからないことがいっぱいあるね。最後にもうひとつ、セックスやセルフプレジャーは「しなければならない」ことではなく、「してもいい」ものだから、しなくても本人が満足なら「セクシャルウェルネスが保たれている」と言える。つまり、「性的なことに全く興味がない」「性的欲求を感じない」人にとっては、しないことの方が快適だし健康的ってこと。セクシャルウェルネスは、性的なことをすればするほど満たされる、という単純なものではないんだって覚えておいてほしいの。
Q9.ローション、バイブレーターなどの「プレジャーアイテム」を使ったことがありますか?
プレジャーアイテムを使ったことがあると答えた人は、半数以上。この結果を多いと感じるか、少ないと感じるかも人によって差が出そう。
Q10.「プレジャーアイテム」を使ったきっかけは?
セックスやセルフプレジャーを楽しむため、興味を満たすために使ってみた人が多く、楽しもうとする気持ちが伝わる回答に。パートナーや友人を介してたまたま手に入れた人も。
Q11.今後「プレジャーグッズ」を使ってみたいと思いますか?
プレジャーグッズを使ったことがないけれど、今後使ってみたいという人は46%。使いたいと思わない人を、わずかに上回りました。
Q12.「プレジャーアイテム」を使ってみたいのに使っていない理由は?
【パートナーの目や人目が気になる】
そういった性に対して楽しくお話しできる彼氏に巡り合わなかったから/彼氏があまり好まないため/わざわざ購入したくない。ホテルであっても恥ずかしくて使おうという気にならない/パートナーが好まないので/手元にあるというだけで「誰かにばれるのではないか」と不安になってしまう/買うまでのハードルが高い。夫があまりそういうことに興味がなく、淡白なため/パートナーに言い出せないから/買うのが恥ずかしいから/自分で購入するのは気がひけるから/パートナーに自分から言えない/相手のあることなので、言い出しにくいかも
【場所、金額、時間】
家に置き場がないから/なかなか買う暇がない/実家なので買いづらく、保管場所や使用場所がない/ネットでもなかなか買いにくい。価格が安くても送料が高く損した気分になる/買う場所が限られてる。値段。衛生面への不安
【きっかけがない、わからない】
経験が少ない/使う機会がない/買う機会がない。なにから始めたらいいかわからない/手が出しにくいし、機会がない。また、自分では買いたくないから/種類が多く、どれが良いかわからない/購入する場所がわからないあまり知らないので/行為自体の経験が少なく、使おうという話にもならない。買うほどの積極的な意欲がない/きっかけがないだけです/使い方をうまく知らないから/きっかけがつかめず機会がないから/質の良いものを購入したいがどれがいいかわからない。女性目線でのセックスグッズが少ない気がする
【不安】
使っていると不感症になるのではないか不安/ちょっと怖い/勇気がない/買うことに抵抗があるから/まだ怖くて使っていない/ハマってしまいそう、セックスでは物足りなくなりそう
次回、いよいよみんなの悩みを専門家が解決! 最新フェムテック製品も紹介するよ
みんなの声を通して、デリケートゾーンや性にまつわるもやもやがたくさん浮かび上がってきたね! 今回でアンケート結果の発表はおしまい。次回からはいよいよ、専門家の知恵とフェムテックの力を結集して、みんなのお悩みを解決するよ! フェムテックは、みんながセクシャルウェルネスについて考え、自分自身をもっとよく知るための強い味方。SPUR.JPフェムテック調査団は、これからもみんなのセクシャルウェルネスとフェムテックとの素敵な出会いをナビゲートするよ。お楽しみに!
こちらも気になる結果がたくさん!
illustration:Misaki Tanaka