社会を支える働き手として女性が期待される一方で、労働環境はまだまだ万全とは言えません。企業で用意される健康診断や人間ドックには女性特有の疾患を検査する項目が含まれていることは少なく、健康に関するサポートも足りていないのが現状。 そんな中、フェムテック調査団メンバーから気になる健診があると聞きつけ、女性が罹りやすいがんや疾患を一通りチェックできるYOU健診を試すことに。今回は2021年3月、有楽町にオープンしたばかりの女性専用クリニック、クレアージュ東京 レディースドッククリニックにてエディターSが受診してきました。事前問診から健診当日の様子までをレポート!
そもそもYOU健診とは?
YOU健診の「YOU」は何かの頭文字かと思いきや、子宮(Y)、大腸(O)、乳房(U)の形から由来しているのだとか。この健診では、乳がん、子宮がん、大腸がんといった女性の罹患率が高い3つのがんに加え、子宮内膜症や子宮筋腫など、女性特有の疾患を総合的にチェックすることができます。検査項目は婦人科診察、子宮頸(けい)部細胞診、経腟超音波検査、ハイリスクHPV検査、便潜血二日法、マンモグラフィ、乳房超音波などがあり、20代、30代、40代それぞれのステージに合わせた検査が行われます。 特に、家族歴がある、身近な人が病気にかかった、有名人の経験を聞いて、などをきっかけに不安に思った人が受診することが多いのだとか。
まずはwebでの事前問診を
30代目前のエディターSは、30代向けのYOU健診を受けることに。診察の予約をしたら事前に注意事項が記された書類や検便キットといった問診セットが郵送されるので、既往歴・自覚症状・他覚症状などを答える10分程度のweb事前問診を受診します。検査前日の21時までに食事を済ませ、検査2時間前まで200mL程度の水のみ摂取してOK。当日は万全の体制で健診へ!
初めてのマンモグラフィと緊張の乳房超音波検査
webで事前問診を済ませているので、当日は受付で健診の流れを聞き、検体を提出してスムーズに検査へ。この日はまず乳がんの初期症状を発見するための検査である、マンモグラフィからスタート。乳房を2枚の板で圧迫し薄く伸ばした状態で撮るレントゲンのことで、20代は乳腺が発達していて異変がうまく写らないため、30代からの受診が推奨されています。
乳がんは日本人女性の中で最も罹患数の多いがんであり、年間約9万人が発症すると言われています(※1)。30代から急増し、発症率は45歳でピークに達すると言われ、仕事や子育てといった女性のライフステージの変化と重なって現れる病気。乳がんというと遺伝のイメージが強いですが、実は乳がんのうち遺伝によるものは10%程度という研究結果(※2)があり、遺伝の有無関係なしに検診は定期的に受けましょう。
※1 国立がん研究センターのデータを参照
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/14_breast.html
※2 乳がん.jp(アストラゼネカ)を参照
https://www.nyugan.jp/heritability/diagnosis/relation/
この日がマンモグラフィ初体験で、「痛そう」「怖い」といったイメージがあり直前まで緊張してたエディターS。しかし想像していたような激痛はなく、「これなら定期的に受けられそう」とほっとひと安心。検査では横方向、縦方向から乳房を片方ずつ5秒程度挟まれるため痛みはあるものの、我慢できないほどではなかったよう。ここでは日本製のマンモグラフィの機器を使用しているため、圧力が日本人女性の乳房の硬さに合うように作られており、個人差はあるものの、痛みが比較的大きくないのだとか。検査は着替えなども含めて10分程度で終了。
もう一つの乳房の検査として、いわゆるエコー検査と呼ばれる乳房超音波検査があります。この検査では手で触っただけではわからないような小さなしこりを見つけることができ、乳がんだけでなく良性疾患である嚢胞(乳管の中に分泌物がたまり袋状になったもの)や線維腺腫(乳腺に発生する良性のしこり)も診断できます。数年前の婦人科検診で要再検査になった経験があるエディターSは、少々不安気味な様子。「片側だけじっくりみられている気がする......」と、いつも検査中は技師の手の動きに敏感に。検査結果が芳しくなかった場合はすぐに専門医の受診を。ここでは婦人科・乳腺外科・内科を併設しているので、万が一再検査や経過観察になった場合、受診後の結果を医師に相談できるアフターフォローも用意されています。
受けるべき“2つ”の婦人科検診
婦人科検診では、次は子宮頸部細胞診、HPV検査、経腟超音波検査を行います。この検診では、子宮頸がんや子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫といった、子宮と卵巣に関するがんや疾患を検査することができます。特に20代から30代に急増しているのが、子宮の出口(子宮頸部)にできる子宮頸がん。初期症状がほとんどないため、定期的な検査で早期発見をすることが非常に大切です。出産を迎える時期と重なることから別名「マザーキラー」と呼ばれており、年間約1万人が子宮頸がんを発症している、意外にも身近な病気なのです(※3)。
(※3)国立がん研究センターのデータを参照
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/16_uterine.html
まずは検査台に座り、子宮頸部と呼ばれる子宮の入り口をブラシのついた専用の器具で擦り検体を取る、細胞診と呼ばれる検査を実施。採取自体はものの数十秒で終わり、痛みはほとんど感じませんでした。細胞を調べるため結果はその場ではなく、後日郵送されます。
次はそのまま経腟超音波検査へ。この検査は一般的な婦人科検診に含まれていないことが多いのですが、子宮と卵巣の状態をより詳しく調べることができるので、年代問わず受けてほしい検査のひとつ。子宮付近で発生する子宮筋腫、子宮内膜症、チョコレート嚢胞などを診断することができ、自覚症状のない異常も鮮明に判別できます。 検査は膣内に超音波を発する棒状の器具を1分程度挿入し、はね返ってくる反射波を画像化して識別するというもの。エディターSはタンポンや月経カップを使用した経験があるため、検査に対する不快感はなかったよう。リアルタイムで画面を見ながら「ここが子宮です。卵巣は大体○cmで綺麗な状態です」と、医師にその場で説明してもらえるので、「何をされているんだろう」と不安になることもありません。両方の検査を受けて、10分程度で終了。
今回受けた2つの検査は一つで完結するものではなく、どちらも重要なもの。細胞診では子宮筋腫や子宮内膜症が、そして経腟超音波検査では前がん病変やHPVの感染は判別できないため、小さな異変を見逃さないためにも、通常行われる細胞診だけではなく経腟超音波検査もしっかりと受けましょう。
大腸内視鏡検査は40代以降に
大腸の検査は事前に採取した検体で行う便潜血検査の結果待ちなので、30代以下は当日の検査は不要。ただし大腸がんは40代以降に急増する傾向があるため、40代以上のYOU健診プランには大腸内視鏡検査もオプションで追加できます。この検査では、大腸がん以外にも良性の大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎など様々な疾患を診断することができます。実はがんによる死亡件数のうち、女性の死因第一位は大腸がんで、年間約6万人が発症しています。20〜24歳の罹患率と比べると、30〜34歳で約7倍、40〜44歳で約28倍と一気に増加するので、年齢を重ねるほどに注意が必要。(※4)
(※4)国立がん研究センターのデータを参照
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/67_colorectal.html
検査前は3時間ほどかけて下剤による前処置を施すため、クリニックの一番奥に位置する内視鏡検査室の前には仕切りでプライバシーが守られたゆったりと過ごせる専用スペースがあり、一人ひとつトイレが割り当てられます。約30分の内視鏡検査が終わると、検査台に乗ったまま、横になって休めるリカバリールームへ直行。30分〜1時間程度休んで検査終了です。
40代女性の4人に1人は大腸ポリープがあると言われており、さらに大腸がんの8割以上は良性の大腸ポリープを介して発生すると言われています(※5)。どちらも初期段階では自覚症状が全くないため、体調の良し悪しに関係なく、特に40代を迎えたら大腸も定期的に検査をすることが大切です。
(※5)内視鏡による大腸癌の予防と早期診断を参照
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nisshoshi/113/7/113_1176/_pdf
検査を終えたらひと休み!結果次第で次のステップへ
最後の検査が終わったら、待合スペースのコンシェルジュに報告してこの日の健診は完了です。後は各自のペースで帰りの支度をしてOK。30代のYOU健診は当日受けるものとしてマンモグラフィ、乳房超音波検査、子宮頸部細胞診、経腟超音波検査の4つがあり、この日は朝イチですいていたということもあり、着替えなど含めて1時間程度で終了しました。
検査結果は最短3週間で郵送され、さらに事前問診を答えたwebのマイページからも確認できます。結果説明のアフターフォローでは、こんな不調があるけどどうしたらよいか、何科に行けばよいのか、どんな治療があるのか、といった質問を受けることが多いようで、希望すれば検査結果のアドバイスやサポートだけではなく、連携医療機関の紹介など、受診後もトータルでサポートしてくれます。万が一不安な結果になったとしても、しっかりと次のステップへ案内してもらえるので安心。
一年に一度は受診を
診察の様子。クレアージュ東京 レディースドッククリニック総院長 浜中聡子医師(画像はクレアージュ東京 レディースドッククリニックによる提供)
エディターSは20代前半に婦人科検診を受けた時に要再検査になり、今まで健康だと思っていた日常に雷が落ちたような衝撃を受けました。幸いにも良性のしこりで数ヶ月後の再検査で消滅しましたが、その時に「知るのは怖いけど、知らないままでいる方がもっと怖い」と、検査をして自分の身体を知ることの大切さを知りました。
大腸がんは40代、乳がんは30代、子宮頸がんは20代から罹患率が急増します。特に初期の子宮頸がんには症状がほとんどなく、無自覚のうちに進行してしまうケースもあり、他の部位と比べて若い時期に発症のピークを迎えるのが女性のがんの特徴です。世代ごとに隣り合わせになる疾患は異なるので、人生100年時代を健康に過ごすためにも、定期的に健診を受けることを習慣にしてみませんか?
【クラウドちゃんより】
Y=子宮・卵巣、O=大腸、U=乳房のどの箇所にも、年代問わず疾患やその予備軍となる兆候が隠れている可能性があり、一年に一度の検診が推奨されているよ。誕生月に「自分への健康のプレゼント」として行う人も多いとか。それなら忘れないね。
YOU健診
https://www.youkenshin.jp/
クレアージュ東京 レディースドッククリニック
〒100-0006 東京都千代田区有楽町1-7-1 有楽町電気ビル北館17階
https://www.creage.or.jp/ladies/
YOU健診の費用:20代のプランは25,300円、30代、40代では37,400円から。
photography : Yuka Fujisawa