「奇跡の不細工」を名乗って6年。 自分らしさを大切にするための、まあたそさんの選択

「岡山が生んだ奇跡の不細工」という衝撃のキャッチフレーズで、2017年からYouTubeクリエイターの第一線で活躍されてきたまあたそさん。定期的に投稿される「一重から二重に変身するメイク動画」は、一重の素顔から二重のギャル顔への変貌をつまびらかにするさまが実に鮮やか。自身を「不細工」としながらも、明るく面白い芸風で多くの支持を得ている。が、今年6月に一重から二重に整形したことをYouTubeで告白。その背景を通して、コンプレックスとの向き合いかたや、自分らしさの築きかたなど、今の私たちに必要なセルフケアのヒントを聞いた。

二重にして見えたのは、周囲からの温かな視線

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──動画でも説明されていますが、今一度、なぜ二重にされたのかお伺いしたいです。

これまでずっと一重から二重を作る過程を見せてきたんですが、二重にするための「のり」的なものを長年使用してまぶたを引っ張っていた結果、皮膚が伸びてしまいうまく二重を作れなくなってしまって。化粧をすることが自分のスタンスなのに、それができないという本末転倒な状況に。極限まで頑張ったけど、いよいよ無理になって踏み切りました。

──踏み切るまで、ずいぶん迷われたとか。

「一重から二重になる」が自分の強みで、その前提がなくなってしまうわけだから、すごく迷いました。「うちは整形しない、ずっと一重の子の味方」って昔から言っていたし。でも、まぶたを引っ張り続けると肌がこうなるなんて、そのときは理解していなかったから(笑)。可愛くなりたくて二重にする、とかではなくて、現状維持が難しくなったから致し方なく、という感じです。

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──動画で整形したことを発表して、いかがでしたか。

ずっと整形すること自体より、ファンのみんなにどう思われるんだろう、というのが不安でした。「まあたそは整形しないって言ってたのに」とか「結局可愛くなりたくて顔を変えるんだ」みたいに誤解されたら、期待を裏切ってしまうから。でも、蓋を開けてみたら共感してくれたり励ましてくれたり、温かいコメントばかりでした。うれしかったですね。

──まあたそさんがおっしゃる「一重の子の味方」という言葉には、どんな意味が込められていますか。

うちを好きになってくれる子は、高校生を中心に若い方が多いんですが、その方たちは二重にしたい、なりたいと思っても、実際に踏み切ることがなかなか難しいところにいると思います。お金のことだけでなく人間関係においても「顔を変える」ってけっこうなことだから。うちも顔を変えることに抵抗はあったし、そういう子たちに、自分の動画を見て元気を出してほしいと思っていましたね。「同じ気持ちだよ」って。
ただ、うちが二重にしたら「まあたそに勇気をもらってクリニックを予約した」と手術に踏み切った方がかなりいらして。また違う形で味方になれたのかな、手術してよかったかもしれない、と今は思っています。

自分にとってはコンプレックスでも、誰かの「いいね」になるかもしれない

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──YouTubeはどんなきっかけで始めたんですか。

離婚後、息子を保育園にあずけるまで3ヶ月あって「暇じゃな」って撮り始めました。YouTubeの前にも、Twitterやニコニコ動画で発信はしていて。そもそも我が家は代々目立ちたがり屋の家系で、うちも町内会のお祭りで「真ん中じゃないと踊らない!」って駄々こねるタイプ。自分が目立って面白がってもらうのは大好きなんです。
メイク動画のきっかけは、過去にTwitterで二重メイクのビフォー・アフター画像を投稿したらけっこうバズって、でも「メイクじゃなくて加工では?」みたいに言われていたんですよ。いやメイクだから! 一部始終見せてやるわ! って気持ちで撮りました(笑)。それがあれよあれよと再生されて、後に引けないところまで行ってしまいました。

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──まあたそさんは一貫して自分を「不細工」と表現されていますが、それを楽しいコンテンツにもしていて、受け取る側としては自虐とはまた違う印象を感じます。ご本人としてはいかがですか。

これは少し複雑なんですけど、うちは自分の素顔が可愛くないことより、化粧して理想像に到達しきれない(限界がある)ことのほうが落ち込むんです。逆に素顔が不細工ってことについては、それを周りのみんなが明るく笑ってくれる環境で育ってきているので、コンプレックスではありますけど、同時に面白いものだとも思っていますね。
うちのスタンスは、1回下げるけど、最終的には上げていくこと。「ブスすぎて人生やめたい」はダメだけど「うちの顔、もしかして、○○に似てる……?」みたいな。面白い空気でポジティブな笑いに変えていくことは意識しています。自分のここがキライ、ここがダメ、それをただただ悲観的に発信していると、周りから「この人、攻撃しやすそう」って思われてしまうから。そうするとさらにネガティブになっていっちゃう。明るく盛り上がっていると、人はあれこれ言ってきにくいので。

──YouTubeクリエイターとして活動されてきて、コンプレックスへの向き合い方は変わりましたか。

変わりました。たとえば「可愛くなりたい」って気持ちには、漠然とした「みんなに好かれたい」って感覚が含まれていますよね。うちも以前はそう考えていました。でも実は、人って「可愛い、可愛くない」に分類できるわけではなくて、人によっての「タイプか、そうじゃないか」があるだけだなって。どんな顔でも「いいね」って思ってくれる人はいる。たとえそれが自分の理想の造形ではないとしても「まあたそ可愛い、まあたそみたいになりたい」って言ってくれるファンがいてくれるから、その人たちのことを考えて生きようと思えるようになりました。

自分という“キャラクター”を確立できれば、周りの価値観に惑わされなくなるはず

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──まあたそさんが二重に整形されたとき、ご家族の誰からも気づいてもらえなかったというエピソードが印象に残っています。結局、人はそこまで自分のことを見ていない。それなのになぜ、私たちは人の目を気にしてしまうのでしょうか。

本当に、人の目を気にしても何にもならんと思う。変な着ぐるみを着て渋谷を歩いても、意外と誰も振り返らなかったりするし、本当に人って見ていない!でも「こう思われたくない」って気持ちが自分自身の中にあるってことだから、まずは自分自身を認めてあげる、好きになることが一番。変なところも受け入れる。というか、変であることに誇りを持ってほしいです。個性的なのってかっこいいじゃないですか。

──周りを気にせず自分を大事にするって、具体的にはどういうことなんでしょうか。

たとえばYouTubeのコメント欄に、肯定的なコメントが99件あっても、否定的なコメントが1件あったら、めちゃくちゃ気になってしまいますよね。うちも以前はそうで、そのコメントにわざわざ反論したりしていたんです。でもあるときファンの子に「私たちの“大好き”ってコメントは放置して、否定的なコメントにだけ反応するなんて、まあたそのことを好きな私たちに失礼だと思う」って言われたんですよ。それ読んで涙が出てきてしまって。ごめん! って目が覚めました。たった1つのネガティブな反応に左右されないで、自分のことを貫いたほうが絶対にいい。ディスは余計なお世話でしかないんですよ、本当に。

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──世の中、まだまだ容姿のことやジェンダーロールなど「こうでなければならない」というセオリー、重圧があります。自分らしさを貫きたくても、世の中の常識に縛られてしまう人に、メッセージをお願いします。

両親も自分も離婚を経験していて、だけどうちは離婚とかシングルマザーってものにマイナスなイメージを持ったことは一度もないです。それぞれ、その立場でしか経験できないことがあるし、優劣なんてない。年齢もそうで、うちは27歳になるんですけど、この間も地元の友人に「これ27歳がする格好じゃないやろ」とか言われて、その辺歩いている人、誰もうちの年齢知らんし! 好きな服を着る! ってめちゃくちゃ喧嘩しました。
うちのなかで「キャラクター人間になれたら勝ち」っていうのがあるんですよ。たとえば敬愛する楳図かずお先生とか、アンパンマンとか、“キャラクター”じゃないですか。みんな年齢不詳で、彼らにしかできない格好してて、でもそれは全然変じゃないですよね。自分らしく生きるってそういうことなのかなと。
それと「人生は死ぬまでの暇つぶし」って言葉がすごく好きで。たとえば辛辣なことを言われたり、頑張れない日があったとしても、この言葉を思い出すと「結局死ぬんだし、それまでの時間をどうやって楽しもうかな?」って切り替えて考えることができるというか。生きる意味が暇つぶしって考えるとすごく心が軽くなるので、そんな捉え方もいいんじゃないかなって思います。

まあたそ さんプロフィール画像
YouTubeクリエイターまあたそ さん

1995年生まれ、岡山県育ち。2017年にYouTubeに投稿した、メイクのビフォー・アフター動画をはじめとした面白くて元気をもらえる動画が話題となり、YouTubeクリエイターとして大ブレイク。2023年8月現在、メインチャンネル登録者数は208万人以上(サブチャンネルは127万人)。飾らない人柄や親近感のあるコンテンツ、1児の母として奔走する姿などが、同世代や若い世代から共感を呼んでいる。現在はSNSにとどまらず、ファッション好きが高じて自身でプロデュースをしているアパレルブランド「BEFTEY」や、テレビ、雑誌、ラジオなど活躍の場を広げている。

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