シオリーヌ(以下S) りゅうちぇるさんは、よくSNSで自分の写真に「今日も可愛い!」とコメントをつけていますよね。私、あれが大好きです! 自分で自分を褒めるのはなかなか難しいことですが、りゅうちぇるさんは昔からそれが得意だったんですか? りゅうちぇる(以下R) 全然そんなことないです! 僕はもともとメイクアップやおしゃれが好きな子だったんですけど、中学生のときは、先輩たちに目をつけられるのが怖くて自分を隠していました。沖縄のヤンキーはめっちゃ怖いんで(笑)。家でこっそりメイクアップの練習をしたり、カラオケで本当はディズニーソングを歌いたいのに、友達に合わせてレゲエを歌ったり。そうして、つるむ友達はいっぱいできたんです。でも本当の友達はひとりもできなかった。僕が本心を出さないから、誰も僕のことをわかってくれない。でもそれは僕のせいだから、自分に自信がもてない。それで全然楽しくなくて、疲れてしまって。 S 今のりゅうちぇるさんからは想像もつかない! 何がきっかけで、今みたいに自分を出せるようになったんですか? R ある日、小学生の頃に仲がよかった友達に会ったんです。そしたら、「目が死んでるよ」って言われて。それでいちからやり直そうと、高校の入学式には口紅を塗って、そばかすを描いて行ったんです。“りゅうちぇる”を名乗ってSNSも始めました。そのときに始めたアカウントを、今も使い続けているんですよ。そうやって胸を張って自分を出したら、周りに人が集まってきて、本当の友達もできた。こういう経験をしているから、「自分を認めるのは自分、人にどうこう言われても、まず僕が僕を愛さなきゃ誰にも愛されない」って思うようになったんです。 S そうだったんですね。私もこんな髪の色なので、「助産師らしくない、もっと真面目にやったら?」とよく言われます。でも、そういう声って、本質からはずれていることがすごく多いなと思って。 R わかります。僕とぺこりん(りゅうちぇるさんのパートナー)も、最初は「ビジネスカップル」って言われたし、結婚したときは「早すぎる」、子どもができたときは「パパになるならメイクアップをやめて落ち着かないとね」と言われたり。でも事務所の人や、僕とぺこりんの両親をはじめとする、誰よりも僕たちのことをわかってくれる人たちは、いつも応援してくれた。それが僕のパワーになって、前に進めました。 S 応援の声より、アンチコメントのほうが心に残ってしまうことってある。でも本当は、聞くべき声ってもっと選んでいいなって思いますよね。私が発信するSNSでは、中高生の子たちから、「傷つく思いをしなくてすんだ」とか、「パートナーと話し合いができた」といった声がたくさん届くんです。そういう声を大切にしていきたい。 R アンチコメント、僕はわりと受け流せるんです。芸能人に向いてるなって思う(笑)。でもちょっと気にかかっているのは、そういうことを言う人がたくさんいる世界に、息子は飛び立っていくんだなってこと。世の中にはいろんな人がいるんだということは伝えていかないといけないなと思っています。家族だけが居場所になってほしくはないので。それは意識していますね。
常にポジティブでいる必要なんかない!
R 僕は自分がポジティブでいることに自信があるけど、たまに、それって過信しちゃってるのかなと思うことがある。自信と過信は紙一重というか。「これは無理してるな」となったときにしっかり気づけるように、自分を甘やかすようにしています。TVに出始めた10代の頃は、すべての仕事で100パーセント以上を出したいと思っていました。「絶対に芸人さんより面白いと思われるぞ!」って。でもそれは過信だったと、今は思います。それだと結局、疲れちゃうんですよね。 S どんなに元気な人でも、常に上がり調子な人はいないわけで、ちょっと疲れたときに、それに気づいて休むのはすごく大事。私は、どうしても気分が落ち込む日を「泥の日」と呼んでいます。夫にも「私は今日、泥になることにしました」と宣言して、ずっと布団にいるんですね。自分を責めずに、心の底から休むというのを大事にしています。今は特に、コロナ禍でポジティブになれない状況の方も多いと思いますが……。 R ポジティブでいる必要なんてないです! こんな言葉が僕の口から出てくると、びっくりされちゃうかもしれませんけど(笑)、ポジティブじゃなくていいし、そんな自分を嫌いになる必要もないです。実は、僕は昔は明るいツイートしかしていなかったんですけど、数年前から、自分の心の闇みたいなものを出すように心がけているんです。「疲れるな〜」とか、昔は言ったことなかったんですよ。でも、僕がそういう部分を出すと、みんな安心するらしくて。それで僕ももっと安心して、ネガティブな面を出せるようになりました。 S 確かにホッとしますよね。華々しい世界で活躍しているりゅうちぇるさんでも、落ち込むときはあるんだなって安心します。 R 落ち込んでいるときに大事なのは、とにかく自分が自分の味方でいること。自分を甘やかすことができるのは、自分を愛せている証拠だと思うので、今の心に素直にいたほうがいいなって思いますね。 S 自分の気持ちに従うって、なかなか難しいけれどすごく大事ですよね。連載第1回にふさわしいお話を伺えたなと思います。
SOURCE:SPUR 2021年4月号「シオリーヌのご自愛SESSION」 photography: Wakaba Noda 〈TRON〉 styling: Marie Higuchi 〈TRON〉 hair & make-up: Taeko Suda text: Chiharu Itagaki