助産師であり、性教育について発信するYouTuberであるシオリーヌさんが、「自分を愛すること」についてゲストと語り合う連載。今回のお相手は、女装パフォーマーでありLGBTQ+にまつわるコメンテーターとして、雑誌やテレビ、ラジオで幅広く活動しているブルボンヌさん! 華やかなパフォーマンスを支える自己肯定感について思うこととは?
あなたは向き合えている? 自分の男性性と女性性
S ブルボンヌさんはいつ女装パフォーマンスを始めたんですか?
B 20歳くらいだったかな。大学生のとき、パソコン通信でゲイ専門チャンネルを開局したのね。その集まりの余興として、みんなで女装したのが始まりだったんです。軽いノリでやってみたら、私、とても筋がよくて(笑)。
S 才能が花開いたわけですね!
B そのとき、ずっと自分が抱えてきた女性性を、初めて発散できた気がしたんだよね。子どもの頃って、ナヨナヨしているといじめられたりするじゃない? だから最初はすごくためらいがあったのね。でも自分の中に確実にある女性性を、濃縮してドンと出せるのがドラァグなんだよね。女性性を思いきりデフォルメすることで、男女にまつわる世間の思い込みについてパロディの形で問いかけているわけ。ところで、私はこうやって葛藤の中で自分の男性性・女性性と向き合ってきたけど、誰の中にだって本当は男っぽさと女っぽさ両方の要素があるはず。でも多くの人は、あまりそこと向き合う機会がないんじゃないかなと。
S わかります! だからたとえば女性は、働き出すと当たり前のようにヒールを履き、お化粧するのがマナーだと言われて、苦痛を感じて初めて「なぜ女性だからって?」という疑問に突き当たる。逆にそれまでは、疑問を感じる余地もないのかもしれません。
B シオリーヌも私のプロデュースしているミックスバーに来てくれたことがあるけど、ああいう場所では、誰もが心を開いてそういった問題と向き合えるんだよね。普段は知り合わないようないろんな人たちが出会い、お酒も飲みつつ今まで閉ざしていた扉を開けることのできる場所。パンデミックが起こって、3店舗あったお店のうち1店はすぐに閉店の決断をしました。残りの2店も今はずっと休業中。頑張れる場所がなくなってしまい、すごくつらい思いをしています。「不要不急」だと言われたりもしたけれど、私たちはプライドを持ってやっているんですね。今はもちろん無理だけど、この苦境が過ぎ去ったら、また生身で触れ合うコミュニケーションを大切にしてほしいな。
S 本当に。お店が再開したら、また遊びに行きますね!
SOURCE:SPUR 2021年8月号「シオリーヌのご自愛SESSION」
photography: Kae Homma text: Chiharu Itagaki
