正しく理解すれば、生きやすさの選択肢が広がる!もっと知ろう、ピルのこと PART3

世界と比べてみても、日本での服用率が圧倒的に低いピル。まずはメリット・デメリットは何なのか、正しく知ることから始めよう。もしかしたら、快適に過ごすための選択肢のひとつになるかもしれない。

 

PART3 【Q&A】ピルについて深く正しく理解しよう!

快適で健やかな生活のための選択肢のひとつ。ピルってどんなものなのか、きちんと知識を身につけよう。

 

Q 日本と海外の普及率の違いを教えて

A 世界と比べて、ピル後進国の日本

2019年の国連の統計では、15歳から49歳の女性における避妊方法の選択に関して、日本人のピル選択率は2.9%であるのに対しフランスは33.1%、ドイツは31.7%など、ほかの先進国に比べて低いことがわかる。日本はピルの承認が1999年と他国に比べて25年ほど遅く、認知が広がるまでに時間がかかっていることが理由のひとつと言われている。ほかにも「ピル=避妊」のイメージが強かったり、医師の処方が必要、高価である、といったハードルが重なり、世界に大きく遅れをとっている。

 

Q 飲むと体の中でどんなことが起こるの?

A 妊娠中に近い体の状態になる

通常は女性ホルモンの増減に応じた脳からの命令により卵子が発育するが、ピルを内服すると薬の中のホルモンの作用で妊娠中だと脳が錯覚。また、ピルによって外部からホルモンの質や量をコントロールすることで、排卵が抑制され子宮内膜が肥厚しなくなる。剥がれる子宮内膜が少なくなるので結果的に生理の出血は少なく規則的に。生理周期による体調の変動や炎症物質の放出がなくなるので、体の不調も軽減。避妊効果だけでなく、婦人科疾患、将来の妊娠への体づくりとしても有効なのだ。服用をやめるタイミングは人それぞれで、基本的にはやめてから1〜3カ月で通常の排卵周期に戻る。

 

Q 副作用はある?

A 飲み始めはマイナートラブルに注意

最初は吐き気、胸が張る、不正出血、むくみなどのマイナートラブルが起こり得るが、飲み続けておさまる場合がほとんど。ピルを飲むと太るという噂があるが、科学的な根拠はなく、体調が改善されたことによる食欲増加やむくみが原因と考えられている。不妊や赤ちゃんの先天性異常など将来的な影響もない。

 

Q どんな種類があるの?

A 全部で15種類以上

大きく分けると、1シートのホルモン量が一定である1相性と、3段階になっている3相性の2タイプ。ホルモンの種類や量でさらに分類され、男性ホルモンを抑えてニキビを防ぎたい、月経リズムを整えたい、不正出血や副作用を抑えたいなど目的や体質に合わせて処方される。国内外で15種類以上ある。月経困難症を対象に、保険適用された「超低用量ピル」も。

 

Q 婦人科に通わないとダメ?

A 定期的に通院することが大切

初診では1〜2シートを処方し、その後は経過を見ながら同じ薬の処方を継続するか、変えてみるかの判断をしていくので通院の回数は多め。その後は、保険適用のピルの場合は最大3カ月ごとまでしか処方できないため、3カ月ごとに通院する形になる。自費のピルであれば、医療機関によっては半年分~1年分処方してもらうことも可能。オンライン処方は通院の手間がなく敷居が低いメリットもあるが、子宮頸がん検査やこまやかなフォローがしづらいため、まずは産婦人科に通うことを習慣づけるのが大事。また、入手しやすい、安価だからと、通販サイト等で海外製のピルに手を出すのは絶対にNG。非正規品や偽造薬である可能性もあり、非常に危険。

 

Q 何歳から何歳まで飲んでいいの?

A 初経後から閉経が近づくまで

基本的には初経が始まっていれば、いつから飲み始めても問題ない。月経困難症に悩む人の中には12歳ぐらいから服用し始める人もいる。若くても我慢を続けると子宮内膜症など病気のリスクにつながってしまう可能性もあるので、生理痛がひどいのであれば初経が始まってすぐに飲み始めたほうがいい場合もある。ただし、女性ホルモンには成長を抑制してしまう作用もあるので、まだ成長期間である初経前の服用はタブーとされている。同じく50歳以上での服用も禁忌。世界保健機関によると50歳までは服用してもいいとされているが、40歳以上だと慎重投与という扱いになり、医療機関によってはピル以外の選択肢をすすめられる場合も。年齢が上がるにつれて、血栓症のリスクが上がるというのが理由だ。安全に使用するためには、血圧や肥満などの問題がないかどうか、医師に細かくチェックしてもらわなければならない。

 

 



SOURCE:SPUR 2021年1月号「もっと知ろう、ピルのこと」

illustration: Yuka Takamaru text: Rio Hirai, Ayako Nozawa

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