今すぐ観るべきドキュメンタリー、教えてください! 11人のおすすめ作品を紹介

そこで起きている"今"を伝える。ドキュメンタリーの現在地

社会問題から文化、ライフスタイルまで、あらゆるテーマを描き、記録する。世界を知り、自分自身を知ることにもつながっていくドキュメンタリーの多彩な魅力に迫る

そこで起きている"今"を伝える。ドキュメンタリーの現在地

社会問題から文化、ライフスタイルまで、あらゆるテーマを描き、記録する。世界を知り、自分自身を知ることにもつながっていくドキュメンタリーの多彩な魅力に迫る

1 『全身小説家』

『全身小説家』

U-NEXTで好評配信中 ©疾走プロダクション

今すぐ観るべきドキュメンタリー、教えてくの画像_2

撮影:松岡一哲

推薦者 大森時生さん(テレビ東京プロデューサー)

「『ゆきゆきて、神軍』で知られる原一男監督が、小説家・井上光晴を追った作品。この映画もまた、原作品特有の撮る側/撮られる側の緊張感が濃い。しかし、その緊張を異様なレベルまで引き上げているのは、井上光晴という被写体そのものだ。彼は自分の人生を、まるで小説のように語り、都合よく脚色する。息をするのと同じ自然さで嘘をつき、その嘘をどこまでが本当なのかわからない表情で引き受ける。その嘘はドキュメンタリーを"フェイク"ドキュメンタリーへと誘っていく。井上光晴は、"虚構"と"現実"を軽やかにそして危うく往復する。それは魅力的だが、どこか目をそらしたくなるほどスリリングだ。その不安定さを観客はそのまま受け取ることになる」

2 『ボーイズ・ステイト』

 『ボーイズ・ステイト』

Apple TVにて好評配信中 画像提供:Apple TV

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推薦者 大島依提亜さん(デザイナー)

「テキサス州全土から集まった10代の少年たちが、二つの政党に分かれて疑似選挙を行い、知事を選ぶ姿を追ったA24の激熱ドキュメンタリー。とにかく、漫画みたいにキャラ立ちした子どもたちが次々に出てきては大人顔負けの政治劇を展開する様は本当に実話?と驚愕するばかりだが、昨今のフィクションを凌駕した米国を起点とした世界情勢のほうがむしろ子どもじみて見える。ドキュメンタリーでありながら、疑似的(フィクショナル)な政治実験をする少年たちを描いているのがミソ」

3 『ガールズ・ステイト』

『ガールズ・ステイト』

Apple TVにて好評配信中 画像提供:Apple TV

今すぐ観るべきドキュメンタリー、教えてくの画像_6

推薦者 山崎まどかさん(コラムニスト)

「2022年にミズーリ州で模擬選挙に参加した10代の少女たちを追う。保守派にもリベラルにも自分なりの意見があるが、対話で解決しようとする姿勢が同じ模擬選挙の男子たちが題材だった『ボーイズ・ステイト』と違う。そして男子と大きく待遇が違うことを知って、女子たちはみんな怒りを覚えるのだ。そこに団結がある」

4 『ダイヤモンド・ハイスト:世紀の財宝を狙え!』

 『ダイヤモンド・ハイスト:世紀の財宝を狙え!』

Netflixシリーズ独占配信中 

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推薦者 ブレイディ みかこさん(ライター・コラムニスト)

「ロンドンの下町の犯罪者たちが、ミレニアム・ドームに展示された世界最大級のダイヤモンドを白昼堂々と盗もうとした。まるで『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』や『スナッチ』みたいな実話が、両作の監督であるガイ・リッチーの製作総指揮でドキュメンタリーになった。スタイリッシュな映像、ユーモラスな会話、どんでん返し連続の展開。ドキュメンタリーがこんなに面白くていいの?と思ってしまうだろう」

5 『アメリカン・ファクトリー』

 『アメリカン・ファクトリー』

Netflix映画独占配信中

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推薦者 マライ・メントラインさん(ジャーナリスト)

「GMの自動車工場が撤退し衰退していた米国の町に、中国メーカーが大資本を投下して進出。 "二文化融合"を旗印に、町と住民は上昇の機運に乗るかと思われたが……。『融合という建前の衝突』が多面的にあらわな米中の現状を見るに『なるほどここで決まっていたのか!』と納得感しかない10年前の過去。しかし逆に、当時『この10年後』を予測できたか?と考えてみてほしい。10年スパンでも、後知恵的な考察は決して予見たり得ないことを痛感させる傑作」

6 『ザ・エレクトリカルパレーズ』

 『ザ・エレクトリカルパレーズ』

ニューヨーク Official Channel/OmO

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推薦者 稲田豊史さん(編集者・ライター)

「どんなに〈しょうもない〉題材でも、『語りの順番=構成』さえ巧みならエモい骨太ドキュメンタリーになりうる、という好例。吉本興業の養成所内にかつて存在した『ザ・エレクトリカルパレーズ(エレパレ)』という集団の真実を、当時を知る芸人たちの証言を大量に積み上げることで明らかにしていく。最終的に『エレパレ』という言葉の意味が文学的かつ哲学的に解体していく様は、お見事と言うほかない。お笑いコンビ・ニューヨークのYouTubeチャンネルで公開されている」

7 『ビリー・アイリッシュ:世界は少しぼやけている』 

 『ビリー・アイリッシュ:世界は少しぼやけている』 

Apple TVにて好評配信中 画像提供:Apple TV

今すぐ観るべきドキュメンタリー、教えてくの画像_14

推薦者 森野マッシュさん(脚本家)

「自宅で自由に歌っていた少女が、世界的なポップスター、ビリー・アイリッシュになるまでを、家族みたいな距離感で見守れる超貴重な最高のドキュメンタリー! 夜に観ると、ビリーとお泊まり会したような気分で眠れるのでおすすめ。私のお気に入りは、ビリーが小さい頃から大ファンだったジャスティン・ビーバーと初めて対面するシーン。ハグする二人を見ていると、多幸感がぶわーっと押し寄せてきてこっちまで泣けてくる!」

8 『リュミエール!』

 『リュミエール!』

DVD¥1,257 発売・販売元:ギャガ ©2017 - Sorties d’usine productions - Institut Lumière, Lyon

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推薦者 穐山茉由さん(映画監督)

「映画の発明者であるリュミエール兄弟の作品を追ったドキュメンタリー。当時撮られた何げない風景のような映像も、実はきちんと演出されていて、その構図や空間の使い方、人物の動きなどの豊かさに驚かされます。会社員をしながら映画学校に通っていた頃、授業で『工場の出口』を観たきりだったのですが、こうして作品集のように観てみると"映画の始まり"を感じられて感動してしまいました。誰もが動画を撮れる今だからこそ、あらためて観てほしい作品です」

9 『アニエス V.によるジェーン B.』

 『アニエス V.によるジェーン B.』

Blu-ray BOX発売中 ©2021 NOLITA CINEMA – DEADLY VALENTINE PUBLISHING / ReallyLikeFilms

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推薦者 haru.さん(クリエイティブディレクター)

「40歳の誕生日を前にゆらぐジェーン・バーキン。その人生のレイヤーを、プライベートでも親交のあった映画監督アニエス・ヴァルダ(ジェーンより18歳年上)が、自由で独創的な発想で描き出す。『みんなに愛されたい、それでいて無名でありたい』と語るジェーンの姿は、矛盾を抱えながらも驚くほど自然体で魅力的。10年後、自分もこんなふうに心の声と対峙することができるのだろうか……。変化し続ける世界をそれぞれの視点で見つめ、創作を通して結ばれていた女性同士の友情に、静かな希望をもらえる一作」

10 『A』

 『A』

DVD¥5,280 発売・販売元:マクザム ©「A」製作委員会

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推薦者 山中瑶子さん(映画監督)

「これはオウム真理教が何であったかを説明するためのものではありません。事件をなぞることはせず、カメラは教団の人々と同じ高さに立ち、彼らの生活や沈黙を映し出し続けます。理解や断罪へと急ぐ視線を拒み、メディアが切り落としてきた領域をすくい上げながら、私たちの立ち位置を根底から揺るがす映画です」

11 『黙ってピアノを弾いてくれ』

 『黙ってピアノを弾いてくれ』

Prime Videoなどレンタル配信中 ©RAPID EYE MOVIES / GENTLE THREAT

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推薦者 玉置周啓さん(MONO NO AWARE/MIZ)

「狂気的な異端の天才が独創的な楽曲と挑発的な振る舞いによって世を貫き飛び上がり、やがて極めて平凡などん詰まりへと打ち当たって落下する。その指が文字通り落ち着いたのは幼少期に祖父と何度も叩いた白鍵黒鍵の上だった。真っ暗闇の只中に置かれたピアノに座る狂人と言われた(そのじつ繊細な)男、チリー・ゴンザレス。彼が背中越しに鳴らしたたったの一音は、喧騒の世界と同化するのはもうやめにしようとわれわれに囁く」

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