日本で同性婚を法整備するには、具体的にどんなステップを踏む必要があるのか。LGBTQ+の問題に詳しい弁護士の藤田直介さんに聞いた。
「まず、同性婚を認めるには憲法を変えなければならない――という話がありますが、その必要はありません。『日本の憲法は同性婚を禁止していない』ということは、最近の同性婚をめぐる裁判で裁判所も判断しています。ただ、結婚について定めた民法や戸籍法には『夫婦』とあり、男である夫と女である妻を意味しているので、そのままでは役所が婚姻届を受理できません。そのため法律を変える必要があります」
法律を変えるには改正案が国会で審議・可決される必要があるが、2019年野党提出の改正案は審議されず。
「今年3月に、あらためて立憲民主党など野党が『婚姻平等法案』を国会に提出しました。性的指向・性自認によらずすべての人に婚姻の権利を保障するもので、同性カップルでも養子縁組ができるようにするなど包括的な内容です」
婚姻が認められないために、現在、同性カップルは、職場でも多くの不利益を強いられているという。
「私は長く企業法務に関わっていたのですが、たとえば夫の健康保険に妻が入るようなことが同性カップルではできません。またパートナーやその親が亡くなった場合、忌引き休暇が取れず、有休を取るしかない場合もある。ほかにも夫婦であれば、通常受けることができるさまざまな福利厚生を同性カップルは受けられないのです」
すでに同性婚が認められている欧米先進国と比べると、企業の制度整備も遅れていて、「このような状況はグローバル採用に響き、日本の経済にとって大きな損失になる」と藤田さん。
「OECDによると、『LGBTQ+に関する法整備状況』において、35カ国中、日本は34位でした(2022年度)。今、内外の厳しいビジネス環境下で、企業は優秀な人材を採らないといけないわけですが、LGBTQ+への理解がない環境では、採用の間口を狭めることになります。これは当事者に限ったことではなくて、最近は、マイノリティへの平等が徹底されているかを見て就職先を選ぶ若者も多い」
そんな中、近年は同性婚の法制化に賛同する企業が増えていて、BME※2によると、その数はすでに400社近い。
「グローバルに展開する企業ほど、ダイバーシティ、インクルージョンという潮流を肌で感じていて、こうした経済界の流れが国を動かすかもしれません。海外からリスペクトされる国になってこそ、日本経済の競争力強化と発展につながるのではないかと思います」※2 「Business for Marriage Equality」(BME)は、同性婚の法制化に賛同する企業を可視化するためのキャンペーン。