絶えず新ブランドを開拓! ドレスの可能性を広げたい【ザ・トリート・ドレッシング 飯島智子さん】

ドレスサロン「ザ・トリート・ドレッシング」のチーフクリエイティブオフィサー・飯島智子さん(※以下敬称略)は昨年秋、2年半ぶりにニューヨークブライダルコレクションを訪れ、900着という過去最多のドレスをオーダー! コロナ禍で海外ドレスの買い付けはどう変わったのか、これから注目のブランドなどを直撃。

“守りの買い付け”で乗り切ったパンデミックのはじまり

飯島 新型コロナウイルスが広がりはじめた2020年の当初は、とにかく私たちや各国ブランド側にとってもはじめてのことばかりで、もちろん現地への買い付けは行けない状況でした。時差を超えてオンラインで各ブランドとやり取りをするものの、なかなかドレスのディテールが分かりづらいこともあって、事前に送ってもらった写真と見比べたり、現地スタッフにパソコンをドレスに近づけてもらったりと、とにかく何とかやり切ったという感じです(苦笑)。

――そんな中で2020年はどのようなドレスを買い付けましたか? 

飯島 過去の人気ドレスのリピートを中心に、日本の花嫁のニーズにきちんと応えられる堅実なデザインを多く選びました。あの時は“守りの買い付け”に移行せざるをえなかったですね。でも付き合いの長いブランド、特に「リーム・アクラ」「モニーク・ルイリエ」「アムサーラ」は15年ほどの関係になるので、“あの時のあのルック”と同じようなアレンジを、など今までの経験値と想像力で足りない情報をカバーして、オンラインでの距離を埋め合えました。いい意味で絆が浮き彫りになって、当たり前になっていた関係性の大切さに気付く場面が多かったです!

――大変な状況下だからこそ、嬉しい気付きもあったのですね

飯島 ただ2020年秋の買い付け(2021年秋冬コレクション)では次なるショックがありました。生地やレースを作るヨーロッパの工房が休業や業務停止になってしまい、事実上ドレスが作れない状況になってしまったんです。日本での結婚式も延期に次ぐ延期で、花嫁の求めているニーズが私たちも分からなくなってしまい……。負の連鎖で正直、どんなドレスを買い付けることが正解なのか、未来が見えない感じでした。

 

ようやく訪れた2年半ぶりの買い付けへ

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飯島 2021年は入国時の自主隔離がなくなったら絶対に行こうと決めていました。いつまでも暗いムードではいけない、行けるなら私たちが行くべきと即決断! 2021年10月に2年半ぶりにニューヨークを訪れました。ブランド側も買い付けに来るショップが少ない分、すごく熱意をもって対応してくれて、10日間で合計2030件のアポイントをセッティング。その結果、過去最多の900着を買い付けました。

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――今まで行けなかった分を取り戻す勢いですね

飯島 かなりの気合いを入れた買い付けでした! 現地に行けない期間に海外ブライズのインスタグラムでタグ付けされてるブランドをひたすらチェックして、気になるブランド情報はとにかくたくさんストックしていたんです。結果として新ブランドを5つ迎えることができ、先日の「ジャンバティスタ・ヴァリ」初のブライダルコレクションを披露するトランクショー開催にもつながりました。出向いて本当に良かったと心から思います。

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想い入れのある「ヴィクターアンドロルフ マリアージュ」の新作
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日本人に合わせたアレンジをブランド側も積極的に対応

コロナ禍でもタフな中東ブランドが注目の存在に

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飯島 もう一つのトピックは中東ブランドの勢いです。びっくりしたことに、どのブランドもルック数が少なかった2021年秋冬のブライダルコレクションイスラエル発ミラ・ズウィリンガー」がフルラインナップ発表していたんです。自分たちで素材を作り刺繍も行う中東エリアのブランドは、クオリティも落とさず素晴らしい仕上がりで、とにかく元気! 他ブランドがラックにドレスを掛けるだけの小規模で行っている中、ランウェイ形式で発表する姿にこちらが勇気をもらいました。

――実際に買い付けに繋がったブランドはありますか?

飯島 ネタ ドーヴァー」をはじめ、数ブランド買い付けをしました。中東らしい刺繍やディテールの美しさとニューヨークを感じさせる都会的なエッセンスもあって、きっと日本の花嫁も気に入ってくださるドレスだと思います。欧米のブランドもルック数というより一着一着のクオリティーに力を入れて製作していて、「リーム・アクラ」「モニーク・ルイリエ」などは完全復活! 「ヴィクターアンドロルフ マリアージュ」も素晴らしかったです。他にも注目ブランドのレディトゥウエアをウェディング仕様にアレンジするなど、新しいパーティシーンの提案も検討中です。

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現地に出向いたことで初の買い付けへと繋がった「ネタ ドーヴァー」
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「ヴィクターアンドロルフ マリアージュ」も洗練されたクラシックドレスでカムバック

見据えるのは“本当の勝負の2023年”

飯島 2022年はここ2年間の延期された分の結婚式があるので、コロナ前とほぼ変わらない件数が行われる予定です。ただ、結婚式をするのが当たり前ではなくなった今このタイミングで結婚を決めた方々が、どういうアクションをするかが、私たちの考えるべき課題だと思っています。昨年からはフォトウェディングプランもスタートしましたが、それもドレスを着る機会やシーンをもっと作りたいという前々からの想いがあり、今こそそのタイミングだと始動しました。これまでもカタログなどは自社で撮影を行っていたので、そのスキルを活かして、人生の華やかなシーンをクリエーションできる集団にいずれはなっていけたらと。

――フォトウェディングではどんなドレスが人気ですか?

飯島 カジュアルやラグジュアリーといったカテゴライズではなく、3Dフラワーなど写真映えするキャッチーなデザインがとりわけ人気です。日本のロケーションを活かせる着物の問い合わせも多くいただいていて、今年はオリジナル着物の展開にも力を入れていきたいですね。

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「レラ・ローズ」の新作は立体的なフラワーモチーフで、フォトウェディングにおすすめ

――最後にこれから結婚する方々へメッセージを

飯島 少し前までだったらインスタグラムの先輩花嫁の声でリアルな結婚式の状況をキャッチできていたのが、今は誰の声を聞いたらよいか迷われているカップルも大勢いると思います。だからこそプロの声をきちんと発信していきたいと思っていますし、聞いてもらえるチャンスだと思っています! ポジティブにこれからの未来を見据えて、新たなウェディングの価値をお届けできるよう努めたいです。

―PROFILE―
飯島智子 [Tomoko Iijima]さん
2015年、ドレスサロン「ザ・トリート・ドレッシング」に入社。ドレスコーディネーター、PRを経て20215月よりチーフクリエイティブオフィサーに就任。ファッションへの深い愛をモットーに、日々ドレスの買い付けからクリエイティブ全般のディレクションを一手に担う。

ザ・トリート・ドレッシング
https://www.treatdressing.jp/

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