ふたりらしく、ゲストに感謝を伝えるウェディングにしたい。そんな思いを胸に、この夏に軽井沢で挙式を叶えた桑山美月さん。コンセプトは、ふたりのパーソナリティや歴史を伝える「アート展」。自分たちらしい形にこだわり家族と友人たちに感謝の気持ちを伝えた、心温まる一日に密着。
profile:桑山 美月さん
映像スタジオ勤務。地方TV局の同僚として出会い、現在はヘラルボニーのクリエイティブディレクターとして活躍する桑山知之さんと2022年10月に結婚。2023年7月22日に軽井沢聖パウロカトリック教会にて挙式、軽井沢倶楽部 有明邸にて家族と親しい友人60名を招いたウェディングパーティを開催した。
アートを軸にプランニングしたウェディング
報道の分野で、情報を伝える仕事に携わってきた桑山美月さん。当時、地元である名古屋のTV局で同僚だった知之さんと約2年の交際を経て、知之さんから旅行先の沖縄でプロポーズ。ちょうど1年後となる2023年7月22日に軽井沢でのウェディングを開催した。
結婚を機にこの春、名古屋から東京へと拠点を移したふたり。ドキュメンタリーCMのプロデューサーとして数々の賞を受賞する経歴を持つ知之さんは、知的障害のある作家や福祉施設と協働して商品展開を行う「ヘラルボニー」のクリエイティブディレクターに就任。美月さんは都内映像スタジオでの企画職に転職するなど、キャリアの大きな転換機にありながらも、ウェディングの準備期間を、アートな感性で心から楽しんだ。
コンセプトは過去から現在まで、自分たちが大切にしてきたものを展示する「アート展」。思い出のアイテムをディスプレイすることで、ゲストが自然とふたりの歴史に触れられる“結婚披露記念展 ペア”を企画するほか、お互いがそれぞれの家族へ取材撮影を決行し、知之さん自身が映像を制作。さらにゲスト全員に「手紙」で感謝を伝えるなど、ふたりのゲストを想う気持ちとアイデアが全方位に行き渡った、特別な一日を作り上げた。
感動のファーストミートからスタートした一日
ウェディングの始まりは、ドレスアップした姿をお互いに見せ合う“ファーストミート”から。幻想的なムードが漂う軽井沢の森の中で、ふたりだけでなく家族とも言葉を交わす時間をプログラム。また、美月さんが知之さんに宛てた手紙をサプライズで朗読し、お互いの愛情を確かめ合うワンシーンも。
「沖縄でのプロポーズでは、彼からたくさんの愛情が詰まった手紙と薔薇の花束をもらったんです。気持ちのお返しがしたくて、彼への思いを綴りました」。
非日常感あふれるロケーションで会話を交わしたふたりと家族は、終始リラックスムード。セレモニー前の緊張がほぐれるような、温かい空気感に包まれた。
歴史ある教会でのオーセンティックなセレモニー
美月さんがカトリックのミッションスクール出身ということもあり、由緒正しい教会でのセレモニーを求めて出合ったのが、旧軽井沢の喧騒から離れた場所に静かに佇み、建築家アントニン・レーモンドが設計したことで知られる「軽井沢聖パウロカトリック教会」だった。
「ふたりの地元である名古屋や大阪などの会場も見学しましたが、なかなかピンとくる会場がなくて。気軽な気持ちで訪れた軽井沢でしたが、重厚感のある建築をひと目みて気に入りました」。
3人兄弟の長女として大切に育てられた美月さん。バージンロードを前にしたベールダウンの儀式では、母が美月さんの手を握り『幸せになってね』と一言。
「名古屋から東京に引っ越すことを家族に言いたくなかったくらい、チームのように仲がよい家庭で過ごしてきました。ベールダウンには『母が子育てを終える』という意味もあるので、本当に今日から巣立つんだという気持ちが込み上げてきた瞬間でした」。
作り手の心が宿る、温もりのドレススタイル
結婚準備の早い段階から「Qazari(カザリ)」のドレスをセレクトしていた美月さん。伝統ある教会での挙式のため、クラシカルな雰囲気にこだわり、挙式ではレースとチュールが重なるロングスリーブのドレスを着用。パーティのお色直しでも同じく「カザリ」から、シルバーの刺しゅうが際立ち、華やかな印象を添えるソフトマーメイドドレスをセレクトした。
アンティークなドレスと空間に調和するブーケは、フラワーデザイナーとして活躍する飯田諭史さんにオーダー。ドレスの存在感を引き立てるためにヘアはあえてシンプルにまとめ、ミニマムなスタイルを完成させた。
知之さんが着用したスーツは、知之さんの勤務先「ヘラルボニー」と、オーダースーツやオーダーウェアのブランド「FABRIC TOKYO(ファブリックトウキョウ)」がコラボレーションしたオーダーメイドのスリーピース。ヘラルボニーがライセンス契約する作家、佐々木早苗さんによるアートを裏地としてオーダーした。
「独特の色彩感覚で、黒い丸を繰り返し描いたアート作品は、これからの結婚生活に似たものだと感じてオーダー。納期がギリギリだったのですが、間に合ってよかった! 純粋にアートとして美しくてかっこいい作品を、大切な日に身にまとえてうれしかったです」。
ふたりの歴史を辿る“結婚披露記念展”
「アート展」のコンセプトを表現するため、美月さんがメインとなって準備をしたのは、“結婚披露記念展 ペア”と題した企画展示。
「デートでよくアート展を訪れていたので、結婚披露記念展ができないかなと思ったのがきっかけ。ゲストのみなさんが見て、楽しめるような空間を心がけました」。
パーティ会場の「軽井沢倶楽部 有明邸」のウェルカムスペースに、幼い頃に両親に手作りしてもらったカバンや、大切にしていたぬいぐるみ、学生時代に書いた習字、友人たちと撮りためてきたプリクラなど、ふたりと家族、友人が共通して持っている思い出の品に、ひとつずつ解説をつけて丁寧に展示した。
美術館のようにディスプレイするため、美月さんは什器まで発注! 大判のポスターは、ふたりの初デートの場所、豊田市美術館で撮影したもの。また、知之さんが記者時代にお世話になったというアンティークショップでも特別に撮影を許可してもらうなど、ふたりに縁があるロケーションでのフォトシューティングを叶えた。
「前撮りと当日、どちらもフォトグラファーの桑原雷太さんに撮影を依頼。雷太さんの写真なくしては、展示はできなかったとさえ思っています」。
緑あふれる会場で、ゲストとなごやかな祝宴を
挙式後は、一日一組限定で貸切にできる「軽井沢倶楽部 有明邸」でのプライベートパーティへ。ふたりがイメージしたのは軽井沢の森が、会場内まで続いているようなディスプレイ。会場装飾はブーケ同様に、フローリストの飯田諭史さんへオーダー。
「打ち合わせの段階で飯田さんは『階段の下にトンネルを作る!』と仰っていて、その発想が自由ですごく面白くて。当日は自分たちの想像をはるかに超えたダイナミックな会場に仕上がっていて、本当に驚きました」。
乾杯の挨拶は、知之さんの甥っ子が担当。大人顔負けのしっかりしたスピーチで、和やかにパーティがスタート。ゲストに気楽に楽しんでほしいという思いから、スピーチや演出の依頼はしなかったものの、TV局の先輩たちによるVTRの上映やクイズ企画などのイベントが盛りだくさん。ふたりはゲストの賑やかな声に包まれながら、祝福のひとときを楽しんだ。
ペーパーアイテムも、アートにちなんだこだわりを持って用意した美月さん。さまざまな美術館やミュージアムショップを巡り集めたポストカードは、ゲストの座席を示す“エスコートカード”として使用。さらにそのポストカードは、ゲストそれぞれをイメージして選んだという、驚きのこだわりも! また、ふたりのプロフィールや「ペア展」でディスプレイされたアイテムについて詳細を記した、プロフィールブックをテーブルにセット。ゲストが待ち時間も楽しくなるようにと心を配った。
また、当日にゆっくりゲストと話せないことから、ゲストとふたりの間で「手紙」が行き交うアクションを準備。お色直しで中座している時には、ふたりへ向けたメッセージを書いてもらい、お開きの後には、ゲスト一人ずつに宛てた“エンディングレター”を読む時間をプログラムした。
「時間がない中でもきちんとお礼を伝えたくて、事前に一人ずつに手紙を書きました。私たちが退場して、彼が作ったエンドロールを観た後に手紙を読んでもらうことで、さらに感謝の気持ちが伝わっていたらいいなと思っています」。
ふたりがこれから描く、クリエイティブな未来
結婚式の準備を通じて、『結婚はめんどうなしあわせだ』と感じたというふたり。
「結婚は時に大変なこともある。面倒なことも一緒にやっていける、それが家族なんじゃないかと改めて感じました」。
家族からもらったたくさんの愛を胸に、新たなステージで歩み始めた美月さんと知之さん。互いに認め合うというクリエイティブなライフスタイルを進むふたりから発信される、今後の活動にも注目したい。