ドヌーヴが作品ごとに香水を変える理由

フランス女優、カトリーヌ・ドヌーヴ。10代でデビューし、ミュージカル映画『シェルブールの雨傘』で世界的スターに。73歳の現在も、疑問を差し挟む余地なく「おばあちゃんではなく、女」という匂い立つようなムードを漂わせている。

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人前に出るとき以外は、それほど濃いメイクはしないという彼女。ただし、カントリーサイドで過ごす休日でも、アイブロウ、リップ、そして何を置いても香水だけは欠かさない。「香水は、私の一部のようなものなのです」。

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香りに対する強いこだわりを持つことでも知られているドヌーヴ。かつては、ゲランに、千夜一夜物語の双子の姫をイメージした二面性のある薔薇の香り「ナエマ」を捧げられたり、シャネルの名香No.5のイメージモデルを務めたことも。

そんな彼女がここ数年の習慣にしているのが、映画に合わせて特別な香水を選び、撮影の間中使い続けるというもの。「撮影が終わっても、その香水ををまとうたびに記憶が呼び覚まされるの」。

新しい映画の撮影を控えた彼女が、次の作品のために選んだのは、フレデリック・マルの「オー ド マグノリア」だ。マーケティングやブランドイメージのしがらみにとらわれず、創設者自ら選んだ調香師とともに自由にクリエイティビティを発揮するフレデリック・マル。そんなモダンでユニークなコンセプトのブランドを選ぶあたり、年を重ねても守りに入らないドヌーヴの感度の高さが伺える。


Photo by facebook by Editions de Parfums Frédéric Malle

もう一人、大女優の心をとらえたのが、調香師フランシス・クルジャン。「なぜなら、彼はとても特別だから。ジャン・ポール・ゴルチェの最初の香りを作ったことで知られているけれど、今は自分のブランドがあるの。私、彼の鼻が好き」。日本でも取り扱いのあるメゾン フランシス クルジャンだが、彼女の鏡台に並んでいたのは日本未発売の香り「バカラ ルージュ 540」。過去に限定発売されたバカラとのコラボフレグランスを、定番化したものだ。

photo by instagram @franciskurkdjian by Maison Francis Kurkdjian

「夏にジャスミンの香りをつけるのが好きよ。ナチュラルでありながら、どこか深みも感じさせるところがいいの。フレデリック・マルのカナル フラワーのヘアミストも好きだし、オレンジフラワーの香りも好きだわ……」。ひとたび香りを語り出したら止まらない、女優カトリーヌ・ドヌーヴ。未だ衰えぬ匂い立つような魅力は、鋭敏な感性で選び抜いた香りの記憶を、立ち止まること無く積み重ねているからなのかもしれない。

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