脳と腸のパートナーシップで私たちの健康が保たれていた
ここ数年、健康・美容特集で注目されることが多くなった腸。近年では、医療の観点からも腸と脳の関係が研究されている。「たとえば強いストレスを受けるとおなかの調子が悪くなったり、食欲がなくなったり。このようなことは程度の差こそあれ、誰もが経験したことがあるのでは」とわかりやすい例を挙げるのは、ヤクルト本社広報室・薬学博士の早川和仁さん。「これは脳がストレスや不安を感じると腸の機能に影響が出るという現象で、古くから知見がありました。しかし近年は、腸で生じたさまざまな生理的・病理的な変化が脳へ伝えられ、脳内の情報処理機能に影響を与えることが明らかに。この脳と腸とが相互に情報伝達・情報交換を行い、お互いに作用しあう関係を“脳腸相関”と呼び、世界中で研究が進んでいます」と解説する。
医療からの発信を“脳腸相関”、美容からの発信を“腸脳相関”と呼ぶことが多い。「腸は人体で最大の免疫機能を持つと言われ、体の中に侵入してくる病原菌やウイルスなどを攻撃する免疫システムを持っています。これだけでなく、幸せホルモンと言われる神経伝達物質である“セロトニン”や、脳内の神経伝達物質を合成するための栄養素であるビタミンB群を作るのも、腸内細菌の役割。腸の環境が悪化するとこれらが十分に合成されなくなるため、さまざまな不調の原因になります」
こう語るのは腸の役割に着目し、自身のクリニックで腸内環境チェックも実施している医師の蘆田英珠先生。さらに、介護業界での経験を生かし独自のメソッド、腸律セラピーを確立した小澤かおりさんも
「現代は腸を弱らせる原因がとても多い。だからこそ、腸の状態を把握し、ケアしていくことが大切です」
と、腸ケアの重要性を提唱している。
さまざまな立場から最新の腸の働きに着目している3人の取材をヒントに、その働きをクローズアップしてみた。
お話を伺った方
代官山クリニック
蘆田(あしだ)英珠先生10年以上、美容皮膚科医として「健康」と「美」をテーマに活動。2016年にクリニックを開院し、食事を含めた栄養療法を治療に取り入れるなど、体の内外から治療を行なっている。
ヤクルト本社 広報室 薬学博士
早川和仁さん乳酸菌、ビフィズス菌の研究に携わって約20年。そこで培った知識を広く伝えるために広報担当に。現在、医師や栄養士をはじめ、一般の人に向けて腸に関する講演も行う。
腸律師
小澤かおりさん介護業界に携わった経験から腸の大切さに開眼し、学ぶ。「不調を自覚してほしい」という思いから2017年に腸律サロン「セラピーエ」を開業。現在、腸揉み専門家として活動。