体内に侵入した外敵やストレスに対し、脳より先に反応する腸。これぞまさに"第二の脳"と言われるゆえん。理性でダマせる脳に対し、ごまかしがきかない腸。腸→脳への情報伝達が鈍ることが心身の不調につながっていた
腸では幸せホルモンが作られていた
脳内に存在する神経伝達物質"セロトニン"は、前向きな気持ちを作り出す働きがあることから"幸せホルモン"と言われている。「脳内物質と思われているセロトニンですが、実は約90%が腸内で作られているのです。ここに大きく関与するのが腸内細菌です」(早川さん)。つまり、感情も腸内環境で決まるワケはここにあったのだ。
落ち込みや鬱も腸が大きく関係していた
ストレスによっておなかの調子が悪くなるのは、脳と腸が密接な関係にあるため。「腸内環境を悪くする原因のひとつに、腸の動き(蠕動運動)が悪いことが考えられます。これによりビタミンB群が十分に作られず、セロトニン合成が低下して落ち込みや鬱の原因に」(小澤さん)。すでにアメリカでは腸内環境を整えることで鬱病を治療する臨床研究も始まっている。
ビタミン類は腸でも作られている
食べたものから栄養素を吸収するだけでなく、腸でセロトニンを合成するときに必要になるビタミンB6をはじめとしたビタミンB群、ビタミンKが腸内細菌によって作られている。「ビタミンB群は脳内のセロトニンや情報伝達物質を合成するための栄養素なだけに、これが不足することでイライラしたり、集中力が低下したりする原因に」(蘆田先生)
腸は感情の影響をダイレクトに受ける
嫌なことがあったり、緊張が続いても、何とかその場を乗り切ろうとする脳。それに対し、ストレスを反映してしまう腸。「おなかが張ったり、便秘や下痢になってしまう、というのはまさに腸が感情をダイレクトに受けているサイン」(小澤さん)。脳内のセロトニンが不足するとストレスに弱くなる、という報告もある。
ほかにもある! 腸ってこんなにスゴイ!
腸が元気だと免疫力が上がる
体全体の免疫細胞の半数以上が集まり、外から入り込む異物を撃退している腸。「人間の腸内には約1000種類、100兆個の細菌がすみ着いており腸内フローラを形成。人間に対する働きから有用菌、有害菌、そのどちらにも属さない菌に大別され、このバランスによって私たちの健康が維持されています」(早川さん)
アレルギーには腸内細菌のバランスも関係
有用菌と有害菌のバランスを損なうことで免疫機能が低下。過剰に反応するとアレルギーが発症。「アレルギー患者の腸内には有用菌であるビフィズス菌、乳酸菌が少ないというデータも」(早川さん)。「有害菌が増えることで腸内環境が悪くなり、炎症を起こしやすい状態に」(蘆田先生)
体型も腸の環境が大きく関係していた
体型にもデブ菌、ヤセ菌なる腸内細菌が関わっていることが大きな話題に。「肥満ややせ体型にも腸内細菌が関わっていることが近年わかってきました。一説には、脂肪のため込みを抑える短鎖脂肪酸を作る腸内細菌が多いとやせる、と言われています」(早川さん)
顔色やくすみ、さらには肌トラブルに影響する
肌のターンオーバーや皮脂コントロールなど、美肌に欠かせないビタミンB群が不足すれば当然肌にも影響が。「腸の動きが悪いことで栄養吸収、ホルモン生成が低下。さらに血流が悪化し冷えやむくみが慢性化するなど、肌不調の原因は腸にあります」(小澤さん)