2020年1月から春新色が続々とリリースされ、いよいよ本格的に色めくシーズンが到来。今季のムードとトレンドを3人が語り尽くす!
Talk Session
RIE SHIRAISHIさん
ヘア&メイクアップアーティスト。モード誌を中心に活躍。海外ロケも多く、国内ブランドはもちろん国外のメイクアップトレンドにも精通。
岡部駿佑さん
ファッションエディター。SPUR.JPでも記事を手がける。コレクションブランドは毎シーズンレディス、メンズともに網羅。
安井千恵さん
ビューティエディター。メイクアップページを担当することが多く、春新色は50ブランド以上くまなくチェック。
メイクアップとファッションを謳歌する空気が戻ってきた
安井 SNS時代が生んだライジングスターとも言えるナターシャ・ジョーンズ(@njlooks)のメイクアップ、素敵でしたね(前ページ参照)。
RIE 発想が素晴らしいですよね。メイクアップって自由でいいんだ、と改めて感じさせてくれる。
岡部 鮮やかな色使い、やっぱり気分がアガります。2020年春夏のコレクションを振り返っても、ビビッドな発色や装飾的なデザインのルックを打ち出すブランドが増えてました。
安井 でもどうして今、そんな気分なんでしょうか?
RIE いろいろ検証してみたんですが、60年代に起きた、アールヌーボーのリバイバルからヒッピーへの流れが、今またきていると思うんです。
安井 19世紀末から20世紀初頭に起きたアールヌーボーですね。植物や宝石など有機的なモチーフを装飾的なデザインに取り込んでいった。
RIE そうそう。そこから70年代にかけて混沌とした社会から自由を求めるという時代背景もあって、ヒッピーやサイケデリックのムーブメントが来ましたよね。オリエンタリズムの影響も受けながら、幻想や空想、それこそ理想郷(ユートピア)を目指したカルチャーともリンクしています。
岡部 その流れを現代に落とし込んだのが、今のサイファイやネオンカラーのトレンドってことですね。
G 独特なデジタルアートを生み出すMISHKO。RIEさんもインスタグラム (@mishko.co)をフォロー中
F 全米でヒット中のドラマ「ユーフォリア」。ドラッグ依存症の17歳を主人公にリアルな現代社会を描く (Amazon Prime Videoチャンネル 「スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS-」にて配信中)
RIE まさに。サイケデリックな「アシッド・グラフィックス」もトレンドです。アーティストMISHKO(@mishko.co)の作品(G)が気になっています。
岡部 そう考えると、ソーシャルメディアの中で生きる若者のリアルが描かれた海外ドラマ「ユーフォリア」(F)の流行も納得できますね。そもそもユーフォリアって根拠のない幸福感、多幸感という意味ですし、ヒッピーが目指したユートピアと近いものがある。
RIE「ユーフォリア」のメイクアップを担当しているドニエラ・デイビー(@donni.davy)のインスタグラムを見ていても、色やグリッターをモダンに取り入れていて楽しい。
規制からの解放や、自由への願いを色で表現していく
I (右)映画『チャーリーズ・エンジェル(Charlie’s Angels)』(2月公開)のプレミアにてGERMANIERのドレスをまとうクリステン・スチュワート(左)GERMANIERのドレス¥238,577(輸入関税およびその他諸税込み)/マッチズファッション
安井 ところで、2020年春夏からクリエイティブディレクターがKANAKO氏に変わった新生アディクションのスプリングコレクションの着想源「HOLI」(H)にも同じ雰囲気を感じます。そもそもHOLIとはカラーパウダーを投げ合うインドのお祭り。作物の収穫を祝う意味もあるのですが、カースト制度が根強い社会において、この日だけは身分に関係なくカラフルなパウダーをぶつけ合ったといいます。
RIE 規制からの解放や、自由への願い。現代と通ずるものがありますね。
岡部 トレンドって偶然ではなく必然。
安井 ですね。ではコレクションだと、どんなルックが気になりましたか?
岡部 花々を立体的に施したコム デ ギャルソン(B)や、グリーンをダイナミックに配したノワール ケイ ニノミヤ(D)は自然回帰への流れを感じました。アールヌーボーも有機的な自然のモチーフを取り入れていますから、そこともリンクします。それにケミカルさが加わることでモダナイズされている。
RIE ロマンティックにポップなカラーを融合させたアナ スイ(E)、60年代のサイケデリックな趣にフューチャー感を加えたパコ ラバンヌ(A)も、ヒッピーのムードをモダンに落とし込んでいて印象的。ネオンカラーのヴァレンティノ(C)はトレンドど真ん中。
岡部 ジェルマニエ(I)のルックも素敵でしたよね。26歳のスイス人、ケビン・ジェルマニエがデザイナーで、アップサイクルに本気で取り組んでいる。廃棄された素材を再利用して、モードなドレスに昇華する。でもそれがオーガニックではなくて、それこそサイファイなムードなんです。
いまだかつてない色と輝きに満ちた春の新色
安井 自然回帰、サイケデリック、自己解放……。カラフルなメイクアップで多様性を表現したくなるのも当然です。今季は鮮やかなプロダクトが各ブランドから出ていて、ワクワクしました。ここまでプレイフルなラインナップは、しばらくなかった。
RIE 確かに。コレクションのメイクアップも振り返ってみましょう。
岡部 まぶたにペイントしたかのようなフェラガモ(L)、アイホールよりオーバーに水色をきかせたマルジェラ(M)は、色のパワーに満ちていましたね。
RIE 眉とアイラインがゴールドのグリッターできらめいていたヴァレンティノ(K)、顔の中で鮮やかな生花が存在感を放っていたジャンバティスタ ヴァリ(N)も最高。
安井 ドリス(J)のようにネオンピンクのフェザーを取り入れたヘアも素敵でした。私がやるとキャラ変感が否めませんが、新しい自分へと生まれ変わりたいのがこの春ですから。
岡部 僕もメンズですがカラーメイクアップはどんどん取り入れていきたい。
RIE もはやメイクアップは女性の生活だけのものではないですしね。ファッションやアート、それらを含めたカルチャーの一部なんですよ。
安井 確かに。トータルでアップデートできる人こそ今っぽい。だって見てください、今まで比較的コンサバティブなイメージだったブランドが(12)や(14)みたいなネオンカラーを出しているんですよ。(8)のルナソルや(16)のエスプリークもしかり。
RIE ケイトからもパープルのアイブロウマスカラ(19)が!
岡部 個性を尊重する、というコンセプトで今季からリブランディングされたカネボウからはブルーのリップ(5)。
安井 2020春新色、楽しすぎます! 時代の転換期がやって来ましたね。
RIE's Choice
1 「普段使いしやすいシアーな発色も魅力」。ザ アイシャドウ L New Forest・ 2 同 Amaltas Yellow 各¥2,000〈限定品〉 3 「血色リップに重ねると深みが出ます」。カラーコントロール リップバーム Tulsi Green ¥2,800〈限定品〉/以上すべてADDICTION BEAUTY 4 「目もとに色を持ってくる場合、唇はヌーディにして抜け感を」。リップスティック N 315 ¥3,000(ケース込み)/PAUL & JOE BEAUTE5 「サイバーなブルーメタリックパールが新鮮。派手な色に重ねて」。カネボウ Nールージュ 113 ¥4,000/カネボウインターナショナルDiv.6 「肌になじむオレンジはカラフルなアイメイクとも相性抜群」。ディグニファイド リップス 33 ¥3,200/セルヴォーク
7 「まぶたにのせ、赤のアイライナーでコントラストをつけたい」。アイオープナー S003 ¥1,200〈限定発売〉/マリークヮント コスメチックス
SHUNSUKE's Choice
8 「絵の具で描いたようなフロスティ質感」。ルナソル グラムウィンク フロスト 03 ¥3,200/カネボウ化粧品 9 「こんな鮮やかなピンクで80年代のドレーピングメイクにトライしたい」。ブラッシュ 4046 ¥3,700/NARS JAPAN 10 「まばゆいメタリック感」。ルージュ・ジバンシイ 02 ¥4,800〈限定色〉/LVMHフレグランスブランズ(パルファム ジバンシイ)
11 「下まぶたのキワに入れてミステリアスな目もとに」。コール・クチュール・ウォータープルーフ 12 ¥3,200〈限定色〉/LVMHフレグランスブランズ(パルファム ジバンシイ)
12 「ネオン×グリッターが旬」。コフレドール 3Dトランスカラー アイ&フェイス EX-01〈限定〉/カネボウ化粧品 ・13 「一見地味なベージュも玉虫色のパール入りで新しい表情に」。同 BE-20 各¥1,600〈編集部調べ・3月16日発売〉/カネボウ化粧品
CHIE's Choice
14 「ネオンピンクに偏光パールがイン。ひと塗りで顔の華やぎがかなう」。コフレドール スキンシンクロルージュ EX-09 ¥2,700〈編集部調べ・3月16日限定発売〉/カネボウ化粧品 15 「ベストセラーのグロスにパールがたっぷり。即売り切れそう」。ディオール アディクト リップ マキシマイザー 018 ¥3,700〈限定発売〉/パルファン・クリスチャン・ディオール 16 「エナジャイズなビタミンオレンジ」。エスプリーク セレクト アイカラー N OR207 ¥880〈編集部調べ・3月16日限定発売〉/コーセー 17 「チークはシマーなローズゴールドで輝きをさらりと添えたい」。エクストラ ディメンション スキンフィニッシュ ホット ダム オワゼル ダビニョン ¥4,900〈限定発売〉/M・A・C 18 「くっきりと発色するデニムブルー」。インディストラクティブルアイライナー 07 ¥3,500/THREE 19 「ピンクパープルでフューチャリスティックな眉に」。ケイト 3Dアイブロウカラー 限定カラー PU-1 ¥850〈編集部調べ・限定発売〉/カネボウ化粧品 20 「黒いまつ毛に飽きたら、グリーンにチェンジ。深みがあって悪目立ちしない」。アイラッシュ マスカラ ウォータープルーフ 103 ¥4,300〈限定品〉/SUQQU