蓋を開ければオードゥトワレの力強いウッディーノートが立ち上り、蒸気とともに爽やかなシトラスノートに包まれる。
(200㎖)¥4,620/パルファン・クリスチャン・ディオール
私がBIGBANGのT.O.Pを推し始めたのは2009年。ファンツアーや握手会などのオタ活は大体週末に行われる。それに向けて平日は必死で仕事を終わらせて、ありとあらゆる行事に嬉々として参加していた。ソウルにも足繁く通った。韓国に着いたらまずはエステをハシゴして身を清め、彼に気持ちを伝えられるように韓国語を復習する。あの頃の私は、目をギラギラさせていたと思う。それくらい夢中だった。そうしてオタ活を続けるうちに彼の香りと出合うこととなる。
2013年に参加した握手会のときのこと。写真を撮る際、肩を抱いてくれたT.O.Pからはふわっといい香りがした。舞い上がりながらも「Dior HOMMEの香水を使っているらしい」という話が改めて真実だと確証を得られた。“香り”からは、その人の気配や体温を感じる。それまで神様やヒーローのように崇め奉っていた人の香りを嗅ぎ、「T.O.Pもリアルな人間なんだ」と思ってなぜか感動したことをよく覚えている。現代アートを愛する感性を備え、背が高く体格がしっかりしていて低音ボイスのT.O.P。そのセクシーさが、Dior HOMMEのスタイリッシュでマスキュリンな、ウッドが強くセクシーな香りにぴったりとハマる。香りの印象と本人の印象が見事に合致したのだ。それから、Dior HOMMEの香りはオタ活のお供になった。ファンツアーにムエットを忍ばせたり、同じ香りのシャワージェルを愛用したり。立ち上る湯気に包まれていると、握手会で彼に肩を抱かれた思い出が鮮明に甦る。
時がたち自分にも子どもが生まれ、T.O.Pも入隊してオタ活ができなくなった時期もあったけれど、彼が除隊したときには日帰りで駆けつけた。もちろん、Dior HOMMEの香りを忍ばせて。海外の古参のファンも「まだ応援しているんだよ」ということを彼に知ってほしかった。今は新型コロナウイルスの影響もあり渡韓できないけれど、そんなときだからこそ香りに包まれて、推しとの記憶を反芻しながら郷愁にふけることで、今も変わらない情熱に身を浸している。