2023年は、3年ぶりにマスクを外す生活が戻ってきたものの、メイクアップで盛り上がったのは目元。特に後半のアイシャドウパレット競争は熾烈を極めた。そして2024年の主役は、満を持してのリップとなりそうだ。
TOPIC1:主役はフォルムも完璧な唇! LIPのネクストステージへ
「これまでのリップメイクは、発色や保湿効果、色持ちなど機能面で進化を続けてきたけれど、唇のポテンシャルを引き出しきれていなかったかも。色が戻ってくるのはもちろん、もともとの造形まで美しく見えるような新技術で、トータルで素の唇を綺麗に見せるリップアイテムが増えそうです」(資生堂 メイクアップマーケティング部ヴァイスプレジデント・岡田依子さん。以下同)
早くも2024年の春は「唇そのものが綺麗に見える」「質感まで長持ちする」といった特徴の新リップが各社から続々登場予定。立体的な唇の造形美に開眼する、リップメイク改革を。
唇そのものがきれいに見える、注目の新リップ
TOPIC2:目元やチークは質感重視
唇にフォーカスする分、アイメイクアップの色は控えめになる、と予想。
「アイシャドウはスキントーンやニュアンスカラーが中心で、輝きをプラスし質感勝負。色はアイラインやマスカラで楽しむスタイルに。チークが強いとやや暑苦しい印象になるので、立体感はハイライターやコンシーラーで演出を」
肌に馴染む色と質感が美しいアイシャドウ
TOPIC3:亜熱帯化でベースメイクは下地がキモに
ナチュラルに見せたいけど、適度なカバーは必要。紫外線は防ぎたい、潤いもほしい、テカりは困る…。という日本人の細かな要求に応えるべく、各メーカーが研究と技術を磨くベースメイクアイテム。
「次の課題は、環境対策です。最高値のSPF、PA、耐水性をクリアするのは日焼け止めのデフォルト。高温多湿な夏も、仕上がりの繊細さを求めるのであれば、“くずれにくい”ことを大前提に、毛穴が目立たない、色がくすまないなど、“汚くくずれない”ベースメイクが現実的だと思います。ほぼ亜熱帯化した日本の夏に、よりフィットした製品の需要が高まりそうです」
TOPIC4:エコーチェンバーの深化で、メイクトレンドは多様化
「SNSなどのデジタルネットワークが主な情報源になったことで、好きな界隈を狭く深く追求しやすくなりました。好きな世界観で価値観の合う人とだけ繋がり、エコーのように共鳴し合い増幅する“エコーチェンバー現象”はこの先も続きそう。そこには、自分の“好き”を肯定される、やりたいことを受容される心地よさがあり、生きづらさを感じていた人の居場所にもなる。好きな界隈で受け入れてもらった上でなら、辛口のアドバイスも素直に耳に入るようです。既存の女性ウケ、男性ウケ、など社会常識によって作られた価値観に縛られることなく、価値観の近い人たちと情報交換をしながら自分の好きなメイクを追求していく傾向が強まると思います」
マジョリティもマイノリティもいいも悪いもなくなり、それぞれが好きなものを信じて進む。そんな多様性の時代は、マイクロインフルエンサーがプロデュースするインディーズブランドが大ブレイクする可能性も大いにある。
TOPIC5:K-POPカルチャーを意識しながら、 等身大のモデルを参考に
エンターテインメントもビューティも、韓国カルチャーから受ける影響の大きさはおそらく変わらないけれど、何をどう取り入れるかのチョイスは変わりつつある。
「K-POPアイドルの顔立ちやメイクアップへの憧れはあっても、そのまままるっと真似するステージはそろそろ卒業。そのエッセンスを取り入れて、自分の顔立ちに合うようにアレンジできるようになってきました。製品も憧れの人と同じものを使うだけでなく、身近にあるリアルなものも上手にミックスしていく傾向に」
ビューティアイコンやインフルエンサーの顔ぶれにも変化の兆しが。
「記号的なものに寄せる必要がなくなったという時代の流れはあると思います。30代以上の人が参考にしているのは、次元の違う圧倒的な美しさの俳優やモデルより、等身大よりちょっと上で親近感のある人。失敗や葛藤を乗り越えて自分のスタイルを創り出していった人、その人独自のはっきりとした切り口があり、リアルなレビューを発信する人。自分が学んだことを皆に伝えたい、という意思を感じられる人。その人達のこだわりに共鳴でき、審美眼を信じられるかどうかがポイントのようです。これからの時代に求められている人物像は、“自分らしさ”とは違う、自己演出を上手にできる人だと思います」
MEGUMIさんや吉田朱里さんはまさにその代表例で、趣味で製品レビューを発信していた美容マニアのアカウントに10万人超えのフォロワーがつくことも珍しくない。美容への熱量と自己プロデュース力があれば、誰もがネクスト“みな実”を目指せる!
●お話をうかがったのは……
ビューティを通じて社会と関わり、多くの人を幸せにできる、ブランドの仕事に情熱が尽きない夢想家。