「勲章」に由来するブランド名を持ち、数多くの画期的なアイテムを生み出すトータルビューティブランド、コスメデコルテ。今回は、30色ものカラーをいっきにリリースした「アイグロウジェム スキンシャドウ」と、5質感9種の多彩さを誇る「ルース パウダー」に注目。数多くの色や質感の絶妙な違いを捉えつつ、唯一無二の魅力を表現する色名を真摯に追求し続ける姿勢に、胸を打たれるはず。
命名とは、我が子やペットのように愛しい色たちに、命を吹き込む作業
洗練、エレガンス、ラグジュアリー。そんな称賛の言葉がふさわしいコスメデコルテのメイクアップコスメたちだが、命名には熱すぎるほどの情熱が込められていた。お話しいただいたのは、コスメデコルテ ブランドマネージャーの藤永あすかさん。
「最終的な命名は商品が完成してから行いますが、色名のもととなるキーワードは、初期段階から決めていきます。コンセプト、叶えたい品質目標なども企画チームや研究員を含めた全員で共有することで、より高い品質の商品を完成させることができるのです。
みんなで作っていく過程で、商品のことを『この子』、『あの子』と呼ぶようになっていくことがよくあるんですよ。長い時間をかけて向き合うことで愛情が深まり、まるで人間の子どもやペットのように愛おしい存在になっていくんですよね。だから、色名も世界でたったひとつのその子(その色)の名前として、熟考に熟考を重ねます。
その色の魅力が伝わる言葉、特長をぴったり表現できる言葉を選び抜きながら、常に一番の優先事項は、お客様目線の色名であること。お客様がその色名を見ただけで使ってみたいと思ってくださったり、使うシーンが起草できたり、ワクワクしていただけるように。
それと同時に、その子自身も世の中に出ていったときに、個性を発揮しながら活躍してほしい、誰よりも輝いてほしいと願って名付けています。実際に色名を付けた瞬間、その色の個性がより強くキラキラと輝き出すような感覚があって、名付けの大切さをいつも実感しています」
そんなキラキラとした希望を盛り込みながらも、様々な制約もある。
「名前に使いたい言葉が決まったら、国内外の商標がクリアになるか、自社の過去の商品などと被っていないかをチェック。ネガティブな意味やスラング表現で使われていないかも確認します。さらに、誰にでもわかりやすく、お客様に覚えていただきやすいように、できるだけ短いワードで、難しい単語を使わないようにしています」
肌の延長にある色たちの魅力を紐解くのも、色名の役目
「アイグロウジェム スキンシャドウ」は、昨年の7月に全30色もの圧巻のカラーバリエを携えてデビューし、この夏には2色の限定色が登場。全32色に色名を付けるのは、かなり大変な作業だったのでは?
「そうですね……。やはり同じような色味だと、色名の表現を変えるのに工夫が必要なんですよね。特に『アイグロウジェム スキンシャドウ』は『光と影を操り、肌と骨格を美しく魅せる』というコンセプトのもと、全色が肌の延長にある色味で展開しているので、ベージュ~ブラウントーンが基本なんです。色同士の表現が被らず、既に世の中に存在する言葉の組み合わせは避け、かつ1色1色の個性がきちんと引き立つ色名にこだわりました」
まずは人気カラーの名前の由来から解説してもらった。
12G『satin shine』
「どんな肌&骨格にも溶け込むようになじみ、肌を格上げする色。『色をのせるのではなく、質感をのせる』という発想で、肌の質感を艶やかに上質に仕立ててくれる色として作りました。その表現として『satin』(サテン)を。サテンという言葉は、海外では上質なリップの質感にもよく用いられ、『アイグロウジェム スキンシャドウ』ならではの生っぽいツヤ感も存分に感じていただける言葉です。そこに『shine』を組み合わせて、さらなるツヤと輝きを表現しました」
17G『autumn dazzle』
「ほんのり赤みを含み、クールになりすぎずエレガントに楽しんでいただけるブラウン。血色感のある影と艶めきを、秋の景色が紅葉で染まっていき、さらにその紅葉が光に照らされて輝いていく様子に例えました。秋の影が映り込んだような目元に微細にきらめくパールは、秋のはじまりに、店頭にニットやダークカラーのファッションが並んだときの高揚感とも重なります」
03G『romantic crush』
「心の中のときめきがいっきに弾けて、キラキラと輝きがあふれる様子を表現。この色は歴代のアイグロウジェムシリーズの中でも最も多く大粒パールを配合しているので、この輝度の高さを表わしたいと思って考えた名前です。ベースのカラーは初恋のようなピュアさを感じる淡いピンクで、恋するドキドキ感もよみがえってくるような純粋さがあります。この色を纏って、日常にも小さなときめきを感じて幸せな気持ちで過ごしていただきたいという願いも込めて」
スパイスやスイーツ、花の名前が入った色名も
08G『moon ginger』
「名前の由来は、光輝く月を砕いてまぶしたような色なので。その高貴さからジュエリー系の名前も考えてみましたが、華やかながらすんなり肌に溶け込むナチュラルさも持ち合わせているので、人工的なジュエリーより、自然界の『moon』(月)を選びました。
さらに『moon powder』や『moon dust』ではなく、『moon』に『ginger』組み合わせたのは、黄みがかったブラウンカラーがもたらすクールな印象を感じていただけるように。そして、お料理の仕上げにスパイスをかけるように、この色を輝きのスパイスとしてプラスしてほしいという想いも表現しました」
11G『milk azuki』
「この世に既にある色だけでは表現しきれない色は、何かのモノから名付けることにしています。こちらの色がまさにそれ。ほんのり落ち着いた、黄みも青みも持つ絶妙なピンク系のペールトーンカラーです。ピンクと言ってしまうと可愛すぎてしまうし、カシスやボルドー、ライラックでもなく、モーヴだけでは物足りない。そこでたどり着いたのが、『milk azuki』。和菓子のような上品な風合いに、milkの優しさ、柔らかさ。あずき味のスイーツの色を思わせる色名です」
28M『lily powder』
「もともと白いお花の名前を付けようと決めていた色。最終的に選んだ『lily』(ユリの花)は、その清廉で凛としたエレガントさが色の魅力と重なりました。『powder』は、この色がひと塗りでホワッと白く明るく仕立ててくれる、まるで魔法の粉のような存在だから」
7月に発売される限定色も紹介
31G『sunlit skin』
「定番人気の12G『satin shine』に、夏の終わりに差し込むような光をプラスした限定カラー。色名は、まぶしい光が肌に溶け込んだ様子をそのまま表現しました」
32G『madder sunset』
「レッドともブラウンとも言い切れない絶妙さと、ツヤ感、光感がなめらかに目元に乗るような質感が特長。そして、正面と横からの印象が変化する不思議な魅力。それはまるで、刻一刻と光の色が移り変わる夏の終わりから初秋の夕日のよう。そんな情景とじんわりとした温度感を込めた色名です」
ルースパウダーにも色名を付けて、色も質感も選びやすく
今年の1月に発売された「ルース パウダー」にも色名が付けられている。この商品の一番の特長は、5種類の質感を揃えていること。
「ルースパウダーで肌の質感を変えることを楽しんでいただきたいという想いと、その日のメイクやファッションによっても肌の質感を変えたいというニーズがあるため、5質感9種のラインアップを揃えました。名前を設定したのは、お客様が選びやすくなるように、そして推奨するビューティコンサルタントがお客様にお伝えやすいようにという視点から。なので、誰もがわかりやすい、端的に表現した名前にしようと決めていました」
5種類の質感は、「ツヤ」、「イルミネイトツヤ」、「シルキーツヤ」、「セミツヤ」、「シースルーマット」と命名。
「まずはツヤ系の質感が4種類あるので、それをどう差別化するのか、言葉の選定に悩みましたね。基本的には商品の質感を、誰が聞いても納得できたり想像できたりしやすい名前になっているかどうか考えながら名付けていきました。加えて配慮したのは、肌の質感として喜ばれる表現になっているか、他にはない新しさがあるか、使ってみたくなる表現になっているかということ。
例えば『シースルーマット』という表現は、マットなのに透明感があるという、コスメデコルテの技術力があったからこそ成し遂げられた質感を表現したもの。マット質感は、どうしても隠蔽感のあるものが一般的なのですが、独自の新技術を取り入れマットと透明感、相反する要素を両立しています。さらに手触りもスルスルと極上のなめらかさがあり、上質なランジェリーやストッキングを思わせるので、『シースルー』という言葉を選びました」
質感名を設定しつつ、さらには1つ1つの商品にも色名が付けてある。
「そうすることで、仕上がりの色と質感の両方をイメージしやすくなっています。とにかく絶妙な質感と色とパール感、ツヤ感の違いを楽しんでいただきたくて。さらには、ツヤ感も1種類ではないということを知ってもらいたいという一心で」
商品作りはもちろん、色の名付けも、お客様ファーストな姿勢を貫き通すコスメデコルテ。これからも最新の技術と高い感性を注ぎ込んだプロダクツで、国内外のファンを満たしてくれるはず。
エディターが名付けに
商品
アイグロウジェム スキンシャドウ 31G
ネーミング案
『rich glamping』
着想源
限定色は、今だけの思い出作りや旅のお供にもオススメと聞いたので、楽しくて快適なグランピングをキーワードに。蚊取り線香必須なガチなキャンプではなく、広々としたドームテントをランタンの光が柔らかく照らす中、シャンパンを嗜むような優雅なシーンをイメージしました。
採点
よくできました
コメント
旅につれていきたくなるようなストーリー付けが魅力的です。もう少し色の印象がわかるワードが含まれていたら、なお良いと思います。グランピングでも時間帯によって景色が変わるので、ドームテントから眺める星の輝き、心を和ます穏やかな陽だまり、深呼吸したくなるそよ風、刹那な夕焼けなどの風景を色の表現として取り入れてみるとよいかもしれません。
お話を伺った人
商品企画、経営企画を経て現職に。コスメデコルテのブランド戦略策定から製品の企画、開発、広告などのクリエイティブ業務を統括。これまで手掛けてきた商品は、約1000品! 「ナンバー1でオンリー1を叶えるものしか発売しない」をモットーに、日々商品づくりに励む