薄い膜を何層も重ねて
薄塗り素肌を偽造
タカシバ 素肌風ベースメイクって難しいよね。肌がもともとキレイな人はいいけど、そうでない人はどこまで塗ればいいものやら。
マブニ 本当にそう。厚塗りは老けて見えるけど、薄すぎても肌のアラが目立ってやっぱり老けるし。
ヒロ そうなんですよね。実は素肌をそのまま生かせる人って、全体の2割もいないんじゃないかな。それ以外の人、肌にトラブルや隠したいものがある人は、がっつりつくり込みつつ、素肌っぽく見せるテクニックが必須なんですよ。
タカシバ 教えてー! それ知りたい人、絶対たくさんいるよね。
ヒロ ただし、簡単ではないですよ。工程も製品も多めです。
タカシバ わかった。頑張る!
ヒロ 大原則として、1種類の製品ですべてを隠そうとは思わないこと。用途に合った製品を薄く重ねていくことで、厚みレスなカバーが可能になるんです。今回はそれぞれの肌悩みに適した下地のあとに、ファンデーションで仕上げる鉄板テクをレクチャーしますよ。
マブニ よろしくお願いします!
保湿しながら、サラッと肌を整える。
ヒロ まずは肌の凹凸カバー編。気になる部分ににイヴ・サンローランのリキッド状のポア下地をのばします。
ナチュラルブランド「ムー」とコラボした限定色。毛穴もつるんと埋まる。
ヒロ さらにこの上から、トーンのソリッド状の下地を重ねます。
ほどよい硬さで、ソリッド状の下地を毛穴の中まで入れ込むことができる。
ヒロ rmsのブラシで下地の表面をなでるように少量取って、とにかく薄~く。
マブニ テクスチャーの違うポア下地をダブル塗りするんですね。
ヒロ そう。ソリッド状の下地を塗るときには、コツがあってね。大人の毛穴って、肌のたるみに引っ張られて下を向いているでしょ。だから肌を軽く引き上げて、下からブラシを入れ込むように塗ること(イラスト参照)。すると、毛穴がひとつ残らず埋まる!
マブニ わ~、やってみたい!
フレッシュな肌をつくるピーチカラー。
ヒロ くすみ&クマカバー編は、THREEのピーチ色の下地が神アイテム。けっこうな鮮やかオレンジなんだけど、くすんだ肌にのばすと絶妙に同化してカバーしてくれるんです。しかも変に白く明るくならないところもよき。
タカシバ それ重要! やたらに白くなる下地って、悪い意味でメイクアップ感が出て、私は苦手。
白浮きせず、自然にくすみを補整。
ヒロ モードからはかけ離れますよね。このピーチ色下地が有効なのは、色素沈着系の茶ぐすみ、茶クマ、目尻の影くすみなど。赤み系の色ムラは、ラ ロッシュ ポゼのローズピンク色の下地で。
マブニ えっ、肌の赤みって、反対色のグリーンやブルーで打ち消すのが普通じゃないですか?
ヒロ あー、それだとキレイになりすぎちゃってね。コンサバ顔ならいいけど、SPUR的なスタイルに合わせるとダサくなりがち。
タカシバ うんうん、わかる。
マット&ハイカバー。今回のような重ね使いなら、半プッシュ分で十分。
ヒロ 仕上げのファンデーションは、どんなお悩みの人でも共通です。これも重ね使いが基本で、ナーズのリキッドタイプで薄く薄くカバーしてから、エレガンスのパウダータイプをブラシでクルクル~。
ファイン ヴェルヴェティ ファンデーションSPF20・PA++ 全7色 ¥6,000/エレガンス コスメティックス
サラッと軽く、厚塗り感ゼロ。
密着感&化粧持ちが格段にアップ。
ヒロ 最後の秘策は、クラランスのスプレー。たっぷり吹きつけてから、軽く風を送って乾かします。すると粉感が落ち着いてピタッと密着し、正真正銘の「素肌が透けてる風肌」が完成! 崩れやテカリも防げますよ。
(イラスト右から)
スタイリスト タカシバ
アンチ白浮き主義なので、下地は透明になじむものを選んでいる。自然なマットフィニッシュが好き。
ヘアメイクアップアーティスト 小田切ヒロ〈LA DONNA〉
洋服に合わせて、肌の質感やカバー方法も工夫を。白く明るくしすぎないのが、モードな顔のお作法。
ライター マブニ
肝斑の茶ぐすみ+開き毛穴が気になり、過剰にカバーしがち。薄化粧だと「疲れている?」と心配される。
SOURCE:SPUR2020年11月号「小田切ヒロの美人は化け学」
illustration: Hitoshi Kuroki 〈vision track〉 text: Kozue Mabuni