#45 大航海の記憶

それ自体を可視化できないだけに、もっとも自由に想像の翼が広げられるものが香水だと思います。例えば、マリー・アントワネットの寝室の匂い。エドガー・アラン・ポーの詩の芳香。客観的事実を土台に、残りの大半は主観的解釈を無限に躍動させて「空気」を紡ぐ工程は、胸躍る作業に違いありません。

アルゼンチンにアトリエを構えるフレグランスメゾン「フェギア 1833」のベストセラーのひとつが「ダーウィン」です。ビーグル号に乗り、マゼラン海峡を越えてパタゴニアへと。チャールズ・ダーウィンが辿った航海に着想したこの香りは、ビーグル号の彼の船室をイメージして生まれました。

主軸はキレのよいシダー。そこにみずみずしいグレープフルーツが弾け、土っぽい強さのあるベチバーが輪郭を加えます。未知の世界へのロマンに満ちた、野趣あふれる、でもあくまでモダンな香調は都会のオンタイムにもよく似合う。そしてまとう人を、初めて目にする生物や民族への冒険心や探究心、夢や希望でいっぱいの小さな船室へと、時空を超えて運ぶ切符でもあります。(エディターIGARASHI)

●FUEGUIA 1833 東京本店@グランド ハイアット 東京 1階

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