#60 くもり硝子の向こうには

昨日は暖かい1日でした。ウールのコート片手に白シャツ一枚で取材先を回ったのですが、となると、香水も衣替えしたくなるわけです。戸棚の奥からひっぱり出したのが、この3本。

左はクロエの「イノセンス」。グリーンが際立つフローラルノートで、名前のとおり清純さが弾けるみずみずしい香りです。大好きで20代前半はこればっかり使っていたなぁとしばし遠い目に。この香水が誕生したとき、クロエのデザイナーはカールでしたが、彼の強い服を良い意味で中和するアクアティックな香りでした。    

センターはジル サンダーの「ジル」。こちらはオリエンタルウッディ。ミントやヴェチバーが際立つ、メンズライクなクセがかっこいい香調で、90年代後半のジルのミニマルで凛としたパンツスーツにぴったり馴染む心地よい緊張感のあるフレグランスです。

ほとんど無くなりそうになっている左端は、タン・ジュディチェリの「アンナム」。ハノイ生まれのタンさんのスタイルを汲み取ってだと思うのですがこの香り、炊きたての甘いお米の匂いがするんですよ。香調はウッディムスクで、時間が経つうちにパウダリーなまろやかなミルクの香りとなって肌に馴染みます。先日、赤ちゃんを抱っこしたとき鼻腔をくすぐったのはそういえばこんな匂いでした。忘れていた母性が脊髄反応するんでしょうか、2000年の発売直後は夢中になって1本目はすぐにコンプリート、2本目に購入した最後の残りがこのボトルです。

どうやら3本とも現在は生産中止のようです。15年以上も前の香水ですから仕方ないのかもしれませんが、記憶と嗅覚は密接なだけに、ワンプッシュするだけで少しセンチメンタルな気持ちに。3月の陽光に映えるすりガラスの3つのマイ・グッド・オールド・センツ、春のスタイリングに合わせてちびちび使っていくつもりです。

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エディターIGARASHI

おしゃれスナップ、モデル連載コラム、美容専門誌などを経て現職。
趣味は相撲観戦、SPURおやつ部員。

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