#80 繊細なガラスに包まれて

「重厚感がラグジュアリーの象徴になることももちろんありますが、今回の『ガブリエル』という名前に寄り添うためには、清廉さや純粋さを極めることが大切だと考えました。
そのためにはガラスはできる限り薄く、軽く仕上げなくてはならない。ボトルの開発に取り掛かったのは2009年のことです」

シャネル社の伝説的アートディレクター、ジャック エリュの愛弟子。彼のもとで手腕を磨き、1993年よりシャネルのパッケージ・グラフィック制作責任者の役職に就くシルヴィ ルガストゥロワは、こう語ってくれました。

ルミナスなフローラルアコードにふさわしい透明感。ボトルはフランス製。しかし従来のように内側ではなく、外側にまろやかに押し上げた弧を磨く作業は、ボヘミアの研磨職人に託しました。

「最終の仕上げはコットンの布で磨き上げて完成させます。この研磨技術は、専門の職人が特別に訓練して、やっと得た技なんですよ」

着想源を探して、カンボン通りのシャネルのプライベートサロンを訪れると、銀のジュエリーボックスを手に、シルヴィはこうも教えてくれました。

「蓋を開けてみてください。内側がゴールドになっていますよね? ここにこそシャネルのエッセンスが凝縮されています。つまりラグジュアリーは目には見えない。美とは、外だけでなく内なるもの、ということなのです」

去年、リリースされた香水「ガブリエル」。薄い、繊細なガラスに包まれた黄金の芳香は、シャネルがまた一歩、新しい時代に踏み出したことを教えてくれます。

冬の澄んだ空気にもよく似合う、爽やかなルミナスフローラル。新しい年、新しい気分で歩き始めるのにぴったりのフレグランスです。 

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エディターIGARASHI

おしゃれスナップ、モデル連載コラム、美容専門誌などを経て現職。
趣味は相撲観戦、SPURおやつ部員。

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