香りという感覚の奥深さを思い知らされます。嗅覚言語というものがあるのなら、この3つの小瓶は「救い」そのもの。
独特の質感のこのボトル、磁器製なんです。手のひらの中の、小さな職人技。弥左ヱ門窯が伝統と革新を融合させて誕生させた「ARITA PORCELAIN LAB」による有田焼のうつわは、手塗りによって漆黒に仕上げられています。光にかざせば、美しく水平に走る刷毛に筆致が確認できます。血の通った、人の手による丁寧な仕事の余韻が、ここに宿っているんです。
ひとつひとつ丹精込めてこしらえられたボトルの中身には、そのうつわにふさわしい3つのブレンドオイルが収められました。初代と同じテーマを踏襲しながらも、エッセンシャルオイルのフォーミュラや種類を刷新。パワーアップして登場です。なかでもここ数日の心の拠り所になってくれたのが、「カウントダウン」。私自身がシトロネラに目がないのですが、その個性を和らげるベルガモットにパロサント、メリッサのブレンドが疲れ切った心身に寄り添って肩の力をすーっと取り去ってくれる。今にもバラバラと崩れてしまいそうなマインドと身体のバランスが、優しくもとの位置に帰っていくような実感を覚えます。どんな場所に居ても、「カウントダウン」の蓋を開けば、その場所は誰にとっても癒しのパワースポットに様変わり―そう断言したいくらいの、素晴らしい芳香です。
ぼんやりした朝には「ブリスチャージ」を。ペパーミントやハッカがきりっとしたマインドを呼び起こし、マートルやネロリ、パチュリなどが豊かな多幸感を運びます。一方で一日の終わりには「サイレントナイト」がおすすめ。ゼラニウム&ジュニパーの組み合わせにも私は弱いのですが、張り詰めた神経をゆるゆるとほぐしながら、イランイランやホワイトローズが温かなセンシュアリティを演出。ラベンダーやベルガモットのリラックスムードも心身を包み込みます。
作り手の「AMATA」の美香さん、現代社会に生きる私たちのツボを分かってる、分かりすぎてくれている! それは、美香さん自身が、せわしない毎日を生き抜いてきたチャレンジャーだからだと私は確信しています。
ビロードを立ち上げてから10年。今年はAMATA20周年とも重なります。節目の今年、さまざまな変化がありました。特にこの一週間、予期せぬ出来事が次々に巻き起こりました。知らないうちにため息が漏れるような毎日、不安な表情の誰かが傍らにいたならば、ポーセリンの小瓶をそっと渡してみてほしい。ティッシュに一滴、たったそれだけで癒しの連鎖のひとつに、きっとなれるはずですから。