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【ル ラボ】【ディプティック】【ディメーター】なぜ働いていると本と紙の香りが恋しくなるのか

田無市で過ごした子供時代、駅前ポポロの田無書店は特別な「止まり木」でした。雑誌の発売日には許される限りの立ち読みをして内容を吟味。小遣い事情で購入できるのは一冊だったから、それはもう真剣でした。好きだった動物ものの書籍や女性作家の小説も、図書館にまだ入っていない新刊を探すのは田無書店一択。時は流れ田無書店は姿を消し、そもそも田無市という自治体も消滅した今、現在の生活圏を見回しても消えゆくばかりの書店にため息が漏れるのです。

ページを初めてめくったときの匂い、未知へのドアが開いた瞬間の香り。懐かしい。あの高揚感はいったい、何だったのか。色褪せた中年の「もやもや」はこういうことだったのか、と教えてくれたのが、新書「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」です。

透明感に、知性という名前を付けるなら

ディプティック オードトワレ ロー パピエ
ディプティック オードトワレ ロー パピエ 50ml ¥16,940

ここで質問です。今年になって本を何冊、読みましたか? 気づけばスマホの海をスイスイ無限に泳いでる私なぞ、いちばん痛い質問です。かつての本好きがハッと我に返るきっかけを与えてくれたのが、この一冊であり、このフレグランスなんですよ。

ディプティック オードトワレ ロー パピエ

ひと吹きした空間から見えてくるのは、真っ白な紙の上を走るペン先のズームアップ。かたちのない思いを可視化する筆致が、頭に浮かぶような香りです。

「紙の水」という名前にふさわしく、爽やかなホワイトムスクの風をもたらすオードトワレ。そのあとに一瞬、人の気配や体温を感じる理由は、ライススチームのぬくもりを差し込んでいるから。ベースを司るブロンドウッドアコードが、通奏低音のように落ち着いた知性を演出します。

ディプティック オードトワレ ロー パピエ

軽くて、爽やかで、とらえどころがない香り立ち。ずばり、紙やペンを手に取りたくなる香りです。印刷物の読書への憧憬を掻き立てられて、書店に走りたくなる。なるんです。

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通勤中、または就寝前の読書習慣、忘れていませんか? スマホの電源はしばしOFFに

現在、書店に平積みになっています。ぜひ手に取ってほしい一冊

古本の「のど」から立ち上る、あの匂い

Demeter ペーパーバック
Demeter ペーパーバック 30ml ¥3,520

ディメーターといえば、「雨」という名前の濡れそぼったアスファルトの情景や、「子犬の吐息」と銘打った甘い思い出など、人生を彩る具体的なワンシーンに特化した世界づくりで唯一無二のニッチブランド。こちらの作品も隠れた名作なんです。ページを押し開いて、本の「のど」部分に顔を寄せ、クンクンした瞬間の、あの香りのこと。

Demeter ペーパーバック

我が編集部のアドレスは神田神保町。古本巡りならどんと来い、なのですが日頃の業務を理由に長く遠ざかっていたことに、気づかされました。

Demeter ペーパーバック

このコロンに出合った当日は、ランチタイムを返上してかつて嗜んだ古本ホッピングに繰り出したのはここだけの話。

指先でカリカリ。大好きなサンタルが蘇るセンテッドノート

LE LABO SANTAL 26 SCENTED NOTEBOOK
LE LABO SANTAL 26 SCENTED NOTEBOOK ¥8,030

スマホでメモを取るよりも、実際にペンを走らせて情報を書き留めるほうが記憶に残るようになったのは、年齢のせいなのか。科学的エビデンスがあったらぜひ教えてほしいのですが、年を重ねるごとに実感している不思議のひとつです。

LE LABO SANTAL 26 SCENTED NOTEBOOK

手作業による製本法でかたちになったのが、ル ラボの美しいノートブック。しかも大好きなサンタルが香りづけられていて、奥付からはふんわりヴィンテージの希少本のような渋みが漂うほか、ページの表面をカリッとひっかくと、白檀の名残、のようなものが立ち上ります。

LE LABO SANTAL 26 SCENTED NOTEBOOK

手に入れて数か月になるけれど、未だ大切に取ってあったこの一冊、先週から読書感想のメモ書きノートとしておろしたばかり。

LE LABO SANTAL 26 SCENTED NOTEBOOK

背筋が自然にすっと伸びるような、香り付きノートです。

ルラボ ディプティック ディメーター

著者の三宅香帆さんは「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」でこんなふうに綴っています。「新しい文脈を知ろうとする余裕がないとき、(略)未知というノイズを受け入れる余裕がなくなる」と。余裕の不在にすら気づかない自分を顧みるささやかな抵抗活動(?)として、読書や書店巡り同様に、香りの一服は有効なのではないか。少なくともこの一冊と、上記に紹介した3点をきっかけに、通勤読書が復活した会社員の独り言でした。

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エディターIGARASHI

おしゃれスナップ、モデル連載コラム、美容専門誌などを経て現職。
趣味は相撲観戦、SPURおやつ部員。

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