母のモリ袖トレンチコート #深夜のこっそり話 #642

エディターSが紹介した、受け継がれていくジュエリーのエピソードをお読みになりましたでしょうか。まるで小説の美しい一場面のように感じて、現実にこんな素敵なことがあるのねと心が温かくなっていたところ、「その袖かわいいね」と声をかけられてハッとしました。

着ていたのは、母がバブル時代真っ盛りに買ったイヴ・サンローラン(現サンローラン)のトレンチコート。エポーレットやガンフラップ、ストームシールドなどはなく、ごくミニマルなデザインで、プワンと膨らんだ袖とオーバーシルエットな肩のラインが際立ちます。30年前のものだけあって、ややほつれている箇所もありますが目立つ汚れなどは無く。まだ生地もしっかりとしていて、さすが偉大なメゾンです。今では母から譲り受け、春になるとヘビロテしています。

これを着ていると、「その袖かわいい!」と言ってもらえる機会の多いこと。大きく膨らみつつも手首のあたりでキュッと締まる、フェミニンなテイストの袖です。「これ、バブルの頃のなんだよ」と明かすとみんなが目を丸くするので、色褪せない魅力を持つコートなのだなと嬉しくなり、家族から受け継いだという特別感がさらに気分を上げてくれます。ボリュームのある袖(かのCMで言う「モリ袖」)のトレンドともマッチして、この春は今まで以上に活躍。そう言えば私も良いものを受け継がせてもらっていたと改めて気がつき、まだ早い気はしますが次の世代にも喜んでもらえる買い物が今後できたらなと思うようになりました。

惜しむらくは、かなり長かった裾を切ってしまったこと。ロングシルエットがトレンドになるとは……と母と2人で嘆いています。でも流行は巡るもの。膝丈コートが人気になった暁にはどんなスタイリングで着こなすか、という妄想で夜が更けていきそうです。(エディターSH)

おしゃれ心を満足させる、ひと味違うトレンチコート特集>>
「あなたとファッション」にまつわるリアルなストーリーを募集中>>