クローゼットの中はタイムマシン #深夜のこっそり話 #716

夜眠れないと部屋を片づけ始めるクセがあります。受験生が勉強そっちのけで机の上を片づけ始めるような感覚なのでしょうか。先日ベッドに入ってもなかなか寝つけずにいたところ、そういえば衣替えをしていなかったと思い、真夜中のクローゼット整理が始まりました。するとラックからは、もう何年も着ていないワンピースが。

今から十数年前のことです。ウィメンズのセレクトショップで販売員をしていた私。そのときに着用していたDVFのワンピースが、クローゼットのラックの隅に隠れていたのです。当時はブランドへの憧れだけでなく、仕事の自信をつけたくて思い切って買いました。私が選んだのは、500円玉サイズのテントウムシのイラストが全体にプリントされているデザイン。
ある日、ショップの開店前にそのワンピースを着て入口のガラスを拭いていたときのことです。通りすがりのおばさまが、私のワンピースをみながら「テントウムシはてっぺんまで登ってから飛び立つのよ」と声を掛けてくださったのを覚えています。クローゼットに眠っていたワンピースはシミや汚れが目立つため、今はとてもじゃないけど着られません。ですが思い出に残しておいたのかなぁと思うと、明日も頑張ろうと仕事の糧になりました。

現在発売中のSPUR8月号ウェブでも「服にまつわる記憶」をテーマに、「SPUR NATIONAL FASHION STORY PROJECT」を紹介しています。ある話では「うんうん」と大きく頷いたり、また別の話では心がじ〜んとしたり……素敵なストーリーが満載です。クローゼットも片づいたことだし、今晩はじっくり読み返したいと思います。(エディターMK)

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