書と料理が奏でる、新世界 #深夜のこっそり話 #669

幼い頃、書道教室に通っていました。目の前の白紙に向き合い、カラダを使って文字を書くことが絵を描いているときのそれと似ていて、楽しかったのを覚えています。お手本はありながらも“自由に、心が趣くままに”をモットーとしていた先生のおかげで、書は表現のひとつなんだ、と早い段階から潜在的にすりこまれていました。

あれから、○十年。そのときの感覚を思いださせてくれたのが、書家・中塚翠涛さんとの出会いでした。パリのルーブル美術館地下会場カルーゼル・デュ・ルーブルで開催されたSociété Nationale des Beaux-Arts 2016サロンに招待作家として参加し、インスタレーション部門で「金賞」と「審査員賞金賞」をダブル受賞した中塚さん。幸運にも、数カ月前にインタビューする機会をいただき、書を通して、空気感などみえないものまでも表現してしまう中塚さんの作品とチャレンジに強く胸を打たれました。

そんな中塚さんが、パークハイアット 東京「マスターズ オブ アーツ 2017」の第2弾として、「書と料理」をテーマに、40階にある日本料理「梢」とコレボレーションをすることに。中塚さん自らが、梢の料理のために書を描き焼き上げた唐津焼と有田焼の器に、料理長であり“うつわの目利き”としても名高い大江健一郎さんが旬の食材を盛り付ける、表現と表現の渾身のぶつかり合いです。

先日行われたプレスプレビューでは、一足先に焼き上がった器とともに春の旬をいただいてきたのですが、予想を遙かに上回る素晴らしい世界が待っていました。中塚さんの絵付けが施されるのは、岡本作礼氏をはじめとする名工により作陶された大鉢、大皿、向付など。そこに、「喜怒哀楽」「月」など日常のシーンに根付いているシンプルな言葉が絵付けされます。その言葉の持つ情景や世界感、そして空気感までも感じるから不思議。下書きやコンテなどはなく、器に向かい心の趣くままに筆を滑らせときに踊らせ描いたという中塚さんの絵付けは、個性というありふれた例えでは収まりきらないほど深い。

期間は7月15日から31日まで。中塚さん本人をお招きするスペシャルディナー、ワークショップも開催されるとのこと。先日はランチだったので、今度は気張って夜席に足を運びたいと思います。

期間:2017年7月15日(土)~31日(月)
昼席:¥7,500~
夜席:¥13,000~
※別途、サービス料・消費税
予約・問い合わせ:パーク ハイアット 東京 40階 「梢」
03-5323-3460
http://restaurants.tokyo.park.hyatt.co.jp/koz.html

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