再熱! 80年代音楽 #深夜のこっそり話 #711

その昔、自分が興味を抱いた人には必ず「好きな音楽」を聞いていました。ファッションなど外見的な好みが似ていても音楽の趣味が異なるのはよくあること。お互いが聞いてきた音源をまとめたカセットテープ、MD(懐かしい……)を、ときに赤面必至のライナーノーツまでつけて自慢しあった日々。新しい音楽を運んでくれたのは、いつも「人」でした。

大人になって、テクノロジーの進化は聞き手側の音楽シーンも塗り替えました。今は、データ化された私の興味・関心に基づき、iTunesが新しい楽曲をレコメンドしてくれます。それはそれで面白いし程よく的確なんですが、驚きが沸点に達することはまれ。

そんな折、目が覚めるようなイベントがありました。80年代音楽エンタメサイト「Re:minder-リマインダー」主催のその名も「80年代音楽十番勝負」。元・電通のコピーライターで現在“青年失業家”の田中泰延さんの映画評、スージー鈴木さんのディテールから攻める音楽評、それぞれの大ファンだった私。そのふたりがエポックメイキングな80年代音楽をテーマにトークバトルを繰り広げるとのことで、迷わず参加してきたのですが、これがとても面白く新しい発見の連続で脳も耳もヒートアップ。

私にとって80年代は、手が届くようで届かない時代。まだ幼く、歌というより音として直感的に聞いていた名曲たち。松本隆さん康珍化さんなどが紡いだ、歌詞の素晴らしさを知るのはずっとあとのことになるのですが、どこか叙情的なその旋律に鍛錬された耳は、その後、思春期をむかえてどっぷり浸かることになるメロコア、オルタナ行きのベースになったように思えます。

イベントの詳細は割愛しますが、参加してみて思ったことは、80年代は国内外でも類い希な音楽の豊作の時代だったということ。そして、それらを体系的に面白く感動的に知ることができたのは、やはり「人」からの解説だったということ。アーカイブへのアクセスが容易になったデジタル社会だからこそ、人を介してもっと音楽の素晴らしさを知りたいと思った週末の夜です。(エディターR)