厳しい夏を乗り越え、ようやく本格的な秋の気配が感じられるようになりました。秋といえば、やはり連想するのは、食、運動、そして芸術。ということで今回は、夏の思い出と、芸術の話を。
先月のことになりますが、直島、豊島旅行に行ってきました。ファッション関係者なら誰しも一度は行ったことがあるであろう、現代アートのサンクチュアリこと、直島と豊島。もちろん興味はあったものの、現代アートという響きに苦手意識があったこともあり、これまで遠い存在のように感じていました。
そんな出不精の私の背中を押してくれたのは、ある取材。弊誌10月号で、クロエのナターシャ・ラムゼイ・レヴィのインタビューを担当した時のことです。東京で開催されたイベントのために来日したナターシャ。取材場所に到着し、挨拶を交わすや否や、直島の魅力を熱く語り出したのです。聞くと、東京に来る前の1週間を使って、念願だった直島、豊島を訪れたとのこと。中でも印象的だったという、豊島美術館の内藤礼さんの作品について、一通り熱弁したあと、「あれほど素晴らしい場所が近くにあるなんて、日本人が本当に羨ましい」と付け加えました。ここまで聞いておいて、苦手だの忙しいだの言い訳してはいられません。そのインタビューの後、休みが取れるかも分からないまま、早々に高松行きのフライトを取り、夏休みの計画を立てました。
2泊3日の旅程の中で、可能な限り多くの美術館を巡ったのですが、特に記憶に残っているのは地中美術館。ベネッセアートサイトの中のひとつであるこの施設では、ジェームス・タレルの空間作品や、ウォルター・デ・マリアの立体作品、そしてクロード・モネのオイルペインティングなどが展示されているのですが、雄大な自然を背景に、自然光の中で見る作品たちは、いわゆる現代アートの展覧会というよりかは、体験型のアートインスタレーションといった趣です。冒頭の取材で、ナターシャが熱弁していたのはこのことだったのかと身をもって再確認。それと同時に、きっと今まで現代アートが苦手だったのは、閉鎖的な空間の中で、小難しいキャプションに気を取られながら見ていたからなんだ、と気付かされました。すっかり直島の洗礼を受け、国内旅行への関心が高まった今年の夏。来る紅葉の季節はどこへ行こう、と旅行サイトをブックマークで埋める日々です。