ゴルチエの引退ショーに集ったミューズたち #深夜のこっそり話 #1230

飛行機の中からこんばんは、パリ取材のこぼれ話です。今回の滞在スケジュールでは、メンズ、オートクチュール、ハイジュエリーを中心に取材してきました。

書きたいことはいっぱいあるのですが、何はなくともあのお話。ショー開催の1週間前に発表されたジャン=ポール・ゴルチエの引退は、優雅なオートクチュール ファッションウィークに衝撃を与えました。

プレタポルテが休止した今なお、日本でもファンが多いジャン=ポール・ゴルチエ。もちろん、その人気はフランス本国でも高く、一人のデザイナーであると同時に、オートクチュール、もといフランスの文化を体現する存在として愛されています。

そんなレジェンドの最後のステージを見逃すわけにもいかず、2ヶ月前から予約していたピアノのリサイタルをキャンセルして会場へと向かいました。

普通のファッションショーは、長くても10分から15分程度なのですが、なんと今回のゴルチエは述べ45分。その半分は、デザイナーと縁の深いアーティストたちによるライブパフォーマンスです。

当然モデルも豪華で、ベラ・ハディッド、ジジ・ハディッド、ジョルダン・ダン、ウィニー・ハーロウなど、ヤングセレブリティたちも登場しました。

ただ、愛国心が強いフランス人のこと。会場が揺れるほどの喝采に包まれたのは、ディタ・フォン・ティースやロッシ・デ・パルマ、アマンダ・レア、ファリーダ・ケルファ、キディ・スマイル (フランスのアンダーグラウンドシーンを牽引するクラブパフォーマー兼パーティオーガナイザー) など、ゴルチェを象徴するミューズたち。皮肉に聞こえますが、それは当然のこと。ゴルチエにとって最も大切なのは、フランスの伝統と文化、マジョリティとは異なる個性を持った人たち、多様な美のあり方、そしてユーモアのセンス。ボリューミナスなボディの年配の黒人女性や、煙草をふかしたグラマラス熟女(またの名をベアトリス・ダル)が悠然と歩く姿の美しいことといったら。

驚きあり、笑いあり、歓声や口笛あり、そして涙ありのスペクタクル。フィナーレはボーイ・ジョージのパフォーマンスで幕を閉じます。50年という歴史に区切りをつけたゴルチエ氏。その偉業の重みを噛みしめながら拍手を送るうちに、何故か感傷的な気分になりました。ありがとう、ゴルチエ。お疲れ様でした、ゴルチエ。

ちなみに、オートクチュールショーの休止を発表したゴルチエですが、何か違うアプローチで今後新しいプロジェクトが控えているとのこと。次はどんなアイデアで感動させて(笑わせて)くれるのか、楽しみでなりません。

 

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