K-POPはなぜ私を、そして世界を熱くするのか #深夜のこっそり話 #1400

何かに夢中になりそこから抜けられなくなることを、「沼落ちする」と表現するようになって久しいですが、「沼」という表現は言い得て妙な言い回し。気がついたら本当に「そこ」から出てこられなくなっているんですよね。

あれは確か2017年。TWICEの『TT』を“ひと聴き惚れ”。K-POPって凄いことになっているんですね……?と遅ればせながら気づきいろいろなアーティストの楽曲を掘り進めてみると、どれも1回聴いただけで心奪われ大好きになってしまう曲ばかり。それはもう大量に出てくる出てくる。アイドルにとどまらず韓国のHIPHOPやR&B、インディーズアーティスト、80年代90年代のポップスなども聴き、気がつけば現地の音楽フェスのチケットを取って一人で見に行くほど「沼」の深淵におりました。

そんな「沼落ち」の過程を振り返るきっかけとなる本が発売されました。その名も『K-POPはなぜ世界を熱くするのか』。即購入し、一気に読み切りました。K-POPが作り上げてきた歴史やムーブメントを体系的に紹介し、作り手のインタビューと共に「なぜ世界を熱くするのか?」が解き明かされていて、私が知りたかった仕掛け人側のアイデアやエピソードが全〜〜〜部この本にまとめられているのです!


『K-POPはなぜ世界を熱くするのか 』田中絵里菜(Erinam) ¥1,870/朝日出版社

音楽プロデューサー、コレオグラファー、A&R、MVディレクター、アートディレクター、スタイリストなどK-POPの作り手達へのインタビューを通して伝わる、韓国の音楽業界を良くしていこうという責任感や、熱量、世間や世界と時差を作らないスピード感、柔軟に進化していく姿勢。そのすべてが説得力のあるクリエイティブに表れているのだなぁ……と感嘆しながら読みました。

当の音楽そのものやMVなど音楽に付随するコンテンツのクオリティの高さはもちろんのこと、同じくK-POP好きの友人と話していても常に話題に上がるのが、「コンテンツをより多くの人に広げるための仕掛け」の巧みさ。世界中の多くの人に届けるために、取り入れるもの・手放すもの・投資するものの判断の速さ。業種は違えど、デジタルメディアの仕事をしている身にも痛いほどに染み渡る言葉が沢山書いてあったように思います。楽しく推させていただいている上に仕事の勉強にもなるなんて……(感涙)


写真上は、2019年に撮影したSMTOWN MUSEUM(移転予定のため、2020年5月に営業終了)。建物まるごとSM Entertainmentに所属するアーティストの世界観を存分に堪能できる施設となっており、私が旅行で訪れた時も様々な国の言語でファンたちの話し声が聴こえてきたのが印象的でした。

また、K-POPアーティスト達を取り巻くファンの活動の歴史もとても興味深いです。K-POPはずっと作り手とファンが双方向的に影響し合いながら発展していったものなんですね。
さらに、韓国の経済の歴史・文化の特徴などにも触れており、著者である田中さんの、韓国の出版社のデザイナーとしての勤務経験、また自身もK-POPに熱狂した一人として当時のエピソードも交えた視点で書かれた文章は、注釈の隅々に至るまで本当に楽しいものでした。(“ワカワカ先輩”の語源……初めて知りました……!)

また、最後の章ではそんな双方向性を持つアーティスト達にファンはどこまで求めるべきかについても触れられています。少しの失敗も許されず、どんなときも「公平さ」を求められる状況にある今、あくまで一人の若者であるアーティスト達を尊重したうえで応援するには?という、これからのファンとアーティストとの対峙の仕方も改めて考えさせられました。

この本を読めば、K-POPが好きな人は、「そうか! だから今、ここ(沼)にいるのか!」という楽しい答え合わせが出来るし、まだK-POPの扉を開けていない人はそれらを取り巻く仕組みの面白さ、ビジネス面で参考になるヒントが見つかると思います。 K-POP関連の選書フェアも全国で開催中だそうで、より盛り上がりを見せている今春。ファンはもちろん、そうでない人も必読です!(WEBディレクターNoda)

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