子どもたちが寝る前に、絵本を読み聞かせてやるのが日課です。我が家は、おもちゃは特別な日オンリーだけれど、本ならいつでも買ってもいいという母親本意なルールでやっているので、絵本だけはけっこう充実しているのです。毎晩、次男のリクエスト、長男のリクエスト、それから私が読んであげたいものの豪華3本立て。私自身が幼い頃に読んだ絵本が何冊もレギュラー入りしていて、大人になった今、改めてその魅力を再発見しているところです。
もうじき5歳になる長男は、最近少しずつ絵の少ない児童書にも興味を示すようになってきてくれました。そこでチャレンジしているのが、アーノルド・ローベルの名作「がまくんとかえるくん」シリーズ。私がこの本に初めて触れたのは小学生の頃でしたが、当時はそのよさが理解しきれず、恥ずかしながらつまんない話だなと思っていました。
がまくんは寝てばっかりでだらしがないし、わがままでじめじめした性格なのに、どうしてふたりは仲よしでいられるんだろうと疑問だったのです。しかもシリーズをとおして描かれているのは、がまくんとかえるくんの何でもない日常。特段ファンタジックなことが起こるわけでもないし、インパクトのあるキャラクターが登場するわけでもないですから、子どもにとっては地味に感じるのも無理はないかもしれません。
それが大人になったいま再び読んでみると、昔とはガラリと違った印象なんですよね。がまくんには共感しまくれるし、こんなにも笑えて、なおかつ温かい気持ちになれる作品だったんだと、30代後半になってようやく真の魅力を知ることができた気分です。性格のまったく違う、がまくんとかえるくんの間で繰り広げられるやりとりが、もう可笑しくって! まさに名コンビだなと思います。
なかでもお気に入りは、シリーズ第1作目「ふたりはともだち」に収録されている「おはなし」というエピソード。病気で伏せってしまったかえるくんが、がまくんにお話をしてほしいとお願いするのですが、がまくんはどんなに考えてもちっともお話を思いつけません。考えすぎて、がまくんの調子まで悪くなってしまって、かえるくんの作ったお話を聞いているうちにスヤスヤ眠ってしまうというオチ。がまくんのおバカなところが憎めないし、そんながまくんに優しく寄り添いながらも、ずる賢い一面を持つかえるくんも最高。息子もこの話が大好きで、クスクス笑いながら何度も読み返しています。
あとはやっぱり「おてがみ」ですよね。私が小学生だった頃の国語の教科書に載っていて、授業で何度も朗読したのを覚えています。当時は「なんでよりによってカタツムリに手紙の配達頼むんだよ!」と半ば苛立ちを感じていたのですが、そのカタツムリのおかげで、2人の間にとても幸せな時間が流れるわけです。友情ってこういうことだよなあと、今となっては心底2人の関係性に嫉妬してしまいます。
お互いがお互いを思いやる気持ちをユーモラスかつ上品に表現した、三木卓さんの翻訳の妙も読みどころのひとつ。就寝前に本シリーズのエピソードを読むと、とても豊かな気持ちで1日をしめくくることができます。あの頃の純粋な気持ちに戻ることのできる絵本の力って本当に偉大。心がしめつけられるようなニュースが飛び交う昨今ですが、息子たちにはがまくんとかえるくんのような素敵な友情を育める、優しくて温かい人になってほしいものです。
生粋の丸顔。あだ名は餅。長いイヤリングと丈の長いスカートが好き。長いものに巻かれるタイプなのかもしれません。