今、韓国小説が熱い! ソン・ウォンピョンの新作『三十の反撃』を猛烈に押したい #深夜のこっそり話 #1600

K-POP然り、映画・ドラマ作品然り、勢いの止まらない韓国エンタメに日夜どっぷり浸かっている人も多いのではないでしょうか。この世界的盛り上がりを牽引している屋台骨的存在のひとつが、韓国小説。小説を題材にした実写化作品のなかでも、記憶に新しいのはチョ・ナムジュによる『82年生まれ、キム・ジヨン』でしょうか。BTSのRMやRed Velvetのアイリーンが本作を紹介したことでも話題になりました。暇さえあれば韓国小説を読み漁る日々を送っている私が個人的に実写化を待ちわびている作家、ソン・ウォンピョンによる新著『三十の反撃』をご紹介します。

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ソン・ウォンピョン2作目となる『三十の反撃』で1作目に続き、2022年も本屋大賞翻訳小説部門第1位を受賞。

半地下暮らしをしながら、履歴書を送り続けるも転職の願いは叶わない。大卒なのに非正規社員(インターン)。何者かになりたいと思いながらも、閉塞感に包まれた日々を過ごす30歳のキム・ジヘが物語の主人公。同い年の同僚との出会いをきっかけに、理不尽な社会への小さな「反撃」を通してこれまでの自身を見つめ直す―――というのが大まかなストーリーです。

初校を書き出した当時の本のタイトルが『普通の人』だったと言われているように、反撃によって彼ら「普通の人」が何かを成し遂げたり、革命を起こしたりするお決まりのサクセスストーリーでないところがとてもリアル。社会というシステムの中で何のために生きているのか、自分の存在価値とは何なのか、アイデンティティクライシスの引き金となるような悩みに直面しながらも、何とか自分を見失わずに前へ進もうともがくジヘの姿は、過去、そして現在の自分を投影せずにはいられず、同世代はもちろん、10代、20代の若者にもぜひ読んでほしい一冊です。

「自分らしさ」や「個性」というワードが美徳としてある種の呪縛にも聞こえてくる現代で、他者評価ありきの自分の存在は果たして本当の自分らしさなのか? そこに生きがいややりがいを求める意味とは? ページを進めるたび様々なクエスチョンマークが頭に浮かびながら自問自答。理不尽な出来事や上手くいかない人間関係、仕事に対する不満……悩みのない人などいないわけで、私たちは頭の片隅に常に「反撃」の心を持っておくべきなのでは、と自戒も含めて自分に言い聞かせています。

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2020年本屋大賞翻訳小説部門第1位を受賞した『アーモンド』。

ちなみにこちらは、ソン・ウォンピョンによる初の長編小説『アーモンド』。扁桃体(アーモンド)が人より小さく、喜怒哀楽の感情を一切感じることができない高校生の主人公は、目の前で祖母と母が通り魔に襲われた時も何も感じず、ただ黙って見つめているだけ……。だが、自分と正反対の激しい感情を持つ少年と出会うことで人生が大きく動き出す、という涙なくしては読めないセンチメンタルストーリー。

『アーモンド』では笑うことすらできない少年の心情に寄り添う繊細な物語を書き上げ、一方の『三十の反撃』で描いたのは、ごく普通の人たちの社会での生きづらさやもがいている等身大の姿と、ソン・ウォンピョンの振り幅の大きさにも注目です。

実写化を期待しながら、同時に3作目は一体何を生み出してくれるのだろうと既に次作が待ち遠しいです。彼女の本を手に取るすべての人に愛と勇気をくれる傑作を、秋の夜長のお供にどうぞ。

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エディターTOGASHI

ファッション担当。ワードローブの8割を白黒が占める自称ミニマリスト。シーズン中は野球観戦が日課。よく髪の色が変わります。

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