「混迷する時代にこそファッションは過激になる」と語ったのは、20世紀初頭にパリで活躍したクチュリエールのエルザ・スキャパレリ。レザネフォル(狂乱の20年代)の熱気を肌で感じ、ファッションと芸術の分野において才能を開花させた彼女ですが、そこからおよそ100年後に世界が再び混迷に巻き込まれることになろうとは思いもしなかったはずです。
先日、「バレエザニュークラシック」の公演にお邪魔してきました。現代における新たなクラシックを定義することを目的に、Kバレエカンパニーのプリンシパル、堀内將平くんの旗揚げした「バレエザニュークラシック」。日本が世界に誇るバレエダンサー、現在はKバレエカンパニーの名誉プリンシパルであり、フリーで活躍する中村祥子さんを筆頭に、スターダンサーたちが一堂に集結しました。
演目は「眠れる森の美女」や「シェヘラザード」、「ジゼル」、「瀕死の白鳥」など古典作品をアレンジした、これまた豪華なガラ公演。ダンサーたちの息遣いや、布が擦れる音、着地音まで聞こえてくるような至近距離で繰り広げられるステージは、クラシックでも、コンテンポラリーでもない、まさにニュークラシックの名に相応しい仕上がりでした。
「昨年上演予定だったのが、パンデミックの影響で延期になってしまった。それでも諦めず研鑽を重ね、ここまで来られたことが嬉しい」と語ったのは將平くん。先行きの見えない情勢に振り回されながらも、情熱を持って表現に磨きをかけ、同世代のダンサーたちと作り上げたステージ。それはさながら、青春群像劇のよう。眩しい、眩しすぎる!
そんなことを考えながら、少し前のパリのことを思い出しました。2年半ぶりの海外渡航、パリ オートクチュール ファッションウィークの取材。場所は16区のバカラメゾン。絢爛豪華なロココ様式のサロンで披露されたのは、パリの新星クチュリエ、シャルル・ドゥ・ヴィルモランの最新コレクションです。
今回のコレクションにおいて、母校の生徒が描いたアートワークを取り入れ、新たな表現に挑戦したシャルル。貴族階級特有の、優雅なフレンチ訛りの英語で「新しい時代に向けて、ニュージェネレーションを創造していきたい」と語ります。彼もまた、混迷する時代を生きながら、時に社会情勢に振り回され、迷い、それでも新しい表現に挑戦してきた一人なのでしょう。
21世紀のレザネフォルをどう生きていくのか。彼らのように、新たなことに挑戦する心を持てているだろうか。先行きが見えないからこそ、思い切り傾(かぶ)いていたいじゃないか。情熱が滾らせるニュージェネレーションの姿を見ながら、目前に広がる新時代に向けて思いを馳せる日々です。