一生ものの【グッチ】のバッグ #深夜のこっそり話 #1666

ちょうど1年前の今ごろ、誕生日とクリスマスを兼ねた自分へのプレゼントに思い切って、それこそ清水の舞台から飛び降りる思いで購入したのが、グッチのショルダーバッグでした。ホリデームードで相当浮かれポンチだったんでしょうね。「わー、どうしよどうしよ、買ってしまったよ~」と、興奮のあまり目眩と動悸でふらつきながら、表参道の雑踏をほぼ「無」の状態で原宿駅に向かって歩きました。外はすごく寒かったはずなのに、体はとてもホクホクしていました。モスグリーンのダマスク柄の立派な箱に入った真新しいバッグを大事に携えて、汗ばみながら山手線に乗り込んだのが、まるで昨日のことのよう。あんなにエネルギーもお金もたくさん使った買い物は、うん十年の私の人生において初めてでした。

一生ものの【グッチ】のバッグ #深夜のこの画像_1
モダンに再解釈されたホースビットが輝く「グッチ ホースビット 1955」バッグ。

「グッチ ホースビット 1955」と名付けられたこのショルダーバッグ。70年近く前に誕生したアーカイブを、クリエイティブ・ディレクターであるアレッサンドロ・ミケーレが独自の美学をもってよみがえらせた一品です。適度に硬く、上品なツヤを放つブラックレザー。その表面には細かいシボが刻まれていて、撫でるたびにわずかな凹凸が指先に心地よく伝わります。優美な曲線フォルムと、縁に走る端正なステッチ、そして漆黒のレザーに際立つゴールドトーンのホースビット。メゾンを象徴する歴史的モチーフを再解釈し、シックで自由なスタイルに仕上げるミケーレの才能に感服するばかりです。

一生ものの【グッチ】のバッグ #深夜のこの画像_2
マチが広く、3つのコンパートメントに分かれています。文句なしの収納力。

アレッサンドロ・ミケーレが手がけるグッチのクリエーションが大好きでした。ノスタルジックでドリーミーで、プレイフルでナードでヘンテコで……。カオスなのになぜか統一感があって、いつだってみる者に驚きとワクワクを届けてくれる。2015年のデビューコレクションのショーをみたときの興奮とときめきは、今でも忘れられません。グッチの服はまだ一着も持っていないけれど、それでもあの不思議な世界観を恍惚と眺めているだけで、別次元のどこかへ連れて行ってもらえそうな気がしました。

一生ものの【グッチ】のバッグ #深夜のこの画像_3
直近のコレクションの中で一番好きなのが「GUCCI COSMOGONIE」のルック。パール使いが最高! Photo: Courtesy of Gucci

ミケーレがクリエイティブ・ディレクターを退任するニュースを知ったのは、今から1ヵ月ほど前のこと。関係筋の間ではそろそろかも?と囁かれていたそうですが、本当に残念でなりません。ミケーレのグッチをもっと楽しみたかった。とても名残惜しいですが、1年前に思い切ってバッグを買ってよかった!と、しみじみ感じている年の瀬です。もし将来息子がファッションに目覚めたら、「これはミケーレ時代のバッグなんだぞ」と自慢げに語ってやろうと思っています。

どんなシチュエーションでも、どんな着こなしにも寄り添ってくれる、正真正銘の一生もの。このバッグとともに、この先もいろんな景色を見ていきたいです。さて、次はどんな新風が吹き込まれるのでしょうか。2023年が素敵な幕開けとなりますように!

エディターHAYASHIプロフィール画像
エディターHAYASHI

生粋の丸顔。あだ名は餅。長いイヤリングと丈の長いスカートが好き。長いものに巻かれるタイプなのかもしれません。

記事一覧を見る

FEATURE
HELLO...!