幸せを引き寄せる【ドリス ヴァン ノッテン】の花柄 #深夜のこっそり話 #1779

子どもの夏休みの宿題で、うん十年ぶりに自宅でアサガオを育てています。この暑さですから、ベランダに置いておいてうっかり枯らしてしまったらどうしよう……とドキドキしていたのですが、これがまったくの杞憂でした。連日の猛暑もなんのその。ツルをぐんぐん伸ばし、柔らかなトゲの付いた葉をわっさわっさと茂らせ、朝がくると昨晩までの蕾が嘘みたいに、そして一日の始まりを讃えるかのように、青や紫の大輪の花を次から次に咲かせています。ひとつひとつの花の寿命は一日限りと儚いのに、あきれるほどにたくましい。「自分もそんな風に生きられたなら」なんて思いながら、夏の趣を感じています。

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子どもが持ち帰ってきたアサガオ。暑さに負けず、自宅でぐんぐん成長中。

日々の暮らしにはもちろん、ファッションにも花を取り入れるのが好きです。クローゼットの中は年中お花畑状態(そう書くと、なんだか浮かれポンチな人みたいですね)。いろんなブランドのいろんな「花」をマイ・ヴィンテージとして育てていますが、とりわけ何年着続けても、飽きるどころかむしろ魅力を増していってるのが、ドリス ヴァン ノッテンの花柄です。

すべてをかき消してしまいそうなほど大胆でドラマティック。なのに、デイリーにも違和感なく着こなせるラフさがある。うっとりするほど夢々しいのに、決して甘すぎることはなく、ほのかな毒っ気を帯びている。ときにノスタルジックで、ときにアヴァンギャルドで、あらゆる感情やムードが入り交じり、時空をすっかり忘れてしまう。それでもひと目見た瞬間、反射的に「素敵! 着てみたい!」と思えるのが、ドリスの服の魅力、というか、魔力だと思います。

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ドリス ヴァン ノッテン2023年春夏シーズンのショーのフィナーレ。あふれんばかりの花、花、花。©︎gettyimages

パンデミックを経て、2年半ぶりにショー形式で発表された2023年春夏シーズンのコレクションを見たときの感動は忘れられません。闇から光へ。「服を着る喜び」が純粋に表現されたショーの終盤で、あふれんばかりに展開されたのは、色とりどりのフラワープリントでした。先行きの見えない時代でも、花のように強く、美しく、光のある方を向いて生きていきましょうよ! とドリスさんご本人に囁かれているような気持ちになり、画面越しにショーを観ながら静かに高揚したのを覚えています。

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ノスタルジックなフラワープリントにひとめぼれした、ドリス ヴァン ノッテンのロングスカート。軽やかな素材なので、夏も快適です。

あの感動から数ヵ月、満を持してこの夏のワードローブに迎え入れたのは、ランウェイにも登場した橙色のフラワープリントをあしらったスカート。陽だまりのようなオプティミスティックな色合いと水彩画のような絵柄が、懐かしくもあり、同時に新鮮でもあり、はくたびに不思議なパワーをもらえるような気がするんです。事実、とある取材の日にこのスカートをおろしたのですが、その取材の後、思いがけない幸運に巡り合いました。ただの偶然といえばそれまで。でも、もしかしたらあの日のあの幸運は、このスカートをはいていたおかげで笑顔になれた私だったからこそ呼び寄せられたのかもしれない。なんて思うと夢が広がります。ファッションとは、大いなる自己満足。だとしたら思う存分ポジティブにおしゃれを楽しみたい。だからわたしは、ドリスの服が大好きです。

エディターHAYASHIプロフィール画像
エディターHAYASHI

生粋の丸顔。あだ名は餅。長いイヤリングと丈の長いスカートが好き。長いものに巻かれるタイプなのかもしれません。

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