聞かれることもそうそうないとは思いますが、「人生で一番多く通っている成城石井は？」と問われたら、紛れもなく「神保町店です」と答えます。その次、いや同じくらいに通っているのが編集部からも徒歩圏内の、もうひとつの成城石井、東京ドームラクーア店。ここは敷地面積も広く、製品点数もかなり多く充実していて、売り場は神保町店の３〜4倍はありそうです。あくまで自分調べなのですが、成城石井の都内店舗上位ではないかと思われるワインやお酒の数。
そして名前の通り、東京ドーム内にあるので、ショップの目の前にはアトラクションの乗り物などがあり、仕事帰りに立ち寄ると不思議と気分があがります（笑）。楽しそうなデートや友人と盛り上がっているシーンを目にして、そんな遊園地の非日常感が気づかぬうちにテンションを上げてくれているのかもしれません。
調味料売り場での「なにこれ？」が始まりでした
ファミリー層をターゲットとしたスーパーと比較したら規模は小さいかもしれませんが、東京ドームラクーア店は都内にある成城石井の中では大きい方なのではと推測します。そのため、トマトひとつにしても、種類豊富。気になる産地のものをあれこれ試せます。また、調味料とて、棚一面に成城石井がセレクトしたこだわりのものが並んでいるので、知らない顔ぶれもたくさん。興味深く眺めてしまいます。
普段は調味料棚のレーンはスルーしがちなのですが、その日は週末で時間に余裕があり、面白いものがあるかなと見始めたのです。そこで目に入ったのが、こちら九重雜賀の製品。ふと見ると何も特別なことはない一般的なこだわり酢に見えますよね。急いでいて時間がなかったら、たぶん違和感を抱かなかったと思います。しかし、気づきましたか？ 「あっ！」と気づいたときから、そこで、しばらく立ち尽くしてしまいました。
視覚障がい者の方々との交流から生まれた首かけ点字。“自分で選べる楽しみ”
お酒やソフトドリンク、オリーブオイルなどで、首掛けPOPを時々見かけることもありますよね。しかし、この日の調味料棚では、九重雜賀だけだった気がします。最初はさらっと見過ごしたんですが、「おや、おやおやおや」と手にとってまじまじと見たら、点字がついているんです。他の会社の製品にもあるのかもしれませんが、食品売場のPOPで点字つきのものを初めて見たので、感動とともに、しばし製品まわりの情報を集めるように表裏、読みました。
そして次に、「どんな会社なんだろう？」と気になり、公式サイトチェックです。するとサイト内に「点字印刷首掛けについて」という案内がありました。そこには、視覚障がい者の方々が見学に訪れることから、同じ瓶でも種類がわかるようにと点字印刷首かけを始めたそうです。そして教えてもらったのが「自分で品物を選べる楽しみ」の大切さ、と書かれています。
サイトをチェックした後は、いろんなことが脳内をぐるぐるめぐり、その場で考え始めました。ガラス瓶に点字をつけるには相当コストが上がりそうですし、かなりのロットも必要そう。家族や同伴者が（ボトルの首下あたりや横などで）気づかない可能性もあります。点字首かけはベスト解！ そんなふうにも思えます。しかし、このPOPをつける手間がショップ側にはあり負担にも。されど、売り場は「自分で選べる楽しみ」を尊重しているんですよね、そこには愛があります。小さな幸せです。自分も、何かできることがあるかもしれない……など、売り場でぶつぶつと問答タイム。
後日、気になって、九重雜賀に点字ではどういう内容が書かれているのかを問い合わせました。雜賀 吟醸赤酢 は「米酢雜賀 吟醸赤酢 30穀木桶仕込み」で、雜賀 万能調味酢 お手間とらせ酢は「万能出汁酢 雜賀 お手間とらせ酢 かけるだけ」だそう。この九重雜賀のイケてる取り組みを多くの方が知り、そして多くの会社が同じようにしてくれたら。POP点字でなくてもいいので、何か“自分で選べる楽しみ”が増える工夫が広がると嬉しいです。今回は味については触れませんが、推して知るべし。もちろん、期待超えです。
気づいたらメガネやサングラスを集めてました。しかし、何年か寝かせてからかけるという癖あり。ひとりっぷ®修行中。セレブやK-POPを語りがち。
