職業柄、取材ノートをつねに持ち歩いています。「取材」というときこえがいいですが、実際のところは「なんでもノート」といったところでしょうか。取材や打合せのメモだけでなく、本や映画の印象に残った言葉や子どものおもしろ発言、思いついたこと、ToDoリストなどなど、とにかく雑多に書き留めています。スマホのメモ機能を使うこともありますが、基本的には手書き派。古い人間といわれそうですが、本とメモはやっぱり紙が好きです。
現在愛用しているノートがそろそろ役目を終えそうなので、新しい相棒を探しに先日、伊東屋へ行ってきました。出合ったのは、100年以上の歴史をもつ紙の専門商社・竹尾のオリジナルブランド、「ドレスコ(Dressco)」のペーパーノートブックです。
コンパクトなA6サイズが使いやすい
「ドレスコ(Dressco)」のペーパーノートブックS ¥1,540
ノートを選ぶうえで、はずせない条件がふたつあります。ひとつは小さめのバッグにも収まるコンパクトさであること。そしてもうひとつは、雑に書き込みたいので無地であること。ドレスコのSサイズは、そのどちらもかなえる理想的な一冊でした。
サイズは縦15.2、横10.7、厚さ0.9cm。
iPhone14と並べてみると、ほぼ同じくらいの“スマート”なサイズ感。「なすこん」という表紙の色も上品で気に入っています。
選び抜かれた紙の質感が心地よい
ハードカバーのしっかりとした作りで、なおかつ和紙というのがいいんですよね。和紙は風合いこそ繊細ですが、優れた耐久性があるといわれています。簀の目(すのめ)模様の入ったマットでざらつきのある質感は、触れるたびにやさしさが伝わってくるようで心がなごみます。
こだわりの上製本は糸かがり綴じ。高級感があるだけでなく、フラットに開きます。そして本文紙には、三菱製紙が銀行の帳簿向けに開発した「バンクペーパー」を採用。緻密で程よく厚みがあるので裏抜けに強く、なめらかな書き味です。
紙好きの心をくすぐる「THREE DIAMONDS」の透かしマークにも刮目を。製紙メーカーが品質保証のために、紙の銘柄名や原料名を印したもの。伝統的な製法で、丁寧につくられた証です。
「メモは未来の自分への手紙」
京都市京セラ美術館で売られていた、横尾忠則さんのイラストのステッカーを貼ってみました。
その美しい佇まいは、雑多に書くのはもったいないと感じるほど。紙の上質さを堪能すべく、シンプルにそのまま使おうと思っていたのですが、先日立ち寄った京セラ美術館のグッズ売り場で目が合ってしまった、横尾忠則さんのイラストのステッカーを貼ってみました。端正なノートに、横尾さんのシュールな世界観。マットな和紙に、キラキラのレンズフィルムシール。このミスマッチがなんともいえず、愛着もひとしおです。
「メモは未来の自分への手紙である」脚本家の桑原亮子さんが、ある新聞のコラムでこのように綴られていて、深く感じ入りました。私も桑原さんと同じく書き終えたノートを保管しているのですが、読み返してみると恥ずかしく思うことの方が多いですね。「大丈夫か、自分!?」なんて心配になることもしばしば。それでもごくたまに、「本当に自分が書いたんだっけ?」と疑ってしまうくらい素敵な言葉が記されていて、過去の自分に嫉妬したり、救われたりすることもあります。
今はまだまっさらなドレスコのノートですが、いつかここに書き留められたメモに赤面したり、あるいは思いがけず感動したりすることがあるのかもしれません。そう思うと、ぜんぜん余裕のない毎日も、ほんの少しですが豊かになりそうな気がします。「いい紙は、いい言葉を引き出してくれる」と信じたいものです。