出会いは、いつだって突然に。
その日、気温が40度に迫ろうかという酷暑の中、私はひとり、京都駅におりました。あまりの暑さに、たまらず逃げ込んだJR京都伊勢丹で、真っ先に視界に飛び込んできたのがジル サンダーのショップでした。しかも店内から、「リーン、リーン」という涼やかな音色が聞こえてきたんです。なんだろう、この体感温度を一瞬で10度くらい下げてくれる伸びやかな音は――。
音の鳴るショーケースへ近づいてゆくと、正体はまさかの「おりん」でした。「ん? ジル サンダーに、おりん?」軽く混乱する私。ただし、おりんといっても仏壇にあるお椀のような形をした棒で叩くものではなく、どちらかというと小学校の理科の実験で使った分銅に似た形状で、かなり小ぶりに作られています。しかも、そのコンパクトなおりんには色とりどりの組紐が付いていて、アクセサリー感覚で身につけたり、バッグに付けて持ち歩いたりできるようになっている。何これ斬新! おりん、かわいい!
初めてのモバイルおりん(正式名称は「おりんチャーム」といいます)と対峙する私に、「こちら京都の工房で作られた限定コレクションなんです。おりんのほかに、3枚セットの手ぬぐいもあるんです。どちらも今はこの店でしか買えないんです」と、たたみかけるようにパワーワードを連発する店員さん。
「限定」「3枚セット」「この店でしか」――言葉の魔力に思わずひれ伏し、京都の工房で作られた魅惑の手ぬぐい3枚セットを懐に収めて帰ってきたのでした(冒頭で熱く語っておきながら、おりんは諦めました)。
ここからは手ぬぐいについてご紹介しますが、もったいぶって箱を開けるところから、カット数多めにお届けします。
京都の印染工房スギシタとのコラボレーション
まずはパッケージ。ここですでに醸し出される特別感。シンプルな飾り紐の結び目に、微かなジャポニズムを感じます。これを「京都土産だよ!」と言って手渡されたら、誰だって昂揚するに違いない。
飾り紐を取り外し、箱を開け、和紙の包みをそっと開くと、3種そろって、おこしやす。JIL SANDERのロゴをあしらった手ぬぐいが、お行儀よく並びます。
染めを手がけたのは、京都の印染(しるしぞめ)工房スギシタ。神社の幕やのぼり、祭りの半纏(はんてん)など、ハレの日にかかわる染め物を得意とする、創業100年以上の老舗です。明治皇后のドレスの修復や、国の重要文化財である尾形光琳の小袖のレプリカ製作などの偉業でも知られる、染めの魔術師。スギシタに、染められないものはなし。
色の再現性を追求した、美しい発色
広げてみると、個性豊かな絵柄が出現。緑の濃淡のグラデーションに白抜きのパームツリーがくっきりと映える「カリフォルニアのサンセット」と、ルームキーやジッポなどのモチーフをプレイフルに描いた「アメリカンヴィンテージ」は、ジル サンダーのアーカイブスのプリント。ノスタルジックな花柄が躍動する「ワイルドフラワー」は、今回のコレクションのために特別にデザインされた柄です。どれも鮮やかなのに落ち着きがあって、どこか優しげ。
刮目すべきは、なんといっても色の再現性です。綿布を染める工程でもっとも難しいとされているのが「色出し」ですが、デジタルデータをインクジェットプリントで精密に染色した後、蒸気で加熱し、染料を繊維に定着させることで、ムラのない原画通りの発色に仕上がります。この最新テクノロジーと伝統技法の融合こそが、匠の真骨頂。見れば見るほど、美しい色彩に惚れ惚れします。
ファッションにも暮らしにも、使い方は無限大
3枚すべてに、手ぬぐいでは最上級とされる「特岡」という生地が使われています。細番手の糸で高密度に織られているので、適度にハリがあり、肌触りはなめらか。生地がしっかりしているので、アレンジの幅も広がります。
例えば、スカーフ感覚で首に巻いてみたり、
頭からかぶって、ほっかむりにしてみたり、
こんな感じでバッグのハンドルにラフに結んでおくだけでも装いが新鮮に見えるし、ハンカチがわりにもなって便利。
もちろん、ファッションとして取り入れる以外にも、拭いたり、敷いたり、包んだり、覆ったりと、使い方は無限大。吸水性にも速乾性にも優れているし、手ぬぐいの実用性に改めて感動しています。
価格は、3枚組で税込19,800円。「手ぬぐい3枚にこの値段!」と思うか、「世界トップレベルの伝統技法によってこそ成し得た逸品にこの値段!」と思うかは、ここまで読んでくださったあなた次第。
8月中は、ジル サンダー JR京都伊勢丹のみでの販売です。京都旅行の思い出に、あるいは大切なあの人への粋な京都土産に、いかがでしょうか。9月上旬からは、ジル サンダー 銀座でも展開予定です。
今回紹介した商品はこちら!
商品名
:
印染工房スギシタ×ジル サンダー 手ぬぐい3枚組
8月中は、ジル サンダー JR京都伊勢丹のみで販売中。9月上旬から、ジル サンダー 銀座でも展開予定