もう20年くらい前でしょうか。当時、国内のネット通販すら不安でほとんど使っていなかった私(今や何かあったらアマプラ頼み)が、少しでも早く手元に置きたく海外の書店サイトで注文したのが、デイヴィッド・ホックニーの『Cameraworks』という作品集。1960年代から画家として活動するホックニーが1982-83年に発表した写真作品を集めたものなのですが、尊敬するアートディレクターの方が彼の作品の面白さを力説していて、いてもたってもいられなくなったのです。
ホックニーの特徴とも言える明るい色彩、ユニークなタッチで光や水を描いた絵画作品についてさえよく知らなかったのに、写真作品に触れてみたい気持ちを掻き立てられたのは、きっと彼の作品が凝り固まった視点や考え方を変えてくれそうだと思ったから(そして私は絶望的に絵心がなく、写真のほうが反応、吸収できるのでは、と思ったのもあります……)。
たとえば表紙のポラコラージュ作品にしても、プールで気持ちよさそうに泳ぐ男性の姿が何カットも収められていて、距離や角度もさまざま。アーティストが対象を「見ている」ことを意識させ、「写真は撮影者が捉えた瞬間を焼き付けるもの」という思い込みを見事に吹き飛ばしてくれました。加工やCG技術を駆使すればどんな視覚表現もできそうに思われる現代にも、色褪せない気がします。
というわけで長くなりましたが、東京都現代美術館で開催中の「デイヴィッド・ホックニー展」 は去年から楽しみにしていた展覧会!! 日本では27年ぶりの大規模な個展だそうで、とはいえ27年前は知らなかったし、はやる気持ちを抑えて向かいました。
ご本人からのメッセージによれば、今回の出展作はこれまでの創作を網羅したもので、彼の人生の大半を辿ることができるのだとか。 御年86歳ですが、iPadで描いた作品も! ちなみに、iPadは2010年4月の初代発売のタイミングで手に入れたらしく、私よりずっと早い!!
『Cameraworks』で目にしていた作品とも、対面できて感動。《龍安寺の石庭を歩く 1983年2月、京都》は、「長方形の石庭を長方形として表現する」ため(スナップ写真ではそのように写りませんよね)、砂利の数を数えながら撮影・構成したとのこと。そんな苦労とは裏腹に、手前に配置された色違いのソックスの足跡(?)がなんともかわいいのです。というか、ホックニー氏のポートレートや自画像などでのカラーコーディネートってどれもおしゃれ!
絵画の他、ドローイング、写真、版画、映像など127作品が全8章で構成されており、見どころがたくさんなのと、それぞれにお気に入りを見つけられると思うので一つだけ、絶対に見逃せない作品について。ぜひ近くでじっくり観賞するのをおすすめしたいのが、11世紀のタペストリーにインスパイアされ、iPadで描いた220点ものノルマンディーの風景画を90mの絵巻として仕上げた新作《ノルマンディーの12か月》。なんせ220枚分なので風景は次々と移り変わっていき、90mってけっこう長いし、没入感が凄まじい! ところどころ歩くスピードを変えたりしながら、何周もしてしまいました。
そしてそして。エディターHAと同様、ミュージアムショップに目がない私は、展示が終わりに差し掛かるにつれ、ソワソワ。出口付近のグッズ売り場では、この展覧会のために企画・製作されたオリジナルグッズがたくさん陳列されていたのですが、厳選して購入したのがこちら!
まずは、2024年カレンダーと一筆箋。ともに上記で紹介した《ノルマンディーの12か月》より。また見に行きたい!
ポストカードのラインナップに、《龍安寺の石庭を歩く 1983年2月、京都》(左下)もあってうれしいー! そしてホックニーといえば、のプール関連のデザイン(右下)も欲しかったのです。
上のポストカードと同じ作品をモチーフにしたうすはりグラス。お茶を入れるのは色的になんか違う気がして、水専用のグラスにしようかな……。スプリンクラーが描かれた絵画モチーフのマグネットもゲット! ちなみに左は、私のホックニー好きを知る友人が以前プレゼントしてくれたお気に入りで、“ホックニー×水”つながりで一緒に撮ってしまいました。紛らわしくてすみません。
『はじめての絵画の歴史』は、ホックニーと美術評論家のマーティン・ゲイフォードが対談形式で、楽しくやさしく古今東西の絵画の歴史を案内してくれる本。同じ2人によるもう少し読み応えのある絵画論もありましたが、絵に対する自分のレベルを考慮して、まずは子供から大人まで楽しめそうなこちらにしました。『Hockney's Pictures』は、325点もの作品が掲載された画集。展覧会のカタログとも迷ったのですが、つい作品の点数に負けてしまい(笑)。
けっこう買っちゃったな、と思いましたが、私以上に爆買いしている方もいて、ホックニーの人気の高さを実感(商品によっては品切れの場合があるそうなので、悪しからず)! 展覧会は、2023年11月5日(日)まで開催中なので、夏に行けない方は芸術の秋にぜひ。表現方法やタッチはさまざまながら、変わらずに「見ること」や「絵画」について探求を続けるアーティストの姿に、きっと刺激をもらえるはずです!