2021.09.11

快眠のための10アイデア「ねむテック」を毎日に取り入れる

コロナ禍をきっかけに睡眠の重要性が改めて注目を集めている。その一方で、理想の眠りを手に入れられず、悩みを抱えたまま過ごしている人も多いのが現実だ。これまで経験したことのないストレスにさらされるようになった私たちが、今取り入れるべき安眠のルールを探る。

なぜ今、睡眠が大切なのか?

教えてくれたのは

西野精治さん
スタンフォード大学医学部精神科教授、同大学睡眠生体リズム研究所所長。「最高の睡眠」を実現するために「ブレインスリープ」を設立。YouTubeチャンネルでも睡眠の啓蒙活動を行う。

円山カヲリさん
ヘッドマッサージ専門店「一休のひらめき」主宰。睡眠改善インストラクター。脳リラクセーションに特化した「ブレインタッチ®」を開発。サロンワークのほか、企業等で快眠講座を実施。


さまざまな不調の原因は、正しく眠れていないから

何かと我慢を強いられる現代、普通に生活しているつもりでも、実は目に見えないところにさまざまなゆがみが出てきている。特に睡眠に関する悩みは深刻だ。事実、西野精治さんが主宰するブレインスリープが、昨春に緊急事態宣言が出された7都府県の有職者1000人を対象に調査を実施したところ「睡眠の質は下がり、後ろ倒しの夜型になっている」傾向があることがわかった。またこれは、テレワークなど働き方に変化があった人のほうが顕著に見受けられた傾向だという。

「正常な睡眠の場合、眠りにつくとまずノンレム睡眠(脳も体も休息)に入り、その後レム睡眠(脳波活動、体は休息)に移行します。睡眠中はこの周期が4、5回繰り返されますが、いろいろな要因でこのリズムは簡単に崩れます」

円山カヲリさんもコロナ禍以降の変化を施術を通じて実感している。
「通勤や外出時間が減り、おうち時間が増えているはずなのに、それを際限なく仕事に当ててしまうため、全体的に睡眠の質が低下している人が増えた印象です」(円山さん)

そもそも眠りの質が悪くなると、どのようなことが起きるのか?
「睡眠とは、すべての生命現象の基盤です。ただ休息するだけでなく、記憶を定着したり、さまざまな病気のリスクを下げたり。睡眠によって日中のパフォーマンスは大きく変わるほど。だからこそ疎かにはせず、きちんと取る習慣をつける必要があります」(西野さん)

私たちは睡眠を何かと犠牲にしがちだけれど、そろそろこの習慣を改める時期に来ているようだ。
「眠りは蘇生であり、再起動するためのもの。私たちは眠るためではなく、生き生きと活動するために眠るのです」(円山さん)
「眠らなければならない」ではなく、「眠るのが楽しみ」になれたら、人生が大きく変わりそうだ。 



マットレスでよい眠りを育む

睡眠に重要な役割を果たすマットレス。ちまたにはさまざまなタイプがあるけれど、何を基準に選んだらいいのか正直迷う。
「"眠りに入るときの体温変化"という見地から考えるのがベター。深部体温の低下をうまく促進できれば寝つきがよくなり、睡眠の質も高めやすくなります。そう考えると、寝具は熱放散しやすい状態=通気性のよさが大事なポイントです。同様に、脳の温度は体の深部体温と同じだから、枕も熱がこもらない、通気性のいいものを選んで」(西野さん)。
「寝心地は7割が敷布団で決まると言われていますから、とにかく自分に合うものを見つけることが大切です。意外な盲点となるのが、シーツの素材。全身で触れるものですからとても重要です。夏なら肌にまとわりつかない素材のもの、冬なら包み込むような温かさを感じるものなど、季節に合わせて替えましょう。また、寝室はベージュ系などの落ち着いた色調の空間を心がけるといいですよ」(円山さん)

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上 ブレインスリープマットレス(オーバーレイ)
宇宙飛行士の宇宙空間における姿勢から着想を得て生み出された、フロートテクノロジーを採用。究極のリラクゼーション姿勢と、深部体温をコントロールするマットレス。
¥79,200/ブレインスリープ

下 New コアラマットレス BREEZE
振動を吸収する独自技術、抗菌性、通気性に優れたフォームでコアラのような安眠をもたらすマットレスが進化。新たに自分好みの寝心地が選べる設計に。通気性も一段と高く、肌ざわりも抜群だ。
¥132,000~/コアラスリープジャパン

 

入浴で眠りの準備をする

入浴も熟睡しやすい環境づくりの大きなファクター。
「体が温まることで、収縮していた血管が開いて血行がよくなり、熱放散も促進されて寝つきはよくなります。しかし、入浴でいったん上がった深部体温が元の深部体温以下にならないと、快眠につながりません。一度上昇した深部体温の低下には時間を要し、元の体温以下になるには、入浴後90分程度かかります。つまりお風呂は、寝たい時間から逆算して入るのが理想です」(西野さん)。
「入浴は、副交感神経を優位にして心身をリラックスさせるのに効果的。ミネラルが豊富なエプソムソルトなどの入浴剤を入れ、38℃くらいのぬるま湯に10分ほど浸かるのがおすすめです。しかし、瞬時にスイッチオンできる交感神経とは違い、副交感神経はゆっくりとしか優位になりません。入浴は睡眠の2時間ほど前に済ませるのが理想です。もし、すぐに寝なければいけないときは、シャワーだけで済ませる選択肢も考えてください」(円山さん)

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左 ARTQ ORGANICSCOMFORT BATH/心安入浴セット
3種類のソルトが配合されたバスソルトと、心地よい眠りへと誘うブレンド精油のセット。呼吸を深くする香り。
オリジナルソルトブレンド(150g)・「心安」ブレンドオイル(5㎖)¥3,850/Blue ink

右 ソークソサエティ バスソーク スリープ
心身のバランスを整えるエプソムソルトにベントナイトクレイ配合。ラベンダーとカモミールが心身を落ち着かせ、オートミールが肌を保湿する。
(100g) ¥1,430/リグルジャパン

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誘眠グッズの最新を知る

眠ろうと意識すればするほど、眠れなくなる……というのは、不眠に悩む人からよく聞く話だ。
「眠れないことへの不安が不眠を増幅してしまうケースはよくあります。もっとおおらかに構え、軽い運動をしたり、ヨガや呼吸法、アロマを取り入れてみるなどいろいろと試してみて。自分にとってよかったものを続けてみるといいですよ。ただし、パソコンやスマホなどのディスプレイを夜遅くまで見つめていると、情報と光で脳が活動し続け、脳の過緊張状態がほぐれないため、眠りにくい状態に。また、強い光を浴びるはずのない夜間に光を浴びる生活は、メラトニンの合成阻害を起こし、生体リズムを大きく乱すことになります」(西野さん)

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上 NEWPEACEモーションヘッド
頭部に巻きつけると、上下に独立して設置されたエアセルが、頭をグッと持ち上げたり、プレスしたり。じんわりとした温かさとともに、緊張をほぐし、眠りやすい状態へと導いてくれる。
¥18,000/MTG

下 ルルドおやすみグースピー
まるで息をするかのように膨らむ&しぼむを繰り返すグースピー。抱きかかえ、この動きに合わせて呼吸をするだけで、いつの間にか入眠モードに。リラックスリズムもあり。
AX-BNL800 ¥11,000/アテックス

 

アプリで自分の睡眠を知る

自分の睡眠状態を知るために、まずは睡眠時間を記録してみよう。
「これにはアクティグラフやスマホアプリが有効です。自分で記録を書き記すと、どうしても主観的になりがちです。ついメモを取り忘れて、後からおぼろげな記憶で書くということも正確さを欠く原因に。スマホアプリのほうがより正確です。ベッドの上に置いて寝ると、就寝中の動きを感知して睡眠状態を計測できるといったものなど、いろいろな種類があります。とはいえ現時点では、これらのツールで睡眠障害を診断できるわけではありません。もし日常生活に支障をきたすような睡眠障害の自覚がある人、睡眠動向を真剣に調べる必要性を感じる症状のある人は、日本睡眠学会の睡眠専門医に診てもらい、きちんと睡眠ポリグラフ検査を受けてください」(西野さん)

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左 熟睡アラーム
豊富な計測データをもとに、入眠と起床をサポート。睡眠状態といびきの両方をデータ化できる。PCで閲覧可能なクラウドサービスも展開中。
無料(アプリ内課金あり)/C2

右 SleepMapper
ヘッドバンドを頭に装着し、専用アプリと連動し睡眠状態を可視化。
SmartSleep ディープスリープ ヘッドバンド2¥51,700(編集部調べ)/フィリップス・ジャパン

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睡眠にきくアロマを探す

リラックスするのに効果的なのがアロマ。穏やかな入眠へと誘う香りというのはあるのだろうか。
「一般的には、ラベンダーの香りには鎮静作用があり、入眠しやすい香りだと言われています。また、オレンジやマンダリン、ベルガモットなど柑橘系は、心身ともに休養させるのにぴったりな香り。また、最近はマスク着用で呼吸が浅くなっているので、呼吸を深くするフランキンセンスや、ローズウッドの香りに似たクロモジといった和の香りなどもいいかと思います。これらアロマは、ティッシュに1滴取り、枕元に置いて香らせると穏やかな入眠効果が期待できます。また、朝はローズマリーやレモン、グレープフルーツなど、すっきりとした香りを使うと、一日中活動的に過ごすことができ、夜の自然な眠りへとつながります。とはいえ、あくまでも自分が心地よく感じる香りでOK。あまり難しく考えず、アロマショップへ足を運んで、そのときの感覚や体が求めるアロマを選んで。睡眠用にブレンドされたコスメティックスを使うのも手です」(円山さん)

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左 マインドフル フレグランス ノンアルコール ピュリフィケーション・オブ・マインド(オーデコロン)
脳解析の第一人者である大学教授とともに開発。その日を振り返り、感情や思考、潜在意識に語りかけながら、頭や心をリセット。大自然の中にいるような非日常体験を。
(100㎖) ¥3,905/シン ピュルテ

中 アユーラ メディテーション ナイトトワレ
大人気の入浴剤「メディテーションバス」の香りを基調に、穏やかな気分へと誘うビターオレンジやサンダルウッドをブレンド。香りは3~4時間持続する。
(20㎖) ¥4,400〈11月1日発売〉/アユーラ

右 デ・マミエール アンカーバーム S
ラベンダー、サンダルウッド、ベチバーの香りで深い休息へ誘うバーム。寝る前に香りを深く吸引した後、手首や胸元をマッサージ。ゆったりとした眠りへ。
(10g)¥9,350/デ・マミエール(キャンドルウィック)

 

食事とアルコールで睡眠を制する

一見結びつかないように思える、快眠と食事にはどのような関わりがあるのだろうか。
「体内リズムの調整をするには、食事は大切な要素。特に朝食は、体内時計を整えるのに必須条件。口から食べ、噛み、咀嚼するという運動そのものが体を目覚めさせ、活動モードへのシグナルとなります。栄養補給することで体温も上がり始め、活動を開始する準備が整うのです。朝食を摂らないと、体が目覚めません。朝食には、体内リズムをリセットする効果もあるので、必ず摂るように」(西野さん)。
では、夕食はどうだろうか? 特に寝る前のカフェインは避けたほうがいい、というのは常識となっているけれど……。
「消化吸収を考えれば、寝る3時間前までに夕食を終えるのが理想。眠るために寝酒を習慣にしている人もいますが、アルコールは分解するのに3時間ほどかかるうえ、アセトアルデヒドという毒素を出すため、途中で目が覚めてしまいます。飲酒も、就寝の3~4時間前までに終わらせたほうが快眠できます。同様に、コーヒーや緑茶のカフェインも覚醒させてしまうので、18時以降は避けたほうがベター」(円山さん)

 

睡眠サロンで良質な眠りを知る

脳を酷使している現代人に、頭部のケアの必要性を感じ、さまざまなメソッドから独自の「ブレインタッチ®」を確立。ヘッドマッサージ専門店をオープンさせた円山さん。髪を濡らすことなく、手の圧や形、速度、呼吸などに配慮しながら、やさしいタッチで頭皮をほぐし、頭の中の焦りや不安、緊張をやわらげ安らぎを与える施術だ。1時間ほどかけてゆっくりとカウンセリングをし、脳にたまった不安や焦りを軽減してから施術に入るので、今までにないすっきり感を味わえる。

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一休のひらめき
1歩足を踏み入れると、ショートトリップをしたかのような感覚をもたらす静謐な空間。1日3組限定。●東京都新宿区矢来町50の2 神楽坂玄302  営業時間:9時30分~22時30分(最終受付21 時) 休業日:年末年始 ※ブレインタッチ®ヘッドマッサージ ¥15,800(円山さん指名料別途¥10,000・105分)、完全予約制 http://www.ikyu-no-hirameki.com/

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パジャマは素材や色で選ぶ

「夜になると睡眠欲求が高まって自然と眠くなる――、そんな理想的なリズムを促すには、決まったスケジュールで過ごすこと。〇時に夕食を摂り、〇時に入浴するなど、いつものパターンで夜の時間をリラックスして過ごし、床につく時間も一定にすることが大事」(西野さん)。
そんなルーティンのひとつとしてパジャマにこだわってみるのはどうだろう?
「肌ざわりが心地よい寝具や衣類、抱き枕など、"自分が眠りに入るためのいい条件づけ"をいろいろと持っておくといいですよ。眠りに至るまでをスムースに心地よくしてくれる"入眠装置が"あると、寝つきが早く、入眠後に深いノンレム睡眠が出現しやすくなります」(西野さん)。
「派手な色みは覚醒を促してしまうので、パジャマには、ベージュ系やブラウン系、生成りやブルーなど、穏やかな色合いのものをセレクトして。また、肌ざわりにもこだわってください」(円山さん)

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左 リフランス しなやか3重ガーゼパジャマ(3009)
体温の輻射により鉱石が発する遠赤外線が、副交感神経に作用し、筋肉の緊張をほぐして、安眠へ誘う特殊な生地を採用。一般医療機器として認められている。
¥24,200〈9月1日発売〉/HLコーポレーション

右 watanomama パジャマ
綿を糸にせず、綿のまま編んで生地にすることで、これまで見たことも、さわったこともない生地に。着ていることを忘れるほどの軽さと柔らかさ。
トップス¥19,000・パンツ¥13,000/watanomama

 

パドルブラシを朝晩の習慣にする

「脳は活発に使うほど、脳内で老廃物が蓄積されます。睡眠中はこの老廃物の除去が行われています」(西野さん)。
近年は、この老廃物が蓄積すると認知症などのリスクが高まるという研究結果も。そこで血流をよくするヘッドマッサージを。
「ブラシを縦に持ち、頭の正中線を生え際から頭頂部へ。両側頭部も同様に。3回繰り返したら、ブラシを横に持ち、後頭部に当て、サイドから中央、逆サイドへ小刻みに動かして。夜はゆっくり、朝はやや強めに行います」(円山さん)

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左 ルーヴルドー レヴィ パドルブラシ
円山さん愛用のパドルブラシ。マッサージ効果を高めると同時に、使ったときに気持ちいいと感じるやさしく柔らかな使い心地。ピンには「育成光線」、クッション部には「マイナス電子」を採用し、美髪にも効果的。
¥7,370/ルーヴルドー

右 ダイソン パドルブラシ(ニッケル/ブラック)
クッション性のある幅広のブラシ面が頭皮にやさしくフィットしてマッサージ。安定感のある持ち手だからブロー時には髪をしっかりと捉えることができる。
¥3,300(編集部調べ)/ダイソン

 

眠りのために光を活用する

不眠の原因は生体リズムの乱れにある。これを整えるのに重要なのが光。
「快眠は朝から始まります。目覚めたら朝日を浴びることで体も目覚めさせて。また、16時以降から徐々に照度を下げ、間接照明を利用して光が直接目に入らないようにするのが理想。現代は、スマホやPCを見ないわけにはいきませんが、夜はナイトモードに設定し、できれば寝るときはスマホは別の部屋に」(円山さん)。
「夜遅くまで寝つけなかったり、起床時間が遅くなってしまう人は、朝に強い光を浴びると体内時計が早まります。逆に、夕方から眠気を感じ、深夜や早朝に目が覚めてしまう人は、夕方以降に強い光を浴びると、リズムを遅らせることができます。どちらのタイプにしても夜は強い光をできるだけ浴びないことが大切。寝るときは、照明をつけたままにせず、暗くしてください。実験的には一般的な常夜灯(10ルクス程度)でも睡眠やリズムに悪影響がみられます」(西野さん)

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SOURCE:SPUR 2021年10月号「『ねむテック』を毎日に取り入れる」
photography: Keisuke Hashiguchi illustration: Sara Kakizaki text: Yuumi Fujii 〈dis-moi〉

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