パリと東京、2拠点をベースに活躍するメイクアップアーティスト。シャネルを手がけたルチア・ピカのアシスタントとしても活動。現在は、パリを拠点に国内外のショーやエディトリアル、コスメティックスブランドのカラーディレクションなど幅広く活動を行なっている。2023年春夏コレクションでは全6つのブランドのショーに参加した。
パンデミックから解放され、ギャルマインドで"個"を表現!
全体的なムードとして気になるのは、"メイクアップ感をちゃんと出す"潮流。ノームコアの流れやパンデミックによる内向的な気分が続き、ここ数年はファッションもメイクアップも"気取らないこと"がトレンドだったと思うんです。この春はそこから一気に解放されて、「私たちは誰のために、なんのためにメイクアップをするんだ?」ってことが改めて問われているような気がします。
それに対して、「やっぱり個を表現するためでしょ!」とパワフルにこたえる、そんな力強さを感じるシーズンでした。どこか"ギャル魂"があるというか(笑)。セレブリティのスタイルや、YouTubeのチュートリアル動画も"ギャルメイク"の流れを汲んでいると思います。
私個人としてもギャルマインドのあるメイクアップは好きなムードのひとつです。そのトレンドを象徴しているのが偏光アイテム! 特に海外ではグリッターやホログラムを用いたプロダクトが豊富。
ショーの際も、口もとや目もとに使ってインパクトを出すルックを提案しました。春新色のアイテムの中でおすすめなのは、マルチカラースティック。マットな質感を重ねて、偏光感に奥行きを与えるのがポイントです。
また、淡い発色のペールトーンのチークでつくる"オフカラーフェイス"も素敵ですよね。日常で考えると、チークってなかなか主役になりにくいじゃないですか。でもオフカラーの製品を、ハイライト的に入れると、ちょうどよいニュアンスが出て透明感がUP。気になる色は微細なパールを含んだライラック色やベビーピンクですね。
1 マットな質感に重ねる。イリディセントな偏光カラー
「いつものメイクアップに偏光カラーをポイントで重ねるだけで、今年っぽさがアップ。マットな質感にレイヤードすると、"いい意味の違和感"を楽しめます」。
"肌なじみ"より"色なじみ"。いい意味の違和感で色を楽しむ
ぜひ挑戦してほしいのが"派手色ピンクシャドウ"! インパクトがある色って確かに取り入れるのが難しい。でも、目のキワにピンク、その上のまぶたに薄い中間色のブラウンをのせると、ほどよく主張が消えて、よいあんばいに。ポップな色も悪目立ちせず、瞬きのたびにほんのりピンクの気配も感じられて、モダンに仕上がります。そんな"大人ピンク"な目もとに合わせたいのは、90年代を彷彿とさせるバサバサ黒まつ毛。ほんのりドーリーで、ノスタルジック。そんなまつ毛が旬だと思います。
これまでは"どうやって肌に、ナチュラルになじませるか"を重視して色や質感を選んできた人も、この春は"色同士がどう溶け合うか"を考えながら組み立てるべき! 肌にはちょっとした違和感を残しつつ、楽しみながらしっかりメイクアップ感を出して、自分を表現する。やっぱりこれって"ギャルマインド"に通ずると思うんですよね。
2 圧倒的な存在感。ドーリー黒まつ毛が気分
「個人的にマスカラは黒がブーム。繊細な仕上がりよりも濃密なまつ毛を演出するタイプがモダン」。
3 ペールに儚く色づく。オフカラーフェイス
「発色よりもニュアンスが出るチークを目の下のゾーンにハイライト的に。透明感オーラが出せます」。
4 薄ブラウンで克服! 派手色ピンクアイ
「イチ押しのYSLの10色入りパレット(9)なら、ラメ入りの濃いピンクシャドウ(下段右端)を二重幅に入れて、薄めのブラウン(上段中央)をその上に。ブラウンは濃いシェードを締め色として使う場合が多くて、薄ブラウンの出番が少ないと思います。でも、この2色のコンビネーションは使えますよ」。