さまざまなブランドの代表的な名香を数多く手がけてきた天才調香師、ミシェル・アルメラック氏。その家族が、ミシェル氏の自由な創造の場となり、フレグランスの真実を伝えられるブランドを――と立ち上げたのが“パルル モア ドゥ パルファム”だ。その新作を携え、来日したアルメラック氏の息子たちに、「香水について語り合おう」というブランド名のとおり、香りとの向き合い方について話を聞いた。
さまざまなブランドの代表的な名香を数多く手がけてきた天才調香師、ミシェル・アルメラック氏。その家族が、ミシェル氏の自由な創造の場となり、フレグランスの真実を伝えられるブランドを――と立ち上げたのが“パルル モア ドゥ パルファム”だ。その新作を携え、来日したアルメラック氏の息子たちに、「香水について語り合おう」というブランド名のとおり、香りとの向き合い方について話を聞いた。

〈左〉ロマン・アルメラック(Romain Almairac)
調香師。ミシェル氏の長男。世界的な香料メーカー、ロベルテ社で経験を積んだ後に調香師に。“クロエ オードパルファム インテンス”をはじめ、父との共作も多い。
〈右〉ベンジャミン・アルメラック(Benjamin Almairac)
ミシェル氏の次男。ロベルテ社で香料について学ぶ。父のフレグランスに誰もがアクセスできる場を、と“パルル モア ドゥ パルファム”を創設。ブランドの経営に携わり、父の良きアドバイザーでもある。
ふたつの新作の魅力と、初夏に向けておすすめの香りをご紹介します
――ロマンさんが調香された新フレグランス“ブロッサムズ スモーク”は、どんなアイデアから生まれた、どんな香り?
ベンジャミン ダークさと明るさ、黒と白のコントラストを描きたかったんです。キーとなるベチバーで暗いイメージを表現し、白い花の香りが光となってコントラストを強調する、というアイデアが出発点としてありました。
ロマン 今回、主役となるベチバーはインドネシア産を使っています。とてもスモーキーでアーシー、そして揮発性が高いので、思いがけず最初からけぶるように香り立って、その奥からジャスミンなどホワイトフローラルのアコードが出てくるような印象になりました。そしてそのコントラストを和らげるのが、最後に香る甘く官能的で心地よいバニラアコードです。
――そしてミシェルさんが手がけた、光に満ちたもうひとつの新作、“オレンジ ハイパーエッセンス”については?
ベンジャミン 父によれば、春にその年初めて庭で朝食をとった日の喜び、太陽の光が肌に当たる感覚を香りにしたのだそうです。名前のとおりオレンジの香りですが、オレンジの香料だけではその酸味による刺激は感じにくいので、ジンジャーを加えています。カリフォルニアオレンジと、ミルキーなニュアンスのあるバレンシアオレンジの2種を使い、さらにビターオレンジで果皮の苦みを表現しました。さらにラストでは、プロセッコアコードが発泡感をもたらし、スパイシーなカルダモンが温もりをプラス。オレンジをとことん突き詰めた、まさにハイパーなオレンジの香りです。
――春から夏に向けての季節、SPUR読者におすすめの“パルル モア ドゥ パルファム”の香りは?
ベンジャミン たとえば父のシグネチャーのひとつですが、“トータリー ホワイト”。父がパリに住んでいた頃、夏に向けての季節に一面に白い花々が咲く公園が近くにあって、その香りを再現した、軽やかでピュアでクリーンな香りです。父は絵画でいえば具象画的な、風景が浮かぶような香りが好きなんです。もう少しパンチが利いた香りなら、“トムボーイ ネロリ”。
あるいは“ユヌ トン ドゥ ローズ(1トンのバラ)”。父は“クロエ”をはじめローズの香りでよく知られていますが、これは爽やかでフレッシュで、女性とか男性とか意識せずに使って欲しい香りです。フローラルとかウッディとか、好きなノートを決めてその系統のものを選べば失敗がありませんが、あまり自分で決めつけず、視野を広くもって選んでいただくといいと思います。