家族の物語を紡ぐ【パルル モア ドゥ パルファム】 フレグランスについて語り合う時が来た

さまざまなブランドの代表的な名香を数多く手がけてきた天才調香師、ミシェル・アルメラック氏。その家族が、ミシェル氏の自由な創造の場となり、フレグランスの真実を伝えられるブランドを――と立ち上げたのが“パルル モア ドゥ パルファム”だ。その新作を携え、来日したアルメラック氏の息子たちに、「香水について語り合おう」というブランド名のとおり、香りとの向き合い方について話を聞いた。

さまざまなブランドの代表的な名香を数多く手がけてきた天才調香師、ミシェル・アルメラック氏。その家族が、ミシェル氏の自由な創造の場となり、フレグランスの真実を伝えられるブランドを――と立ち上げたのが“パルル モア ドゥ パルファム”だ。その新作を携え、来日したアルメラック氏の息子たちに、「香水について語り合おう」というブランド名のとおり、香りとの向き合い方について話を聞いた。

家族の物語を紡ぐ【パルル モア ドゥ パの画像_1

〈左〉ロマン・アルメラック(Romain Almairac)
調香師。ミシェル氏の長男。世界的な香料メーカー、ロベルテ社で経験を積んだ後に調香師に。“クロエ オードパルファム インテンス”をはじめ、父との共作も多い。

〈右〉ベンジャミン・アルメラック(Benjamin Almairac)
ミシェル氏の次男。ロベルテ社で香料について学ぶ。父のフレグランスに誰もがアクセスできる場を、と“パルル モア ドゥ パルファム”を創設。ブランドの経営に携わり、父の良きアドバイザーでもある。

父であるミシェル・アルメラックから学んだことは、私たちにとって伝えていくべき財産

パルル モア ドゥ パルファム 調香師 ロマン・アルメラック

――そもそも“パルル モア ドゥ パルファム”とは(ご兄弟にとって)どんなブランド?

ベンジャミン
 父が長年の調香の経験から蓄積してきたものは、私たちにとって受け継いでいくべき財産です。そこにある、いわばフレグランスの真実というものを多くのかたに知っていただけるようにというのが、このブランドに込めた思いです。

――お二人ともがフレグランスに携わるようになったのは、必然?

ロマン
 ベンジャミンも言っていたとおり、父には50年以上にわたる経験を通して培ってきた、フレグランスのクリエーションのノウハウがあります。それを父の引退後、そのままにしてしまってはもったいない。それに子供の頃から、父の仕事場をよく見せてもらえる環境にいたので、いずれ同じ道に進むのかな、と自然に思っていましたね。

――受け継いでいきたいお父様ミシェルさんの教えや、調香のテクニックとは?

ロマン
 まずひとつめは、「原材料の選択」。天然香料の厳選というのもありますが、香料は天然のものだけがいいと考えるのは間違いだと思っています。合成香料も必要で、大事なのはそれらをどう組み合わせるか。どちらがいいとは、いえるものではありません。

そして次に「コントラスト」。これは父のシグネチャーでもあり、大切にしています。たとえばウッディな香りを作ろうとしたとき、ウッディな香料ばかりをブレンドしたら、それはただの「ウッドのミックス」になってしまう。原料の数は絞り込み、代わりにウッドとのコントラストが出せるものを入れることで、ウッドが際立ちます。これが父から学んだ2番目のこと。

さらに3つめが「トライ&エラー」。「とにかく試しなさい」「チャレンジしなさい」といわれてきました。過去にうまくできたと思ったものと、つい同じようなフォーミュラや手法に頼ろうとしてしまいますが、それではダメ。自分を「天才!」と思う日もあれば、「なんて才能がないんだ」と落ち込む日もあるけれど、そんなときこそ、とことん「試す」。そうすればいずれ「できた!」と思える瞬間が訪れて、また「やっぱり自分は天才かもしれない!」と思うのですが(笑)……、TRYあるのみ!です。

他ブランドのための香りにも自由に調香する香りにも、父は誇りをもっています

パルル モア ドゥ パルファム 調香師 ロマン・アルメラック

――ほかのブランドのための香りと“パルル モア ドゥ パルファム”の香りの、調香のアプローチに違いはある?

ロマン 自分のブランドでもそれ以外のブランドでも、フレグランスを作るプロセス、その手法自体は変わりません。父は調香のオファーがあったとき、いろいろと要望を出されたとしても必ずしもそのとおりにはしません。それはその香りを手に取ってくれる人を、失望させたくないから。自信をもって自分の名前が出せるものでなくては引き受けませんが、受けたからには全身全霊で取り組んでいます。それはもちろん自分のブランドでも同じで、常に全力投球しています。

ふたつの新作の魅力と、初夏に向けておすすめの香りをご紹介します

――ロマンさんが調香された新フレグランス“ブロッサムズ スモーク”は、どんなアイデアから生まれた、どんな香り?

ベンジャミン ダークさと明るさ、黒と白のコントラストを描きたかったんです。キーとなるベチバーで暗いイメージを表現し、白い花の香りが光となってコントラストを強調する、というアイデアが出発点としてありました。

ロマン 今回、主役となるベチバーはインドネシア産を使っています。とてもスモーキーでアーシー、そして揮発性が高いので、思いがけず最初からけぶるように香り立って、その奥からジャスミンなどホワイトフローラルのアコードが出てくるような印象になりました。そしてそのコントラストを和らげるのが、最後に香る甘く官能的で心地よいバニラアコードです。

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インパクトのあるベチバーのスモーキーなトップノートが姿を消すと、白い花々が現れ、光を放ちながら情熱的に。最後は甘くアンバリーな余韻を残す。パルル モア ドゥ パルファム ブロッサムズ スモーク オードパルファム (50ml)¥15,400、(100ml)¥25,300/ブルーベル・ジャパン

――そしてミシェルさんが手がけた、光に満ちたもうひとつの新作、“オレンジ ハイパーエッセンス”については?

ベンジャミン 父によれば、春にその年初めて庭で朝食をとった日の喜び、太陽の光が肌に当たる感覚を香りにしたのだそうです。名前のとおりオレンジの香りですが、オレンジの香料だけではその酸味による刺激は感じにくいので、ジンジャーを加えています。カリフォルニアオレンジと、ミルキーなニュアンスのあるバレンシアオレンジの2種を使い、さらにビターオレンジで果皮の苦みを表現しました。さらにラストでは、プロセッコアコードが発泡感をもたらし、スパイシーなカルダモンが温もりをプラス。オレンジをとことん突き詰めた、まさにハイパーなオレンジの香りです。

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オレンジのジューシーなノートに、スパイシーなジンジャーをプラス。ベースのプロセッコアコードがきらめきある発泡感をもたらし、カルダモンが温もりを。パルル モア ドゥ パルファム オレンジ ハイパーエッセンス オードパルファム (50ml)¥15,400 (100ml)¥25,300/ブルーベル・ジャパン

――春から夏に向けての季節、SPUR読者におすすめの“パルル モア ドゥ パルファム”の香りは?

ベンジャミン たとえば父のシグネチャーのひとつですが、“トータリー ホワイト”。父がパリに住んでいた頃、夏に向けての季節に一面に白い花々が咲く公園が近くにあって、その香りを再現した、軽やかでピュアでクリーンな香りです。父は絵画でいえば具象画的な、風景が浮かぶような香りが好きなんです。もう少しパンチが利いた香りなら、“トムボーイ ネロリ”。

あるいは“ユヌ トン ドゥ ローズ(1トンのバラ)”。父は“クロエ”をはじめローズの香りでよく知られていますが、これは爽やかでフレッシュで、女性とか男性とか意識せずに使って欲しい香りです。フローラルとかウッディとか、好きなノートを決めてその系統のものを選べば失敗がありませんが、あまり自分で決めつけず、視野を広くもって選んでいただくといいと思います。

身に纏えるアート、フレグランスは人生をより豊かにしてくれるもの

パルル モア ドゥ パルファム ベンジャミン・アルメラック 香水

――最後に。香りのある人生は、香りがないよりもどのようにいい?

ロマン
 五感に響くものは、人生の喜び。音楽も絵画も、それがなくても人は生きていけますが、あることによって人生が豊かになります。フレグランスも同じで、その香りがあれば、人生はもっと豊かになると思います。

ベンジャミン 絵画は家に飾って楽しむもので外に持って出るものではないけれど、フレグランスは嬉しいことに、それを身に纏って出かけられるアート。他の人に、それを通して自分をより魅力的にアピールすることもできます。

ブルーベル・ジャパン
https://latelierdesparfums.jp
0120-005-130

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