米大統領選に向けて、ラストスパートを迎えている現在。9月26日(現地時間)、民主党候補ヒラリー・クリントンと、共和党候補ドナルド・トランプによる、初めてのテレビ討論会が開催された。討論会は国民の大きな関心を集め、ネットでは両候補者に関する検索が急増したそう。
なかでも『Us Weely』誌は、ヒラリーに関する検索ワードに着目。勝てばアメリカ初の女性大統領となるヒラリーに関する検索ワード、トップ5には、”なぜヒラリーはパンツスーツしか穿かないのか?”という質問が入っていたと報じたのだ。
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ヒラリーの服装に関する人々の関心について、『Us Weekly』誌は、危機管理専門のコンサルティング会社を経営し、イメージ管理のエキスパートであるリチャード・レヴィック氏を取材。
レヴィック氏は「ヒラリーの(大統領選)キャンペーンが始まった当時から、パンツスーツが戦略の一部分であった」と説明。「パンツスーツを着ることで、彼女の仕事に対する真剣さをアピールしているんだ。ヒラリーはキャンペーン中に、服装で注目を集めたくなかったんだ。彼女自身の“存在”をアピールしたかったからね」。
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その証拠としてヒラリーは、1978年に司法事業推進公社(Legal Service Corporation)女性初の理事として政治活動をスタートして以来、スカートやドレス姿を見せることは稀だったそう。
レヴィック氏によると「以前は、“女性は大統領になれない”というのが、人々の共通認識だった。でも世界が成長するにつれ、女性も国を統治することが可能だという認識が、アメリカにも広まった。でもヒラリーの世代は、違った。彼女の世代の人間にとって、女性が大統領選に出馬するというのは、とてつもない衝撃なんだ」。男性的なイメージを定着させるためにも、ヒラリーは服装を変えることを選択。男性中心の分野において、女性の自分が活躍できるということを証明しようとしているのだとか。
1993年、夫ビルの大統領就任を祝福するパーティにて。珍しくきらびやかなドレスを纏った姿が話題に。Photo : Getty Images
「テレビ討論会にヒラリーがドレス姿で登場したら、ドナルド・トランプがドレスで登場するのと同じくらい、大きなニュースになっただろうね」と語る、レヴィック氏。しかし「もし男性が声を荒らげて権威を表せば、彼は“強い”とみなされる。でもヒラリーが同じことをすれば、“かん高い声を上げている”と責められるだろう」と、ヒラリーが女性であることから、人々から不公平な判断を受けていると説明。
1994年、夫ビルとともにイタリアを訪問したヒラリー。テレビ討論会と同じ真っ赤なスーツながら、ファースト・レディを意識したのかスカートをチョイス。Photo : Getty Images
さらに「ヒラリーは大統領選に出馬することで、目に見えない障害を打ち砕いたんだ。それでも同時に、彼女はランウェイを歩き続けなければならない。彼女のファッションは、ほかの男性候補者には向けられない視点から、見られているんだ」と言及した。
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日本を含む世界各国で、女性政治家が活躍するようになった現代。しかしそのファッションに集まる注目度の違いから、性差別が浮き彫りになってしまったようだ。ヒラリーの活躍によって、いまだはびこる女性への偏見が少しずつ緩和されることを、願わずにはいられない。