「私のアイデンティティは負け犬であること」。アカデミー賞助演女優賞にノミネートされたホン・チャウ、難民として米国に移住した幼少期を語る

第95回アカデミー賞で助演女優賞にノミネートされた俳優ホン・チャウ(43)がインタビューに応じ、難民として家族で米国に移住してきたという自身の幼少期から俳優として成功を収めるまでの道のりを語った。

第95回アカデミー賞で助演女優賞にノミネートされたホン・チャウ(43)の生い立ちに注目が集まっている。

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2023年1月24日(現地時間)、米国映画芸術科学アカデミー(AMPAS)が第95回アカデミー賞のノミネートを発表。映画『ザ・ホエール』で助演女優賞にノミネートされたホンは、「まさか自分が選ばれるとは思わなかった」ため、現地時間の早朝に行われた発表の中継を見るつもりはなかったそう。

しかし、その日たまたま早起きをしたホンはベッドでコーヒーを飲みながら中継を視聴。ノミネートを受けて応じたインタビューでは、自身のノミネートが発表されたときのことを「すぐに情報を飲み込むことが出来なかった。とても驚いた」と振り返った。

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映画人にとって一番の名誉とも言われるアカデミー賞に初ノミネートを果たしたホンだが、インタビューでは「こんな日が来るなんて思ってもみなかった」と何度も繰り返し語り、「私のアイデンティティは負け犬であることと、自分の殻に閉じこもろうとすること。だからこれ(ノミネート)は本当にすごいこと。一夜にして成功者になるまで何年もかかった」と喜びよりも驚きが勝っていたとか。

ホンがそこまで驚いているのは、自身が幼い頃、移民として米国に移り住んできた過去があるからだという。

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ベトナム人の両親の元、タイの難民キャンプで生まれて間も無く、両親とふたりの兄とともに米国に渡ったというホン。「お金もなく、英語も話せなかった」というホンの両親だが、生活のために長らく皿洗いの仕事に従事し、その後はコンビニエンスストアを経営。経済的に苦しい状況だったにもかかわらず、「私たちを大学まで通わせてくれた」そう。

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ボストン大学に入学したホンは映画を学び、ゆくゆくはカメラマンになるつもりだったというが、「内向的で人と話すのが苦手」だった性格を変えるため、即興芝居やスピーチのクラスも受講。

「授業の前には毎回吐き気がしたけれど、無理をして通っていた」と語るホンだが、結果としてその選択がアカデミー賞のノミネートまで繋がっていたのだから驚き。

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ホンは大学卒業後、テレビ局のディレクターと出会いロサンゼルスに移住。演技の仕事がない時期が長く続いたものの、テレビ局の経理部門で働きながらオーディションを受け続けたという。

その粘り強さが実を結び、オフブロードウェイへの出演依頼が舞んだことが、後に自身の出世作となった映画『ダウンサイズ』の出演に繋がったそうで、ホンは2017年、この映画でゴールデングローブ賞をはじめ、全米映画俳優組合賞など数々の賞の助演女優賞にノミネートされ、一躍実力派俳優の仲間入りを果たした。

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第95回アカデミー賞授賞式は2023年3月12日(現地時間、日本時間13日)に開催される。自身を「負け犬」と語るホンの快進撃に期待したい。ちなみに、ホン以外の助演女優賞ノミネートは以下の通り。

アンジェラ・バセット『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』

ホン・チャウ『ザ・ホエール』

ケリー・コンドン『イニシェリン島の精霊』

ジェイミリー・リー・カーティス『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

ステファニー・スー『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

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