【ゾーイ・サルダナ】二兆円稼ぐ!マーベルと『アバター』のSF女王、孤独を魔法に変えた人生 #エミリア・ペレス #アカデミー賞2025

ドル箱スターといえば、一目で誰かわかるカリスマパワー。しかし、俳優としてゾーイ・サルダナは、少しちがう。『アバター』シリーズ(2009〜)で真っ青な異星人ネイティリ、MCU『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)で全身緑の暗殺者ガモーラを演じてきた彼女は、SFの変身女王だ。大人気シリーズの常連として歴代興行収入トップ3の全作品に出演し、キャリア全体の興行収入は140億ドル(約2兆円)にのぼる。

アクションもこなすゾーイの役柄といえば、クールでたくましい女性のイメージが強い。一方、現在アカデミー賞最有力の立場にある彼女自身は、芸能界での人脈づくりを好まず、注目を避けてキャリアを積んできた人物だ。

ドル箱スターといえば、一目で誰かわかるカリスマパワー。しかし、俳優としてゾーイ・サルダナは、少しちがう。『アバター』シリーズ(2009〜)で真っ青な異星人ネイティリ、MCU『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)で全身緑の暗殺者ガモーラを演じてきた彼女は、SFの変身女王だ。大人気シリーズの常連として歴代興行収入トップ3の全作品に出演し、キャリア全体の興行収入は140億ドル(約2兆円)にのぼる。

アクションもこなすゾーイの役柄といえば、クールでたくましい女性のイメージが強い。一方、現在アカデミー賞最有力の立場にある彼女自身は、芸能界での人脈づくりを好まず、注目を避けてキャリアを積んできた人物だ。

「居場所がない」人生

【ゾーイ・サルダナ】二兆円稼ぐ!マーベルの画像_1
photo:Getty Images

1978年に生まれニューヨークで育ったゾーイ・サルダナの人生は、居場所さがしの連続であった。三人姉妹の真ん中として幸福な家庭に育ち恵まれていたものの、9歳のとき、父が自動車事故で急逝。ショックで起き上がれなくなることも増えた母親は、やがて仕事をかけ持ちするようになり、子どもたちをドミニカ共和国の実家に送った。

ドミニカでは日系女性をふくむ親戚に支えられていったものの、学校ではいじめられていた。スペイン語に苦労した上、ADHD(注意欠如・多動症)かつ識字障害だったため、落ちついて授業を受けれずについていけず浮いてしまったのだ。そこで夢中になったのが、現実逃避させてくれる映画だった。さらに、彼女には踊りの才能があった。難関の国立アカデミーに合格したあとは、ダンサーとしての規律が生活にも役立っていったという。

しかし、体操選手になるには訓練をはじめるのが遅すぎたし、バレエでソリストになるには足のかたちに恵まれていなかった。こうして、18歳ごろ演技に転換し、ニューヨークへ戻ることになる。

「男性のおまけ」を拒否したSF女王

【ゾーイ・サルダナ】二兆円稼ぐ!マーベルの画像_2
photo:Getty Images

2000年代になるころには、映画俳優として頭角をあらわしていった。バレエ映画『センターステージ』(2000)に抜擢されたあとは『ノット・ア・ガール』(2002)で人気歌手ブリトニースピアーズの友人役を演じている。

ラテン系黒人女性として、役を獲得するための苦労は大きかった。人種や性別の問題もあったが、業界のコネクション事情で流れることも多かったという。ハリウッドのパーティー社交を好まないゾーイは、創作に熱心な者同士波長があう監督を探す方向に切り替えたという。

オファーを断ることもあった。女性俳優の定番であるメイン男性キャラの恋人役をやりたがらなかったのだ。働き者の家族を持つ彼女にとって、そうした「男性キャラのおまけ」に過ぎないような女性像は、あまりにも現実からかけ離れていた。

非現実的な女性キャラを拒むゾーイが活路を見出したのは、非現実そのものを扱うSFジャンルであった。宇宙の世界なら、肌の色やジェンダーといったわずらわしい地球の事情から解放される。ジェームズ・キャメロンを筆頭とした創作主義の監督と熱心な議論を重ねることで、ネイティリやガモーラといった名キャラクターが生まれた。

SF大作への偏見から俳優として軽んじられることもあったが、ゾーイは、ステレオタイプな役柄を避けたキャリア選択への誇りを公言してきた。

「SFという想像力豊かなジャンルは、私のような現実世界で普通とされない存在を当たり前の存在として描いてくれます。本当にこの分野で活躍させていただきました。誰かの妻や娘というだけではない、きちんと物語に関係する、勇敢で強い女性戦士を演じることができたのです」

キャリア総決算でアカデミー賞へ

SFスターとして花開いていった2010年代、イタリア人プロデューサーと結婚し、三人の息子にも恵まれた。『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(2022)が大ヒットした近年には、興行収入20億ドル超え映画に4本出演した史上初の俳優となった。妹とともにラテン系表現を支援する制作会社も立ち上げている。

2020年代には、オスカー最有力の演技派として評価を切り拓いた。フランスの鬼才監督ジャック・オディアールによる『エミリア・ペレス』(日本公開2025年3月28日)の助演として、カンヌ国際映画祭を皮切りに、ゴールデングローブ賞や米俳優組合など、数々のアワードを席巻していったのだ。

『エミリア・ペレス』で演じるのは、移民としてメキシコで働く弁護士のリタ。男性上司に手柄を横取りされる日々のなか、カルテルギャングのボスに誘拐され、ボスの性別適合手術に協力することになる。

骨太ドラマと壮大ミュージカルを行き交う実験作『エミリア・ペレス』は、ゾーイ・サルダナの集大成と言える。ほとんどの台詞がスペイン語で、ルーツたるダンスも披露していく。ハードな環境にある女性たちが協力する物語であり、SFと同様リアリティにとらわれない作風でもある。なにより、彼女がこの役に惹かれたのは、リタのように社会に居場所がないと感じてきた経験があるからだ。

あるアカデミー賞会員は、幻想的な映画に重みを授けたのは彼女だと評した。SFの変身女王、ゾーイ・サルダナの力とは「居場所のない」孤独を魅惑的な想像力に変える魔法だ。

辰己JUNKプロフィール画像
辰己JUNK

セレブリティや音楽、映画、ドラマなど、アメリカのポップカルチャー情報をメディアに多数寄稿。著書に『アメリカン・セレブリティーズ』(スモール出版)

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