【ライアン・ゴズリング】「非モテ」が似合うハンサム。 #プロジェクト・ヘイル・メアリー を成功させた開拓精神

日本でも洋画として年間最高のスタートを切り、世界で1.4億ドル(約223億円)のオープニング興行収入を達成したSF『プロジェクト・ヘイル・メアリー』(公開中)。広大な宇宙をバックに一人芝居を魅せたライアン・ゴズリングの単独主演作としても最高の記録だ。 

45歳として全盛期を迎えたライアンは、独特な俳優でもある。笑ってしまうほどハンサムなのに、なぜか「非モテ」役までモノにしてしまうのだ。

日本でも洋画として年間最高のスタートを切り、世界で1.4億ドル(約223億円)のオープニング興行収入を達成したSF『プロジェクト・ヘイル・メアリー』(公開中)。広大な宇宙をバックに一人芝居を魅せたライアン・ゴズリングの単独主演作としても最高の記録だ。 

45歳として全盛期を迎えたライアンは、独特な俳優でもある。笑ってしまうほどハンサムなのに、なぜか「非モテ」役までモノにしてしまうのだ。

「神童」に囲まれた子役時代

【ライアン・ゴズリング】「非モテ」が似合の画像_1

photo:Getty Images

ライアン・トーマス・ゴズリングが生まれたのは1980年。製紙工場を中心にまわるカナダの田舎町で、両親が信仰する宗教コミュニティで育てられた。

反抗的な気質でいじめられていた少年時代、教師はシングルマザーとなった母、親友は姉だった。そんななか、活路となったのは、かじりつくように見たテレビ。そして、叔父が始めたエルヴィス・プレスリーの物真似ショーだった。

【ライアン・ゴズリング】「非モテ」が似合の画像_2

photo:Aflo

「工場で人生を終わらせたくない」。野心に燃えたライアンは、電車で約5時間かかる都会に出向いて子役オーディションを受けていき、見事ディズニーの児童番組『ミッキーマウス・クラブ』(1993〜1995)に合格。

しかし、中学生にして「身のほど」もわきまえた。番組を共にしたのは、ブリトニー・スピアーズやジャスティン・ティンバーレイクといった、将来音楽界のスーパースターになる「神童たち」。ライアンに回されたのは、ハムスターの着ぐるみを着て踊るような「お馬鹿な役」だったという。

「スターらしくない」ハマり役

【ライアン・ゴズリング】「非モテ」が似合の画像_3

photo:Getty Images

大人のハリウッド俳優としてのブレイクも「主演スターらしくないから」 与えられた。恋愛映画『きみに読む物語』(2004)の相手役として、監督が求めていたのは「きわだって美形でもクールでもない、ちょっとおかしそうな普通の男」だったのだ。

そんなライアンの演技および人生の哲学は「脱出ゲーム」。ルールも知らない未知の領域に踏み込み、臨機応変に生の反応を見せていくやり方だ。この開拓精神により、ユニークなフィルモグラフィーが花開いた。

抜け感ある面持ちをしているライアンのハマり役は、第一に『ラ・ラ・ランド』(2016)に代表される、どんなヒロインとも似合ってしまうハンサム役。暴力映画『ドライヴ』(2011)によって、同性から憧れられる寡黙なダークヒーローの地位も確立している。

「流し目だけで感傷を伝える」俳優ライアン・ゴズリングの魔法は、ハンサムとは対極の「非モテ」風キャラまで似合ってしまうところ。初期作『ラースと、その彼女』(2007)ではヒトとの交流を回避して人形に恋をする青年を好演した。初の主演大作『ブレードランナー 2049』(2017)でも、AI女子に依存する孤独な刑事を演じ、とくに思春期の男子から共感を集めた。

コメディで開花

子役時代から挑戦をつづけたライアンだが、2010年代の終わりにかけて、4年ほどの空白期間がある。『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』(2012)で共演した妻エヴァ・メンデスとのあいだに生まれた娘たちと過ごすため、いわゆる育児休暇をとったのだ。

親としての責任感も芽生えて落ちついたというライアンだが、復帰後に挑戦したのは、人生最難関の役柄だった。

興行収入14億ドル超えの社会現象ヒット『バービー』(2023)におけるケン人形だ。普通の男性スターなら受けない、「バービーの二番手」としてフラれつづける間抜けなキャラクターだった。

参考にできる資料もなく困り果てたライアンは、自らの原点に立ち返った。がむしゃらに陽気に踊ったディズニー子役時代の経験を解き放ち、童心あふれるケンを演じ切ったのだ。

アカデミー賞ノミネートまで獲得したこの役は、ライアン・ゴズリングにより自分らしい軌道を授けた。というのも、すっかり寡黙な役が板についていたものの、本人はアドリブジョークが大好きなコメディ気質なのだ。

集大成の宇宙

サプライズヒットとなった『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は、集大成のようなハマり役だったと言えよう。ライアンが演じたのは、世界を救う使命を背負った天才科学者であり学校の先生。つまり、カリスマ的でありながら共感も集めてきた彼にもってこいの庶民派ヒーローだ。

孤立無援に陥った宇宙で活路を見出していく物語自体、ライアンが実践してきた「脱出ゲーム」哲学とよく似ている。そこで、彼はシリアスとコメディ両方の経験を活かすことにした。「つらい状況でこそ笑いが生きる」という信念のもと、即興ジョークを盛り込んでいったのだ。骨太な科学映画がここまで大衆に愛されたのも、彼の喜劇俳優としての腕前あってこそだろう。

なにより、暗い時代に子どもたちが楽しめるよう制作した『ヘイル・メアリー』に込めたメッセージは、ライアン・ゴズリング自身の開拓精神を体現している。「未来は、恐れるものじゃない。解き明かしていくものだと信じてみよう」。

ちなみに、ライアンの次回作は『スター・ウォーズ』シリーズ最新作。かつて「主演スターらしくない」と評された俳優は、いかに世界一の王道活劇を率いるのか。まだまだ開拓はつづきそうだ。

辰巳JUNKプロフィール画像
辰巳JUNK

セレブリティや音楽、映画、ドラマなど、アメリカのポップカルチャー情報をメディアに多数寄稿。著書に『アメリカン・セレブリティーズ』(スモール出版)

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